モンスター大発生(2回目)②
犯罪者っていうのは、現行犯なら警官ではない民間人でも逮捕できる。
だけど、そこに暴力行為が加わると、ちょっと話が怪しくなる。
連中を現行犯で取り押さえる場合、無傷で捕まえるというのは難しい。
抵抗されるというのが理由の一つ。多少ではなく結構こちらの戦力が上だと判断しているが、それでも無傷はまず無理だろう。特殊な戦力も持っていたようだしね。
それに、捕まえたあとだって大変だ。なにせ、モンスターの大群が発生しているのだ。そんな中、犯罪者の護送などしていられない。
だったらこの場は見逃し、証拠をお上に提出し、彼らに逮捕してもらうのが正解だ。
わざわざ俺たちがリスクを背負う理由など無い。
なにより、連中が本当にモンスター大発生の犯人だと確定していないんだ。
迂闊な行動を取って、こっちが悪者にされたら堪らないね。
「こっちの敵は……回避するのは難しいか。他と合流される前に倒していこう」
まずは仲間との合流が優先。
そういった考えで、最短の時間で拠点キャンプに戻るルートを考える。
敵と戦うとなると、どうしても時間がかかる。
オマケとばかりに敵の増援が来ると目も当てられない。
だったら迂回した方が良さそうな戦闘はすべて回避し、そのまま突っ切った方が早い、小さな集団のみを倒して生きのが最速だ。
ただ、戦闘を回避したつもりでも、敵に気が付かれてしまえば結局戦わねばならない。
追いかけられれば敵集団がそこにどんどん合流していく可能性すらある。
そうならないためにも、早めの対処が求められる。
それに、トレインはゲームでいうMPK、間接的な殺人に相当する。
犠牲者の出ない未遂であっても、引き連れた敵の数が多くタチが悪ければ、実刑もあり得る。そんなのは嫌だ。
拠点の仲間と合流して戦う方が安定するとしても、俺たちだけでどうにかしていく必要があった。
「短期決戦で。出し惜しみはしない」
「ミツケタ」
「これが私の全力全開!」
「秘剣、燕返し!! なんちゃって」
目の前の集団に時間をかければ、他の所からも敵が来る。
可能な限り、速攻で戦わないとドツボにはまる。
そのため、魔力の消費を無視し、戦術は時間最優先で組み立てていく。
継続して戦う事を意識せず、魔法を使う。
周囲一帯を凍らせるぐらいのつもりで気温低下を引き起こす。一気に気温がマイナスになった。
急激な気温変化で風が吹き荒れるが、そちらは俺たちにとって有利に働くため、むしろもっと吹けとすら言いたい。
この環境、リザードマンとか、変温動物系モンスターにはキツいだろう。
さすがにドラゴン相手には通用しないけど、この気温変化は雑魚モンスターへのデバフとして有効に働く。
俺だって、生身だったら相当厳しい。バトルクロス着用中は全く問題ないけど。
そして三人娘やタイタンにとって、マイナスの世界はむしろ心地よい世界だったりする。
急激な気温変化による金属へのダメージは確かにあるんだけど、自己再生可能な連中からしたら、十分に許容範囲内。それよりも排熱効率の上昇というメリットの方が大きい。
なので、これは味方へのバフでもある。
動きが鈍った所に攻め込めば、普段以上に短時間で戦闘を行える。
周囲の他人を巻き込みかねないうえ、魔力の消耗が大きいしドラゴンには通用しないので普段から使う魔法ではないが、今のシチュエーションには深く刺さる。
弱った敵をサクサクと倒すと、俺たちは行きとそう変わらない時間をかけてティターン二人が守る拠点キャンプへ帰るのだった。




