ある意味ではソロ挑戦③
ダンジョンの出口まで見通せるわけではないが、レドームの索敵範囲にモンスターは見えない。
分かっている範囲だけなら、吹雪だけが厄介なダンジョンである。
ダンジョンに入ってモンスターが出てこないという可能性は考えていない。
他の人が掃討していたならともかく、自分の周囲に人が居ないのだから、モンスターはどこかに湧いていると考えるのが自然だ。
こちらの探索範囲はかなり広いんだけど、ダンジョンも広いんだから範囲外にいると思う。
もしくは、こちらの索敵能力を上回るモンスターがいるのかもしれない。
これまでも、メジェドの神官とか透明ドラゴンとか、レドームの索敵をかいくぐってきたモンスターが確認されている。
「猛吹雪の中では捕捉されない」とか、特殊な能力を持つモンスターがいたとしても、俺は驚かない。
モンスターは必ずいる。
俺たちは移動しながらも不意打ちへの警戒を緩めていなかった。
だからだろう。
一団の中央にいた俺には分からなかったが、先行する六花がモンスターの襲撃に気が付けたのは。
「敵、ペンギン! それとシロクマ!」
「っ!? 空! 空飛ぶペンギンもいる!!」
「地面から、アザラシが生えてきた!」
これまで地中を移動するワーム系モンスターとも戦ってきた俺たちである。
当然、地中を含め、全方位を警戒していた。
しかしモンスターの大群がいきなり現れる。
全身真っ白で、銀色のくちばしを持つペンギン。それ以外の見た目は普通のペンギンと同じ。ただし空を飛ぶ。
身長5m級のシロクマ。なんか長い爪を振り回している。
一番謎な、土の中を泳ぐように移動するアザラシ。地面から飛び出してくる瞬間は機敏だが、空中にいる時はわりと攻撃しやすそう。大きさは2m弱で、アザラシだから牙などは無い。
レドームで確認できる30体のモンスター。
それが俺たちのすぐ近くに現れた。至近距離に近付くまで、一切気が付かれずに。
雪に同化するとか、吹雪でこちらの索敵能力を封じるとか。こいつらは、そういう能力を持っていると考えるのが妥当だ。
そんな便利系能力で不意を打たれたとなれば、これまでここに来てしまった連中がやられるのも仕方がないな。
あと、ラスダンに出てくるモンスターの中でも、こいつらはかなり強い。
特殊能力頼りのモンスターではなく、素の能力が高いのだ。九条さんと一緒に戦った7日目キャンプ以降のリザードマンとかより、ずっと厄介だ。
単体でドラゴンほど強くないけど、雑魚モンスターとしてはこれまでで一番だな。
空を飛び素早く動き回るペンギンがこちらを攪乱して、更に地面を泳ぐアザラシが飛び出してきたところに、明らかにパワータイプのシロクマが広範囲を巻き込むように攻めてくると、さすがに厳しい。
猛吹雪という環境も敵に有利なので、苦戦を強いられる。
こっちが少数だったら、だけど。
残念ながらこっちは大所帯で、敵より数が多かった。
マンツーマンで敵を受け持ち、シロクマのようなデカブツはこちらが複数で囲む。
冷静に対処すれば対処は可能であり、安全重視でゆっくり数を減らせばいい。
懸念材料は敵の増援だが、このレベルの敵が増えたところで、言うほどの脅威にはならない。
いつかのような、ドラゴンの大群でも出てくるなら話は別だけどね。
危なげなくモンスター第一陣を処理し終えるタイミングで、追加のモンスターがやってくる。
今度はフロストドラゴン? 翼が無くて長い体毛を持つドラゴンも歩いてこちらに来たので、これも撃破。
出てくる敵が寒冷地仕様になっただけで、このあたりは通常のラスダンと同じパターンのようだった。
状況は極悪だと思うけど、モンスターの強さは常識の範囲。
警戒は続けるけど、絶望的と言うほど厳しい状況じゃなさそうだった。




