成功したダンジョン産業②
成功したダンジョン産業の、真面目な分析なんかは考えていない。
客の立場で色々と試し、経験してみる事がメインになる。
十勝公式でお薦めの宿で美味いものを食う、ダンジョンの行き帰りのサポートを頼む。そんな感じだ。
自分は冒険者なので、これぐらいの気持ちでいた方が良いだろう。
自分はプロのレビュワーではない。大して利用したいと思えないようなサービスにまで手を伸ばしたところで、真面な評価も出来ないと思う。
で、自分が利用したいサービスってそれぐらいなんだよな、と言うわけだ。
「お帰りなさいませ。
お食事は予定通りのお時間でよろしかったでしょうか?」
肩透かしなダンジョンから戻ると、ちょうど夕飯の時間である。
フロントで鍵を受け取ると、夕飯の予定を聞かれる。
こういうのは先に時間を指定してしまえば、後はその通りにすれば良いって考え方もある。
ただ、冒険者はダンジョン内で戦うのが仕事で、予定通りにいかない事も多く、食べる気力を無くして遅めの夕飯が良いという事も考えられる。
なので、こうやってわざわざ確認をするのだ。
何度も予定を確認されるのが嫌だという人もいるだろうけど、確認しない方がトラブルになるというのであれば、確認する方が良い。
中にはこちらの表情や足取りから状態を推測し、聞くか聞かないか判断するホテルもあるというけど。さすがにそれが出来る奴など、そうそう居はしないだろうな。
出された夕飯は肉に海鮮、焼き魚、鍋料理と豪華である。
山菜なんかで彩りを添えるのも忘れていない。
冒険者相手のメニューだからか、全ての料理のサイズが普通より大きめで、大食いをする人を基準にしている。
実際に冒険者って大食いが多いので、そういう気遣いはありがたい。
品数を増やすタイプの対応もあるけど、あまり品数を増やされると目の前がゴチャゴチャするので俺は好きじゃない。
食べた後の皿を下げては新しい皿を持ってくるコース料理も、チマチマして好まない。後出しが許されるのはデザートぐらいだ。
そんな俺と同じような感性の人もそれなりに居るようで、こんなメニューも用意されていた。
大金を得てから何年も経っているけど、俺は生まれも育ちも庶民だし、“高級”に慣れ親しんでいるわけでもない。
稼げる冒険者がみんな金の使い方を知っているわけじゃない。
格式だとか、おしゃれだとか、そういうのに価値を見いだせなかったりする事もあり、表面上は取り繕うけど、格式張らず気楽にというか、雑な方が好ましく感じる。
ここは「高い金を払うだけの確かなもの」を「豪華で見栄え良く」提供しつつ、「こちらが純粋に楽しめる」ようにバランスを取ってあった。
歴史があって格式高いホテルだと「そのホテルの流儀」に従うのがマナーだって言われるけど、ここは宿泊客ファーストの、いいホテルだねぇ。
こっちが要求すれば料理の素材から調理法まで解説して貰えるけど、そういったサービスは求めず。
俺は一人、酒を楽しみながらゆっくり食事を楽しんだ。
そんな俺は関係無く、ロボである三人娘の扱い。
「お嬢様方、こちらはいかがでしょうか?」
「か、かっこいい」
「マスター。購入の検討をお願いします」
「ぱぱー。買ってー」
人間の、それも子供の扱いをされていた。
三人娘はテレビ出演をしているので、知名度がある。
そのキャラクターも把握されており、本当にホテルのものかどうかも分からないような商品がお土産特設コーナーに揃えられていた。
これは後で知った事だが、ホテルは近所のおもちゃ屋を召喚したらしい。
こちらを研究してきたのか、三人娘は見事に引っかかった。
子供扱いされているのが分かっている三人娘に悪乗りされたため、ロボアニメ関連の玩具を多数購入する事になった。
商売上手いなぁ。




