問題山積み(タイタン)
「古巣の話はどうでもいいんですよ。
そんな事より、ロボットの話をしましょう」
「あっ、はい」
原神の販売を行う昔の仲間。
そんな彼らの話を続ける事を、及川准教授は拒否した。
俺も冒険者時代の話、史郎やその他の連中について語りたいとは思わないので、そこはそういうものだと思って受け入れた。
中にはそんな奴らの悪口で盛り上がる人もいるんだけど、俺たちはそうじゃないらしい。
俺だって、自分を裏切った連中を肴に盛り上がりたいとは思わないのだ。関わらないのが一番である。
「大型のロボットは、とりあえず『タイタン』としておきましょうか」
「外見がこうですし、『〇ムジード』と呼ぶのはどうでしょう?」
「それは拙いので、スポンサーとして却下します」
「えぇ。正式な開発コードが決まるまでの繋ぎじゃないですか」
ロボットの開発コードは、またそのうち考えるとして。仮称でいいから適当な名前を付けてみた。
『タイタン』、つまり巨神族である。
大きな神様というと、日本の場合だと神様ではなく妖怪かもしれないが『だいだら法師』を最初に思い浮かべるが、どうにも呼びにくい。
仮の名前だし、呼びやすい名前と言うと、ギリシャ神話のタイタンの方が俺は呼びやすいと思ったわけだ。
神様縛りなのは『原神』が頭の片隅にあったからだな。
及川准教授は原神の影響を消したいためにネタに走ったようだが、そういったヤバいネタはたとえ仮であっても使いたくないぞ。
……及川准教授、何気にネタに走る所があるよな。ナックルバンカーといい。
会話をしていても、ちょっと油断できないな。
ざっと見た感じではあるが、良さそうなロボットだと思った。
全体的に体が太く、鈍重な外見をしているが、それでも細かい動きが素早くできるようになっているというし、出力も申し分ない。それに分厚い装甲に守られているため、防御力だって原神よりも上だ。
「その代わり、大型のバッテリーを搭載しているにも拘らず、稼働時間は原神に劣ります。
フルの状態からでも、四半日と経たず戦えなくなりますね」
性能面は、ほとんどの面で原神を圧倒している。
ただ、どうしてもエネルギー関連が弱点になり、ここだけは原神に敵わないという。
「そこはもう、バランスの問題なんですね。原神と比較すると、短期決戦仕様と言いますか、長時間の戦闘には耐えられません。
残念ながら、原神ほどのパフォーマンスは難しいですよ。
それに、製作コストも跳ね上がっています。原神のおおよそ4倍といった所でしょうか? 量産には向きませんね」
サイズが2mから3mになると、単純計算で使う素材が3倍以上になる。
実際はセンサー類などの数を増やす訳ではないのだから、もっと安くなりそうな気もしていた。
だが、サイズが上がった事で求められる強度も跳ね上がり、使用するフレームの素材は上がってしまった要求強度への対応として、5割り増しとなっている。
で、同じく大型化するバッテリーでも、重量増加への対応その他のために使用量も倍加してしまったため、連続稼働時間が半分ぐらいとなってしまうそうだ。
「バッテリーのレベルアップは出来ますよね? そうすればもう少し長く動けると思いますけど」
「それは計算せず、粛々と運用計画を立てた方が良いと思いますよ。
レベルアップに期待するのはいいですけど、過度な期待は裏切られた時が辛いですから。余計な、不確定なものに縋ってはいけませんよ」
それもそうか。
レベルアップの内容は人が制御できるものではない。
冒険者にできる事といえば、確率の神様に祈るぐらいであったな。
まさしく、神のみぞ知る話なんだから。
「『タイタン』の基本的な情報は理解しました。
ちなみに、なんですけど。これに鉄―ゴブリンメタル合金を使う事は出来ますか?」
スペックの話を延々としていたので、喉が渇いた。
俺は話す間に温くなったお茶を飲むと、その他の気になる話を振ってみた。
俺の作っている合金は使えるのかどうかというお話である。
「残念ながら、最初は使いません。ある程度データを取り終えた後なら構いませんよ。
装甲として使う分には、そこまで神経質にならなくても大丈夫でしょうから。
そもそも、ゴブリンの相手であれば攻撃をくらう事もありませんしね」
初期製作分には使わない。
しかし、今後は使う可能性があると、及川准教授は胸を叩いて肯定的な返事をくれた。
どこか曖昧で確約ではないけれど、そこはもういい。
一歩前進であった。
「なら、できる限り今のうちから強化しておきますね。ラメラーアーマーも作りましたし、これを使える所まで強化しておきます」
「そう、ですか。期待していますね」
俺はまだ時間的な余裕があるのだからと、今のうちに合金のレベルアップを進めておくことにする。
よっし! ここから忙しくなるな!