再誕の巨人②
駆け付けた現場は酷いものだった。
砕かれ、潰され、バラバラになったタイタンたちの残骸が雪に埋もれている。
部下さん二人のバトルクロスも、片方は下半身が完全に潰されていて、片方は右腕が肩からもげて血を流していた。
下半身を潰された方は即死だっただろうが、腕がもがれた方は出血多量によるショック死と思われる。
出血多量による死亡であれば、まだ蘇生の可能性がわずかだが存在する。
バトルクロスの生命維持機能がいつまで仕事をしていたかは分からないが、延命措置の具合によっては、まだ助かるかもしれないのだ。
「ポーションで止血! 蘇生措置を!!
オケアノス、押さえろ!!」
「4分間のマリーゴールド」というドラマがあったが、人間の脳みそが酸素不足で死ぬまでには、4分の猶予がある。
運が悪ければ蘇生しても植物人間となってしまうが、何もせずに放置などできない。俺はタイタンに指示を出し、救急救命を行わせる。
同時に、オケアノスに命じ、リスポーンした巨人を抑え込ませる。
部下二人とタイタンたちは、最後にやられてしまったものの、善戦はしたようだ。
巨人の兜は完全に破壊され、右の足からは脚甲が無くなっている。
鎧の下の顔や体に傷は無いが、それはただ単に回復したからだろう。コイツは自分の怪我を治せるからな。
一見すると怪我が無いのでノーダメージなのだが、実際には防具が壊れているし、回復に魔力を消耗しているから、ノーダメージではない。
なにより、護衛対象の冒険者を外に逃がしているので、役目は十分に果たした。
二人とタイタンたちは十分に仕事をしたと言える。
あとは俺の仕事だ。
蘇生措置が上手くいくかは賭けである。
そして上手くいってもここでは危険な状態が続くので、早々に離れてもらう必要がある。
また、ここから先の戦いを記録として残す気は無いので、自衛隊のタイタンもその残骸を回収し、外に届けさせる。
単独で放置した淡島一尉には悪いと思うけど、そちらにタイタンを回さなかった理由の一つが、これ。
それとは別に。
「リスポーン地点特定、急げ!」
この巨人が何度でもリスポーンする場合、リスポーン地点に起点となるアンカーが存在する可能性がある。いや、全く何もない可能性は低いというのが、俺の予測だ。
そのアンカーを破壊してしまえば、リスポーンは防げるのではないか。
ここで巨人と戦う俺たちとは別に、リスポーン地点を特定し、リスポーンの条件を不成立にする別動隊としても、戦力が必要だ。
タイタンを全員こちらに連れてきたのは、そちらの理由が大きい。
なにしろ、下手すればリスポーンしたばかりの巨人と鉢合わせになるんだからな。
アンカーをどうにかするなら、タイタン一人とかは想定を甘く見すぎである。
巨人は俺と三人娘、ティターンたちでどうにかする。
「生身は、鎧よりも、脆いっ!」
「その眼を、頂く!」
「三分、待ったら、ごはんの時間~!」
防具に守られていない巨人にダメージを与えるのは簡単だ。
鎧や兜など、防具に守られているのが前提の戦いをする巨人であれば、なおさらだ。
「ふむ。殺してしまっては、いけないのだったな」
「「武器を持つ腕を、切り落とします」」
壊した鎧も、実は拘束具だったというオチもないから、時間はこちらの味方だ。
巨人がハンマーを手に暴れようが、攻撃パターンが少ないので、対処は容易。
魔力の総量はドラゴンより上で防具付きという強みはあっても、巨体がうなって空を飛ぶわけではないので、こちらの方が戦いやすいというのもある。
俺たちはタイタンたちが仕事を終えるまで、戦いと言うよりも解体のような時間稼ぎをするのだった。




