対策会議・社内
御国向けの報告が終わったのは、日付が変わってからだった。
俺からの報告会や対策会議などは緊急事態というほどではなかったはず。
だけど、ここから一気にラスダン攻略を加速させたい思惑があって、とにかく急がせられるところは急がせようという、大企業が下請けに短納期を押し付けるような国の無茶ぶりを押し付けられた。
「お金を出すんだから文句を言うな」とのたまう奴は無能だと思うよ。
もうちょっと、働く人の顔を見てください。
人は数字じゃないのですよ。
そんな身にならない話し合いはそれなりに流して、今度は本気で頑張る話し合い。
会社で、新装備の考案をする。
「足はスパイクでいいのではないかな?」
「どうでしょう? 積雪次第では、スパイクもまったく地面に届きません。雪道用のタイヤ技術を応用した方が良いのではないかと思いますが……これはさすがに、私も専門外なのですね」
「そういえば、あのアニメでは砂漠の戦闘に適応するため、その場でプログラムを作っていましたね。ああいった、ソフトウェアの対応をするというのはできそうでしょうか?」
「無理とは言わないがね。それはハードによる対応をおざなりにしていい理由にはならないのだよ」
「それは分かっています。ああ、そちらがはっきり決まらないようであれば、四宮さんも動けませんか」
開発のメンバーを呼ぶ前に、まずはいつものメンバーで、最初の叩き台を作る。
本格的な話し合いをするために、ある程度の方向性を決めておきたいからだ。
下っ端ポジションなら他の人の意見の尻馬に乗るだけでもいいんだろうけど、一応は上司なので、多少なりともこちらから意見を出せるようにしておきたい。
あのメンバーとは個人的にも仲がいいので細かい仕込みとか必要無いかもしれないけど。それでも、対応を雑にしていい理由にはならないよ。
素の自分を受け入れてもらうのと、何も努力せずただ甘えるのは違うからね。
ちょっとぐらいは頑張らないと、仲間として見限られてしまうよ。
なお、今回のお題は「寒冷地・吹雪対応」と「大型ドラゴンが現れた場合の攻撃武器」である。
雑魚敵の強さは対応可能なレベルだし、今回はすぐに帰還を選んだから吹雪の中でも問題なかったけど。ボスと戦う場合、やっぱり一泊ぐらいはすると思っていいと思う。
で、ラスダンはドラゴンの出るダンジョンなので、大きなドラゴンが出る可能性もあるから、そこも押さえておく。
ボスの居るであろう方向に向かった場合。あの吹雪の中を移動し、一晩過ごすとしたら。これまで以上に大きなドラゴンが出てきた場合。
それらにどう対応するかを想定した意見を出し合って、簡単な反対意見も予測して、対案を連想していく。
単純に相手の意見を否定しないやり方もいいんだけど、軽めの否定から否定への対策を考えるやり方も、意見を出し合う時には有効だ。特に、話し合うのが身内の場合は。
「相手の意見を潰すための否定」はNGだけど、草案を具体案に変えるための指摘であれば、悪いものでもないんだよ。
どんなやり方でも多くの意見を出し合えるのであれば、ブレインストーミングにこだわる理由は無いね。
身内で意見を出し合い、今度は開発メンバーと合流して、話し合いだ。
こっちが事前に準備していたように、開発メンバーにも情報を渡して、先に考えをまとめておくように言ってある。
だから開発メンバーもいろいろとアイディアを用意していた。
「至近距離まで近づかれないと気が付けない。レドームの索敵範囲を変更しましょう。全機とは言いませんが、何機かは通常よりも範囲を狭くして、より密度の濃い索敵をするんです」
「やはり夜は横になって寝るのが大事です。しかし、土中を泳ぐアザラシがいるのであれば、バトルクロス着用のままでもテントなどはお勧めできません。
だからよその開発している自動操縦型ロボットのコックピットを真似た胸部モジュールをタイタンに装備させます。一文字さんにはそこで寝てもらえばいいでしょう。戦闘への即応性は低いですが、そこは仲間にお任せするべきです」
「デカブツ相手なら、大型パイルバンカーの開発だな。万華鋼で巨大化させるか、最初から巨大なものを作るか。そこはこれから考えようぜ」
意見のすべてを採用するのは難しいが、有用なものであれば、時間をかけてでも拾っていくのが良い。
俺たちは急いでラスダン攻略をしなければいけないわけじゃない。
じっくりと、確実に準備を整えていこう。




