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問題山積み(世界)

 俺はそうやって合金の強化を行うことにしたのだが、原神たちから協力の申し出があった。


「えーと? 皆が手伝ってくれるのか?」


 原神たちは首を縦に振り、肯定の意思表示をする。

 そうして1体が俺の代わりにラメラーアーマーを着こんでダンジョンの奥へと向かっていった。


 ラメラーアーマーを着こんだ原神は動き難そうにしていたが、それもわずかな間。

 すぐに慣らしを済ませていたので、特に問題も無いだろう。



「……まぁ、頼るだけというのも良くないよな。自分の分というか、もう少し色々と作っておくか」


 原神たちを見送った俺だが、彼らだけ働かせて暇そうにしているのは良くない。

 原神たちが戻ってくるまでの間、俺は溶鉱炉で新しい合金を作るのと、加熱炉で合金の成型を行うのだった。





「意外と早いと言うべきかな。一ヶ月かからないんだ」

「1体だけですからね。原神の経験ですでにノウハウがあるから、これだけで済むという訳ですよ」


 初代タイタンを製作するにあたり、電子部品の発注から納品までは5日ほどかかるらしい。

 並行して行うが、装甲や骨格を作るのには、鴻上さんから10日程度必要と言われた。

 組付け配線、その他の作業時間についてはやはり10日程度で何とかなるとは、及川准教授の言葉だ。

 タイタンを動かすソフトについては、原神の物を流用するから本格的な製作はまだしない。調整はすでに終わっていると、四宮教授。

 出来上がったら通電チェック、デバイスチェック、試運転にエージングなどを計画しているが、これも原神の時の物を使えるので、3日程度で終わる。


 そうして試運転が終われば、ダンジョン投入となる。



「ダンジョンに投入するのは良いとして。タイタン用の兵装、じゃない。武器を作るのも面白いかな」

「刀など打ってみませんか? ガーベラでも正宗でも、どちらでも行けますよ」

「無茶を言わないでください」


 タイタンの武器について考えることにしたが、そこで及川准教授がまたネタをぶち込んでくる。

 正宗はともかく、ガーベラなストレートだったらダンジョンに持ち込む事もできないだろう。さすがにそれは手持ちの金属全部を合わせても無理だ。無茶を言わないで欲しい。



 それはともかく、タイタンの武器だ。


 タイタンはその巨体ゆえに、原神の武器を流用出来ない。

 体の大きさが違いすぎるので、原神のメインウェポンである槍など、串のようなものなのだ。体格に合わせた専用の武器が必要になる。


「そう考えると、冒険者にしてみても頭の痛い問題になるな」

「ええ。原神なら人間の冒険者の武器をそのまま使えますが、タイタンでは難しいでしょう。体の大きさに合わせた武器を作らないと」

「つまり、タイタンを量産したところで売れないでしょうね」

「それはそうでしょう。と言うよりも、タイタンは値段が凄い事になるんですよ。タイタンを買うくらいなら、原神の数を揃えた方が良いと思われるでしょうね。パワードスーツを作ったとしても、同じ問題が付きまとうでしょう」


 専用の武器が必要という事は、運用が難しいという事である。

 現在、冒険者向けの武器ショップが各地にできる程度に、武器は需要がある。原神はそんな店で売っている武器をそのまま使える。


 しかし、タイタンはそんな便利な店が無いため、こちらがセットで販売する必要が出てくる。

 その場合は武器の種類をどれだけ用意できるのかという話になるし、希望した武器が用意できるのかという事まで考えないといけない。

 ただでさえ大型という事で人と歩調を合わせられないタイタンは、武器の面でも人と違う扱いをしなくちゃいけないとなると。


 有り体に言って、売れないわけだよ。


 まぁ、そこまで積極的に売るつもりも無いというか、ただのノウハウ蓄積用だから良いんだけどさ。

 その後のパワードスーツにまで言及されると、むしろタイタンを量産して広めるぐらいの心構えが必要になるかもしれない。



 電気自動車が給電スタンドの少なさでなかなか普及しないという話を聞いた事があるけど、それと似たような話だよな、これ。

 地道に、徐々に広めていかないと何ともならない奴だ。


 自分で選んだ道ではあるが、かなり険しい獣道だな。何かの最前線を突っ走るって、そういう事なんだろうけどね。





 そうしてタイタンの作成を目指して、忙しく過ごす俺。


 そんな俺とは関係ない所で、『原神』という名の波紋が世界中に広まっていく。

 AIの進化。世界初の、機械知性体。


 それは本物なのかどうか、知りたいと考える人間は数多く。

 しかし、それを発表した大学のチームはなぜか現物を保有しておらず、メディアに情報が露出しない。

 “情報が足りない”ために妄想と願望が入り混じった話が至る所で行われだした。


 ネットワーク上のどこかでは、SFファンが騒ぎ出し、メイドロイドを求める紳士が絶叫し、法学者たちによるAIの人権をめぐる議論が白熱する。

 国を見れば、ロボットを国民とする事で得られる利益の皮算用をする者や、その危険性を説く者が現れ、どうするべきか態度を決めかねず、国を割りかねない場面もあった。


 無論、“意思を持ったロボット”を調べるだけでなく、入手すべく動き出す者もいる。

 それこそ、合法非合法、関係なくだ。



 一文字を取り巻く環境は、一触即発の火薬庫となりつつあった。

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