表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
410/528

状況悪化④

 複数の冒険者パーティが共闘するというのは、昨今あまり聞かない。

 普段ラスダンでやっているのは、共闘ではなく交代制の間引きのような物。九条さんを最前線まで消耗させないための協力であり、肩を並べて戦っているわけではない。

 それに共闘となると報酬の分配で揉めるため、そのリスクを減らすために普段はパーティ単位で戦うのが普通になっていたのだ。


 ダンジョンで戦う分には、共闘など必要ない。

 ダンジョンで戦うのではなく地上でスタンピートでも起これば共闘し連携する事になり経験も積めるのだろうが、ダンジョンの魔力を感知できるようになって以来、スタンピードは起きていない。

 よって冒険者には連携の経験を積む場がなくなっていた。


 完璧な連携は無理というのがみんなに共通する見解だ。

 しかし完全にバラバラに戦うよりも、ある程度まとまって戦うだけでも効果はある。

 だから戦列を作り、それを崩さないように戦う事で意見は一致。不完全でも戦闘する範囲を少しでも少なくし、隙を減らす。



 なお、俺たちは視野の広いレドーム持ちを中心に周囲の様子を観察させ、他の冒険者のフォローを行う。

 戦闘に直接手を貸すのではなく、戦闘中のパーティが他のドラゴンに襲われないよう、牽制をする遊撃のような役目だ。


 目の前だけでなく、こういった広域警戒は集中力を要するため、人間だと長続きしないものだが、ロボットに任せれば安定する。

 一応は人間の筈の俺自身は気を抜けないが、これでも何度も修羅場をくぐってきたのだから、何時間でもやり抜いてみせるよ。





 ドラゴンの大群との戦闘開始から1時間ほど経過した。

 倒した数はそろそろ100に届くが、それでようやく折り返し地点。減らしても減らしても増援が来るため、かなりヤバい。

 下手をすると、ラスダンで戦ったいつかのティターンのような、無限湧きするタイプの敵なのかも知れない。


 終わりが見えない戦いは精神的にキツい。

 こうなるとみんなの消耗も大きく、いくつかのパーティは疲労の色が強くなっている。

 戦闘の効率はだんだん悪くなっていた。


 逆に調子が上がっていくのは俺たちだ。

 敵を倒すたびに強化される黒の魔剣を持っているので、俺と三人娘の火力はかなり上がっていた。

 だからか、俺たちはいつの間にか遊撃ではなく、九条さんと並ぶ主戦力となっていた。



「良い武器を持ってるじゃないか!」

「売れなくて、自分たちで使い始めたんですけどね! 売れなくて良かったですよ!」

「ああチクショウ! その情報はチェックしてねえ! 勿体ねえなぁ!」


 焦りや不安は厄介だ。

 どうにかしようと思っても、ただ意識するだけで簡単にどうにかなるようなものでもない。


 だから全く関係無い会話を大声でして、そういった感情を少しでも軽減する。

 焦りとかから目を逸らし、大声を出すことで精神の安定を図る。

 大きな声を出すと気持ちが高揚するからね。心が負けないようにする場面ではとても有効だ。

 お互い、まだ戦えると気持ちを奮い立たせる。



 たった1時間の共闘でも、俺たちは徐々に連携できるようになってきている。

 が、それでも足りない。


 精神的に負けなくても、魔力や体力が尽きる。

 装備だって消耗していく。

 このまま戦って、勝利するビジョンがない。


 現実的な解決策が必要なのだ。

 もっと根本的に、この状況を終わらせるような何かが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ