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戦後の影響③

 そうそう。死んだ連中がやっていた事の検証も行われた。

 「モンスターの大量発生」に関する再現実験だ。


 俺たちの報告により、ある程度は方法を予測できたという事もあって、モンスター大発生の再現は成功した。

 祠への捧げ物、篝火に歌、舞などがあると、捧げ物が消え、モンスターが大量発生する。

 多少は融通が利くようで、どこからどこまで必要かの詳細は発表されていないが、調査チームは何度も大発生を引き起こしたという。


 その間、俺たちはラスダンには入れなかったが、もともとラスダンは日参する場所じゃないので、そこまで大きな影響は出ていない。

 精々、長めの休暇を取ったという程度だろう。

 俺の場合は他のダンジョンに入るだけなので、本当に大した話でも無かった。



 これらの再現実験で透明ドラゴンの出現は確認されていないが、初期の雑魚モンスター大量発生とドラゴンの大量発生までは確認されている。

 調査の人たちは入り口付近でドラゴンの大量発生を見届けた後、撤退して様子を見た。

 これを放置するとスタンピードになりかねないという懸念はあったが、初回もドラゴンを倒していなかったので、リスクは低いと判断されたのである。


 今は外部からダンジョンの魔力反応を計測した結果、ドラゴンの大量発生とスタンピードに関連性が無いという結論が出ている。

 そして、放置から1日経つと、大発生は自然に治まるという結果となった。

 ありがたくはあるが、この事実が連中の馬鹿な行動に繋がるのだと思うと、ちょっと複雑な気分である。



 今回は無事だったが、次回も無事であるという保証が無いため、大発生の誘発は禁止される事となる。

 国のお役人も、下手な指示を出して人死にが出たら責任問題になるため、安全策を優先した。

 これについて関係する冒険者から異論を挟む者はおらず、全員が納得済みだ。



 一部の、ドラゴンのドロップアイテム値下げを目論む連中からリスク度外視でやって欲しいという要望があったが、そんな要望に応える理由は無い。

 俺のところに来たのは居ないが、他の人はしつこく言ってきた企業に対し取引中止などの制裁を科すなどした。


 こちらも命が懸かっているので、安易に取引に応じたりはしない。

 ついでに儲けが減るので、何かしら、別の利益を提示されないと誰も動かない。


 そりゃあ、時間単位で見た収入は増えるだろう。

 しかし、そこにかかる労力で儲けを割れば、収入は実質半額以下になる。

 一回で億単位の金を稼げるラスダン専門冒険者の稼ぎを考えると、この損失を埋めるのは容易ではない。

 付け加えると、単独のパーティが動いたところでどうにもならないので、かかる費用はその分跳ね上がるし、調整も難しくなる。


 それが分かっている人間にしてみれば、依頼するだけ無駄だと理解できる。

 ただ、目先の金に目が眩んだお馬鹿さんは、そんな簡単な話すら理解できない。

 自分の利益だけを求め、端金で人を動かそうとする。分類上は一次生産者である冒険者を低く見積もり、高圧的に要求して来さえする。


 大企業の社長とか部長クラスの人間には、そういった特権意識の塊が一定の割合で混ざるのだ。

 昔は人より努力して成功した真面な人でも、立場を得て、金を得て、権力を振るううちに人間が腐っていく事は、たまにある。


 だから頭の悪い事をして新聞を騒がせる偉い人とか、定期的に出てくるのだ。

 残念ながら、こういった人がいなくなる事はないのが人間である。

 俺に出来る事は、その都度ごとに対応するぐらいだろう。





 この騒動で、最後の最後まで気になった事がある。


 それは、連中の連れていたティターンだ。

 その行方だけは、誰も知らない。



 また、透明ドラゴンの討伐報酬にティターン関連の物が無かった事も、引っかかっている。

 あの時に手に入れた物は全員で公平に分配したが、その中にそれらしい物は無かった。


 あいつらは何を倒して、ティターンを手に入れたのか。

 あのドラゴンの中に、ボス相当の奴はいたのか。

 俺には分からない事が多く残ったまま、モンスター大量発生に関する事件は終わりを告げたのだった。

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