戦後の影響①
なんとか戦いが終わった。
透明ドラゴンが増援の起点だったらしく、倒し終えた後に追加が無くなったため、なんとか全員生き残る事が出来た。
戦いは厳しかったが、その分、終わった後の収入は大きい。
「ま、さすがにどうやっても値崩れするがな」
大量にドラゴンのトレジャーボックスが集まり、それだけで通常のラスダン探索の10倍以上のドロップアイテムが確保された。
それら全てを一回の納品で市場に流せば大幅な値崩れが起きるので、あの場にいた全員で協定を作り、段階的に売り出す事になった。
もっとも、それでも値崩れ、単価の減少は免れないというのが共通した意見だ。
ドラゴンのドロップ品の需要は大きく、これだけで完全に満たせるようなものではないが、通常以上に数が出回り在庫があると思われれば購入者の買い控え、談合などで値が上がりにくくなる。
こちらも損をしたくないので、売りの調整のために細かい相談をしようと、互いの連絡先を交換し合った。
ある意味、このつながりが、今回の冒険で手に入った最大の戦果かもしれない。
「未強化で良いからタイタンを売ってください」
「俺たちもタイタンを買いたい。ちょっと知り合いに声をかけて強化させる。そこで壊れても文句は言わない」
「スマンが、俺らは移動車両付きだな。強化の方は自分らでやるよ」
なお、知り合った人たちからは、タイタンの購入をしたいという申し込みが相次いだ。
今回の戦闘でタイタンの有用性、将来性について自分の身で理解したからだ。
俺が連れている戦闘能力そのままのタイタンを売って貰えないというのは誰もが理解しているので、未強化で良いから売ってくれと頼まれた。
最低限の強化をした廉価版なら早い段階で売れると口を滑らせれば、100機以上の予約が入った。
正しくは「機体完成後に強化をしてから売っているから、そんなに量産できるものでもない」と言ったんだけど。
強化に関しては自分でやる人、知り合いに頼む人様々だが、彼らなりにどうにかするビジョンはある。
そういった購入希望者の熱意を読み間違い、安易な言葉で逃げようとしたのが間違いだった。
迂闊に理由を付けて逃げると、その理由を潰されて逃げ道を塞がれる。
やっぱりこのランクにいる人って油断できないんだよなぁ。
それがダンジョン攻略に直接関係しない分野でも、だな。
さすがにすぐにタイタン100機を用意するのは無理なので、そこは客と会社の従業員の両方に頭を下げる事になったよ。
早い段階で売れると言ったのに納品までやっぱり時間がかかるので、そこはすまないと言わなきゃならないのは確かだけど、急な増産指示で残業させる従業員にも、予定外の仕事になるんだから謝らないと。
特に部品を購入している調達からしばらく苦情が来るのは間違いないんだよなぁ。
あっちは他社が絡むので、急な対応依頼をすると後々まで悪影響が出るんだよ。
簡単に「できます」「売ります」「お客様の声に対応します」を言ってはいけないという営業の基本を忘れたらいけない。
特別対応とか、客にしたらありがたい話なんだと思う。
けど、メーカー側としては、特別対応とかを始めるとキリが無い。
普段と違う事をすればリスクも発生する。不具合は4Mの変化点で起きやすくなる物だからな。
あと、従業員も人間で、それぞれの都合もあるんだから。不用意に予定を崩すのは、絶対に駄目。
自分独りならいくらでも無理をして良いけど、そこに他人を巻き込むのは違うだろう。
いや、法律的に自分独りでも無茶や無理をしてはいけないんだけどね?
とにかく、予定していた事が崩されてしまえば気分も悪いだろうから、関係部署に詫びを予定しておこう。
タイタンの増産が一時的なもので終わるか、それとも恒常的なものになるかは、流れを見極める必要がある。
一応、何パーセントかの増産を意識していこうと思うけど、みんなはどう判断するだろうね。




