総力戦②
連携の無い敵だから勝てるとは思っているけど、敵は弱くない。むしろ強い。
油断したら負けるのは当たり前。
確実に、着実に、敵を削っていこう。
こちらの切り札、奥の手はほぼ未使用。オケアノスの巨大化と三人娘の万華鋼装備を少し使っただけ。
それらは序盤に速攻で敵戦力を削る使い方もあるけど、これ以上は使わず今は温存。○ペシウム光線のように、後半の追い込み、最後の最後に使うべきだと思っている。
ゲーム脳と言われるかもしれないけど、これまでの経験から言うと、敵が第二形態などを隠し持っていそうだからだ。
使わずにすむなら、それで良し。
必要になった時に「もう使ったから使えない」などとなるよりはずっとマシだ。
それに切り札が残っている事で心に余裕が生まれるから、悪いことでもない。
いざという時、敵がこれまでにない行動をしてきた時に使うと決めていれば出し惜しみにならず、そこまで問題も起きないだろう。
あとは現場の高度な判断に任せれば良い。
巨人は10体だが、一度に全部を相手取らない。基本は包囲しつつも、位置取りで敵を遊ばせるように動く。
巨人のそれぞれに平均的に戦力をぶつけることもしない。狙った個体に主力を集中してぶつける。
他は包囲殲滅陣を忠実には実行せず、時々は敵中に踏み込み、攪乱を行う。
言葉にすると当たり前のことばかりだが、実行が難しいことのオンパレードだな。
それが最善だからといって、実行できなきゃ意味が無い。
実行には、全体を俯瞰する「目」と、未来を予測する「頭」が必要になる。
「マスター、1番右足に落とし穴!」
「りょう、かいっと」
「押し込んで!!」
総大将は俺だが、指揮官にはコイオスとクレイオスのコンビを使う。
このティターン二人は、敵の動きを予測することに関しては俺たちの中で一番だ。
安心して任せられる。
見れば、こちらに突撃をして囲みを抜け出そうとしている巨人がいた。
俺は指示の通りその巨人の右足が膝まで埋まるような穴を掘り、囲みを突破しようとする動きを妨害する。
いきなり足が穴に嵌まってしまった巨人は、前に動こうとする力もあって、前のめりに、勢いよく地面にキスをした。
落とし穴を作ったところで、普通は気が付くだろうと思われる。身構え、備えるぐらいはできたはずだ。
だが、俺は一定範囲、自分たちの頭の上に魔法のマジックミラーを作り、俺たちを視認できなくしている。
この魔法のおかげで敵のみが、俺たちを視認できなくなっていた。
同じ視点の高さの敵には意味のない魔法だが、それでも敵が巨人だったり空飛ぶドラゴンなら、それなりに有効だよ。
倒れた巨人には追撃も行う。
オケアノスの槍が鎧の隙間、首の可動域確保のためにあった保護されていない場所を突いた。
致命傷には至らなかったが、槍を抜いた傷口からは噴水のように出血して大ダメージである。
こういう時は、三人娘よりも同族同士の方が連携が滑らかだ。
俺やタイタンも連携に参加しているが。
「撃ちます!」
「打つ!」
「買う~。 けど、返品~」
なお、三人娘は彼女たちだけで戦っている。
三人娘は下手にティターンたちの連携に組み込むより、彼女らは彼女らだけで運用した方が効率が良いのだ。
そんなわけで三人娘はひたすらに敵の足を攻撃し、機動力を奪うことに専念していた。
彼女らはとどめこそ刺さないものの、敵の戦力をそぎ、こちらがとどめを刺すための仕込みに徹している。
地味だが難しい役目なので、基本性能の高い三人娘にしか任せられない仕事でもある。
そうやって巨人を着実に削っているが、敵も削られるだけではない。
「っ!? 防御!」
巨人の一体が、味方を巻き込むことを厭わずに、ハンマーで地面を削り、広範囲に土砂をまき散らした。
高速で飛来する土砂は躱しきれるものではなく、防御行動の遅れたタイタンたちにダメージが入る。
「後退、回復に入れ!」
ダメージを受けたタイタンは下がらせ、自己再生に努めさせる。
タイタンの回復には時間がかかるため、大破こそしなくとも、こちらの戦力も減っていく。
天秤はこちら有利に傾いているが、まだまだ油断できなかった。




