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問題山積み(検証)①

 俺は原神たちに現状を説明し、どうするかの方針を伝えた。

 一時的に、自衛隊で戦って欲しいというお願いだ。

 一年二年という長い期間になるが、我慢して欲しいと言って頭を下げたのだが……。



「え? 嫌か?」


 原神たちは、首を横に振ってそれは嫌だと伝えてきた。

 少し前の俺と同じく、離れたくないと考え、現実を認めようとしていなかった。


 よくよく考えてみれば、原神たちは生まれて間もない。まだ半年と経っていないのだ。

 しかも山のダンジョン、そしてメンテで顔を出す大学だけが行動範囲の、狭い世界で生きている。


 原神たちもスマホやパソコンを使い、動画で物語を見る事はある。

 だが、それで得られる情報には限りがあって、非常に偏っている。


 幼い原神たちが広い世界に目を向けるには、何もかもが足りていなかった。




「駄目です、四宮教授。お願いは聞いてもらえません。

 かと言って、命令なんてしたくありませんし。どうしましょう?」

「それならまずは多くの人に原神たちの現状を理解してもらう動画を配信するのと、学者などに来てもらって、自我の有無を検証していただくとしようか。

 どのみち、自衛隊にも根回しをする必要があったからね。すぐには動けないから、慌てずにいこう」


 原神の説得は簡単にできそうにない。

 小さな子供は理屈では動かないのだ。感情をどうにか動かすしかない。

 どうしようかと頭を悩ませるが、打つ手は思いつかなかった。


 四宮教授に相談してみるが、四宮教授も手は無いらしく、それよりもできる事を少しずつこなしていくよう助言を受けた。

 できる事をこなしていれば、いずれできなかった事もできるようになると。


「館に閉じ込められた系のアドベンチャーと同じだよ!」

「いや、分かりにくいです。それと、やりませんよ。そんな、青〇だなんて」


 それはこんな感じのゲームと同じだと、いくつか勧められるが、はっきりと断っておく。

 そういったタイプのゲームはあまり好きではない。

 どうせやるなら、SLGやRPGの方がいいんだよ。ホラーは、現実にそういった連中がいても倒せたりするから、怖いと思えないんだ。

 閉じ込められたなら、壁をぶち抜いて出ればいいって考えちゃうからな。冒険者的には。





 原神の説得は出来なかったが、自我の検証という事で、四宮教授の御同輩が召喚される事になった。


「本日はよろしく頼むのだよ!」


 全員が人工知能の研究者で、その分野で飯を食っている人たちだ。

 こういった興味深い話題があるのなら、オンラインで済ませるなどとは言わず、現場である山の奥までやって来るバイタリティ溢れる人々だった。


 その数、実に33人。

 どうしても外せない用事があり、涙を呑んで諦めた人も多いというのだから驚きである。


 人工知能の研究に、それだけいろんな企業や大学が力を入れているって事だろうけど。これで飯を食っているというのが凄い。

 四宮教授が声をかけた分だけだろうし、この業界全員ではないと思う。

 この近辺だけで、こんなにいるんだ……。



 集まった人の年齢、性別、人種は様々。

 若い人でも30歳ぐらいが下限だと思うけど、上は70代だそうだ。

 性別はやや男が多いものの、女性もしっかりいる。

 外国の研究者も来たみたいで、金髪の白人や黒人、その混血でオリエンタルな雰囲気の人もいた。日本人は半分ぐらいかな?


 海外から実績のある研究者を招待していると言うけど。


「日本の研究予算って、かなり厳しいっていうか、そこまで力を入れていないというか。そんな、人を呼べるどころか国から出て行くイメージがあったんですけど」

「それも一つの現実だね。だが、こうやって来てくれる人もいる事は居るのさ。

 なにせ、そうやって人材を補充しないと、海外に勝てないからね。最近では、インドの研究者を中心に声をかけているのだよ」


 日本の研究者はアメリカを中心とした、海外に逃げて行っているイメージがあった。

 それなのに、海外から人を呼ぶお金があるという。

 そのお金で人が出て行かないようにして欲しいと思うけれど。


「仕方が無いのさ。引き抜かれる人たちは、かなりの金額を積まれてしまっているからね。あとから対抗するようではもう遅いのさ」


 どうにもならないらしい。

 分かったような、分からないような。

 とにかく簡単ではないという事らしい。



「おーい! そろそろ検証を始めるぞー!」

「分かった! すまないね、一文字君。原神たちを一時的にお借りするよ」

「よろしくお願いします」


 そうこうしているうちに、何をするのかが決まったらしい。

 人数がいるのに、意外とスムーズだ。


 俺は見学に回り、一体何をするのか眺めさせてもらうことにした。

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