二回目の拠点キャンプ管理依頼③
森の中で狩りをする。
リザードマン、蛇、ワイバーン。
雑魚モンスターと言いはするけど、前回よりも3日分、ダンジョンの奥に来ると敵のレベルアップ分で、普通のダンジョンなら単独でボスモンスターでもやれるぐらいには強い。
「そして何よりも――速さが足りない!!」
「油断をするな。容赦もするな。徹底的にやれ!」
「衝撃! 撃滅! 抹殺のぉ――え、ダメ?」
スクライ〇、良いよねー。
もっとも、こちらがそれ以上に強いので、やっぱり扱いは雑魚になるんだけど。
三人娘がボウリングのピンのようにモンスターを吹っ飛ばしているところを見ると、この世界はドラゴンなタマに侵略されたのではないかと思う。
強さのインフレって、凄いよね?
ここまで来るのに何年もかけているから、相応に苦労しているし、なんなら死にかけたどころか一回死んだわけだし。
でも、それを知らない、言葉だからか実感できない連中からすると、「チートだチート」と叫ばれる、世の理不尽。
辛いねー。
ティターン二人と一緒に行動して学んだことを、三人娘にも教えてみた。
この子らはアンデッドダンジョンで防衛陣地の構築も経験済みなので、コンセプトを理解すれば実行もたやすい。
できるのにやらないのは、単純に、「待ち」の戦い方を好んでいないだけだ。
ロボットキャラは合理性の塊のように思われるところがあるが、個性があるとは、合理性の外にある。
何かが好みで、何かが嫌い。
異なる他者を認めるとは、「好き」と「嫌い」を認める事だ。
さすがに、好き嫌いの次に来る行動まで認める必要はないけど、相手が“そんな奴”なのは認めるべきだね。
だから三人娘とティターン二人の仲が悪かったり、やり方が全く違うのも、認めるべき。
それでも結果を出しているんだから、少しぐらいは目をつぶる。
さすがに派手に喧嘩をするようであれば隔離するけど、お互いにそこまでやらないのであれば、ちょっと引き離しておくだけでいいだろう。
どちらも俺に認められる事が「格上」であると認識しているのか、それで張り合うぐらいは健全だと思うしね。
一世代前であれば、イジメではない殴り合いの喧嘩ていどは「健全な付き合い」だったらしいが。
昔の人はおおらかだったんだなぁって思うよ。
その分、やりがい搾取にブラック企業も多かったんだろうけど。
「はい、食料はこちらになります」
「サンクス。じゃ、おやすみ~」
拠点キャンプという事で、夜になれば眠りに来る冒険者が結構いる。
不寝番、夜間の警戒は俺たちがメインになるが、どこの冒険者チームも自前の不寝番は置いている。だいたいロボットだけど。
睡魔に負けないロボットは、こういう所で一番ありがたがられている。
強いとか弱いとか関係なく、敵を察知する性能だけで十分だと考えられているんだ。
どうしても戦力に不安があるなら、一人か二人、起きてすぐに戦えるような格好でいさせれば何とかなるのだ。
そうやって夜の労力を削れば、日中により戦いやすくなり、大きく稼げる。日中だって、荷物持ちとして使えば、十分役に立つ。
だから今だとロボットを使わない冒険者の方が少数である。
特に、ラスダンのような場所では一回のダンジョン攻略で稼げる金額が大きいので、ここで戦える冒険者なら借金してでも買う価値がある。
とはいえ、まともに戦力化できているのはほぼおらず、荷物持ちと不寝番に使われるだけのロボットの成長は遅く、まともに戦えるうちの子たちが異常と見られてしまうわけで。
「……そうだよなぁ。売れねーよなぁ。自分で運用した方が早えーし、稼げるし」
「ま、諦めてください」
前回同様、三人娘にタイタンたちを買いたいという人がかなり多いので、その対応に辟易としてしまう。
前回諦めた人たちは2日目の拠点の人たちなので、5日目の拠点の人とは違うのだ。
冒険者間でこういった情報の共有化がされていないこともあり、同じような話を振られる。
ここの冒険者も、前回の拠点を使ったんじゃないかと思われそうだが、何組かは素通りしてたし、先に交渉をしてきた人がいて交渉する時間が無かったりした人もいたのだ。
面倒くさいが、あとに面倒ごとを残さないためにも、ここはしっかりと話をしておく。
多少ごねる人もいるが、今のところはウザ絡みしてくるほどでもないので、何とかなっている。
常に撮影状態のロボットを侍らした俺を襲って所有権を奪う、といった事は不可能なので、実力行使に出る馬鹿もいない。
むしろ、何か仕掛けてくるとしたら、むしろ地上の方だろうね。
前回よりも奥で戦っている人は、それだけの実力と、財力と、社会的影響力があるんだし。
ダンジョンで戦おうとするほど、短絡的な人はまずありえないんだよ。




