モンスター大発生(2回目)①
宗教、儀式系で冒険者が関わりそうな物。
パッと思いつくのは、食料品関係だ。
人間、生きていくには食事が大事。
そこで食料関連品のうち、カロリーの高い穀物類とお酒、毒消しとしても使われる塩が神聖視され、ほとんどの宗教で「特別な物」と扱われている。
そういった供物がある可能性を考慮しよう。
あとは生食の危険を理解してか、火も同様に神聖な物とするのも以下同文。まぁ、火に関しては死体を焼く、疫病対策の意味合いも強いけど。細かい事を言ってもしょうがないか。
実際、連中はたき火の一つも用意していないように見えるし。今回は関係無いな。
このあたりは冒険者が持ち込んだとしてもおかしくないわけで、極めて一般的な行動だ。
米の場合だと生米ではなくアルファ米を持ち込んでいると思うけど、パンなら色々と種類がある。
酒は嗜好品で、昔の船乗りのような「腐らない飲料」ではないけど、ダンジョン攻略中のストレス発散手段としては一般的なんだよな。俺は飲まないけど。
塩については敢えて語るまでもない。長期のダンジョン攻略に持ち込まない奴の方が少数派だよ。
「踊りが終わったようだな」
10分ほど観察していたが、そこまでは特に何事も無く、連中の踊りが終わった。
ここからが本番だと、俺たちは警戒を強める。
俺の想像が当たっていた場合、もうすぐモンスターの大発生か、ティターンのような強敵が現れるはずだ。
そして以前の経験を基に考えると、連中は自分たちの手に負えないと判断すれば、強敵から逃げて負債を他に押し付けるような真似をしかねない。
前回の大発生もなぁ。もしかしたらだが、どこかにエグい強さのモンスターが出ていて、それが討伐されてなんとかなったという可能性もある。
大発生とは意味合いが違うけど、無限湧きもジャンル的には近いと思う。
あの冒険者たちを好意的に見る理由は無いし、慎重に動くという意味でも、懐疑的な見方をしておく方が無難なんだよな。
前回と前々回。
アレと同様の事が起きる可能性を意識し、連中の観察はタイタンに任せ、俺や三人娘は周囲への意識を強める。
「モンスターの大量発生!」
「スタンピードイベント!」
「ラノベのテンプレ!」
すると、予想通りにモンスターが現れだした。
俺たちとすぐに接敵する位置ではなかったが、それでも警戒をしないとマズい量の敵の出現を関知する。
オマケで、連中のところに強敵が現れた事、連中がそれと戦うつもりでいる事を確認し、俺たちは行動を開始する。
「まずはキャンプ目指して移動するのを優先! あっちに被害が出ると戻ってくる連中の食料がキツくなる!」
「イエッサー!」
「ヤー!」
「り!」
自分たちの生存と撤退だけなら余裕だ。
けど、余裕があるなら、他へと気を回そう。
元々拠点キャンプの管理を任されていたわけだし、ここで拠点キャンプに被害が出るのは大きな失点である。
もう一つの依頼のためとはいえ、どうせなら完璧に仕事を熟して見せる。
拠点キャンプに置いてきたティターンの二人やタイタン合流したいというのもある。
あちらの戦力は十分だが、延々と戦い続けられるわけでもないし。
あいつらは勝手に拠点キャンプを放棄するような決断をしないだろうから、いざという時の判断を下せるよう、俺が戻らなきゃいけないんだ。
コソコソせずに、自分たちのペースで急いで戻れば、行きの半分も時間をかけずに済む。
モンスタートレインになってしまわないか、それだけが心配だが、そこは上手く立ち回ろう。
こうなる事は予測できていたので、判断に迷いは無い。
俺たちは事前の想定通り、可能な限り収集した情報を持ち帰りつつ、急いでその場を離れるのだった。




