二回目の拠点キャンプ管理依頼②
任務である拠点キャンプの構築とその防衛はタイタンたちに任せ、周辺のモンスターを減らすべく、動く。
荷物の運搬や拠点の構築にそこそこ若いタイタンも連れてきていて、ベテラン組はモンスターの間引きだ。
もちろん俺や三人娘らは間引きを担当する。
前回よりもダンジョンの奥に進んだため、敵の質が上がっている。
それだけでなく、前回の大発生の影響が残っているのか、聞いていたよりもモンスターの密度が濃く、戦闘回数が多い。
しかし、こちらの質も数も相応に上がっているので問題ない――とは、いかない。
戦力に余裕があったので、今回は配置を変えたのである。
ちょっとだけ、苦労をしているよ。
「マスター。こちらの敵、処理が終わりました」
今回は三人娘ではなく、コイオスとクレイオスを俺のパーティメンバーに加えたのだ。
前回の対応がしっかりしていたので、そのご褒美というわけである。
この二人は新人で、三人娘ほどの実績はないが、実力は確かだ。
そんな二人が頑張っているというのに、三人娘の方が経験が長く実力確かだからと、頭を押さえ続けるのは良くない。
新人だろうと多少はチャンスを与え、成り上がれる可能性を見せておくべきだろうと判断した。
三人娘に競争意識を持たせたいわけではないが、他の奴に負けたくないという考えそのものは否定しないし、何かをするにしても、分かりやすい目標としてライバルの存在はありがたい。
かわいい子供のような存在だが、甘やかすだけが親の立場ではないと思う。
で、コイオスらと組んでみた感想だが、その行動指針や戦闘スタイルは堅実としか言いようがない。
攻撃よりも防御寄りというか、攻めるよりも守るというか、被害を最小限に抑える戦い方をするのだ。
俺がリーダーとして指示を出せばそれに従い動いてみせるが、この二人にリーダーを任せてみれば、基本は“待ち”である。
俺たちは敵を見つければ襲い掛かるが、コイオスらはその場で簡易な陣を用意し、モンスターを釣って迎え撃つ。
どちらが正解と決めつける気は無いけど、実に対照的だと思ったよ。
「先ほどの戦闘は、どうだったでしょうか?」
「お見事、だな。こちらの被害は無し。殲滅速度も申し分ない」
なお、防御的と言うと、敵を倒す速度が遅くなると考えがちだが、意外とそうでもない。
「敵の攻め気が強ければ」という前提条件があるけど、防御的に戦っても殲滅速度はそこまで遅くならない。
陣の構築、釣り出す時間を考えても、陣の構築による戦闘効率の上昇は悪くない。
戦闘の安定性を重視するなら、こうした方が、正しい。
しかし、だ。
陣を構築する、自分たちが戦いやすい場所で戦うというのは、それを状況が許してくれるからだ。
陣を構築できない場所しかない場合は、どうするのか。
敵との戦いに無傷で勝てる余裕があるなら、戦いのシチュエーションをもっと多く学び、手札を増やしていく事も重要だ。
陣の構築を含め、防御的なやり方が悪いとは言わない。それもアリだと思うよ。
しかし防御的な戦いで経験を積んだあとは、攻撃的に動く経験も積んだ方が良いのではないか。多くの状況で効果的に動けるよう、同じ戦い方だけで突き進むと、どこかで躓いた時に大けがをしないかと、気になってしまう。
俺は、そういう考えを言ってみる。
「……マスターのお考えは、理解しました」
「三人娘たちは、逆に二人を真似した戦いを教えないといけないけどね。かと言って、コイオスとクレイオスが学ばなくていいかっていうのとは、別問題なんだ」
「ご安心を。やり方を変えようと、結果を出して見せます」
この二人、やる気はしっかりあるので、指導する側も楽でいい。
ダメな点、改善できそうなところを指摘すると、それだけでやる気を無くす人って多いからな。
特に、昇進よりも自由時間を求めるタイプの社員には、その傾向が強く見られる。
やる気のある部下を持てて、俺は嬉しいよ。
二人には言わなかったが、三人娘とティターン二人の戦闘能力の差は、結構縮まったと思う。
成長速度、潜在能力は二人の方が上なのかもな。




