表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
427/528

成功したダンジョン産業③

 昔、ホテルマンの漫画で読んだ話にこんなのがある。

 「収入を10倍にするにはどうすればいいか?」という問題に対し、多数が「客を10倍確保する」という考え方をしたのだが、正解は「値段10倍の商品を用意する」という方法だった。


 鹿追町はそのやり方で大きく成長した。

 ここには金を持っている冒険者が来るのだから、そのやり方が通用したのだ。


 これは成功した例ではあるが、同じやり方がどこにでも通用するかというと、そんな事はない。

 成功するには、成功するための条件がいくつもあり、自力で用意しやすい環境はともかく、タイミングのかみ合わせは運否天賦(うんぷてんぷ)だ。



 そもそも、絶景や美食なんかは用意しようと思ってすぐに用意できるものでもない。

 バズったとか、そういう幸運はあるだろうが、そういうのだってだいたいがバズる前の地道な努力が報われただけ。こことか、特にそんな感じだよ。


 山々そのものの整備だけでなく、映えポイントに行くための道の整備。それをずっと維持し続け。

 美食はブランド牛を作るために何年も試行錯誤を繰り返し。そうやって育った牛を守るのも大切だし、そこからさらに上を目指すことも忘れていない。

 だから、成功している。


 降って湧いた幸運一つで成功し続けるのは無理なんだから、ダンジョンに村おこしを求めるのは間違いだと、早く気が付いてほしい。





 逆に、ダンジョンでの村おこしに失敗したところはどうだろうか。

 そのほとんどは、お金をほとんど落と()ない成りたて冒険者を相手に過剰なサービスを提供しようとして、見向きもされていなかった。

 だから連中の主張が通ってダンジョンを解放したところで、「これで勝てる!」と無駄に投資し、資金が回収できずに焦げ付くことになるだろう。



 企業保有のダンジョンは初心者向けの難易度だし、そもそもが不人気で売れ残っていたダンジョンだ。

 まぁ、来るとすれば初心者で、成りたて冒険者だ。


 成りたて冒険者は、装備品にお金を使ったばかりだ。収入もほとんど無い。

 そのうえ、ロボをレンタルしてダンジョンに潜ると確実に赤字になる。

 当たり前だが、そういった人は他のところで資金をケチる。


 食事をランクダウンし、寝床は漫画喫茶などを利用して宿泊費も削減。

 当然のように、ダンジョンで役立つ道具類には目もくれない。


 そんな連中を呼び込んだとして、どうやって村おこしをしようというのか。



 そもそも、だ。

 現在、企業保有のダンジョンはその価値を大きく引き上げられている。

 つまり、ダンジョンを買い取るための金額は、企業がダンジョンを確保した時の値段と同じはずがない。

 軽く見積もっても億単位を要求されるだろうし、もう一桁上でも驚かない。


 それだけのお金を払ってしまえば、どの程度でそれを回収できるというのか。

 そこからさらに開発関連へのテコ入れだってしなきゃいけないんだ。

 普通に考えれば、無駄に数十年先まで残る負債を抱える未来が予測できるはずだぞ。村を興すどころか、村を消す行為だと思う。



 最悪なのは、特殊な売れ残りダンジョンだろう。


 以前行くだけ行った、海ダンジョン。

 小さな島がある以外は、ほとんどが海という面倒くさいダンジョンだ。

 ああいったダンジョンは、結局人が来ない。

 ギルドが共同管理してくれるならともかく、そうでなければ確実に赤字垂れ流しで、スタンピードのリスクを背負うだけという結果になる。

 全国を一括で扱おうとすれば、そういったところがネックになる。


 ある意味、いまだに売れないダンジョンを抱えている人には朗報だろう。

 責任が自分の手から離れ、解放されるんだから。

 ただ、リスクを背負わされる人には、とんでもない話であるのも間違いない。



 誰がどんな損をして、誰が得をするかは知らないけど、俺は俺の利益のために動くよ。

 できる事をチマチマと積み重ねさせてもらう。


 もちろん、合法な範囲でね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ