大規模戦闘①
数の暴力で一番厄介なのは、「戦線の広さ」だと思う。
目の前の敵と戦っている間にも、他の場所が攻められる。移動には時間がかかるし、複数の戦場を抱えてしまえば、どうしても手が足りなくなる。
下手に手を広げ、戦力を分散させられないのは仕方がないのだ。
こうなると、敵の強い・弱いはそこまで関係無かったりする。
「キャンプ地の防衛のためにも、早期襲撃で敵の数を減らさない事には始まらないよな」
「MAP兵器は、まだですか?」
「見つかりにくいから仕方がない!」
「ピコン! 超級覇王電影〇を閃き……ません~」
敵の総数は、最終的に100どころか300を超えた。
これまでで最大規模の大集団である。
この数からキャンプ地を守りつつ戦うのは不可能で、守勢に入ったらキャンプ地を潰されて終わってしまう。
物資のロストに対するペナルティは無いものの、ただ何もせず任務失敗というのは、受け入れられる話ではない。できる限り、足搔いてみせるのがプロというものだ。
ただ漫然と「できません」と言うのは子供のお使いである。
だから、こちらが攻勢に出て、まずは敵の数を削る。
全体の戦力比を見れば厳しいかもしれないが、個人の戦力比を比較すれば、間違いなくこちらが有利だ。
追加でドラゴンが出てくるとしても、現在のエリアであればリスクは最小限。
むしろ、ブレスで同士討ちを狙っていけるので、ドラゴンには早々に出てきて欲しいまである。
敵の姿を捉えたのは、まだ森の中である。
姿を隠すには都合がいいので、光織たちを待機させ、先制攻撃を仕掛ける事にした。
敵の出鼻を挫くには、先頭集団に一撃入れるのが良い。
それも、不意を突くような一撃であればなおさらだ。
敵の意識をそらすため、まずは俺が単独行動を行い、光織たちと敵の距離が近くなったタイミングを狙い、少し離れたところで大きな音を立てた。
多数の敵が俺に意識を向ける。近い所にいた奴らは、足を止め、武器を構え、俺を警戒する。
先頭集団は距離があったため、こちらに向かってこないが、それでもその意識がそれた。
「一番槍!」
「追撃!」
「アタリが出たからもう一回~!」
待機していた光織たちはその隙を逃さず、待機状態を解除し敵へと襲い掛かる。
先頭集団が三人娘の襲撃に気が付き武器を構えようとする間に接敵を終え、その重い一撃を加えていく。
パワーに定評のある光織たちは、斧で、槍で、敵を瞬殺した。
斧を扱う光織は、敵であるリザードマンごと周囲の木々をなぎ倒し、戦場の視界を広くしていった。
六花と晴海も、2体3体とまとめて槍で貫いて数を減らしていく。
俺が陽動だと気が付き、目の前の俺に向けるべき意識を先頭集団に向けてしまった残念な敵もいたので、俺も有り難くそいつらを殺す。
あとは連れていたタイタンたちも戦闘に加わり、流れは俺たちに味方した。
変なところで人間向けの戦術が使えるのは助かる。
機械的に、虫のように、淡々と目の前の敵に対処するタイプが相手では、こうはいかない。
目の前のモンスターどもは社会性を持ち、考えて生きている。
あちらはあちらで学習するし、独自の戦術なんかも使って動くのだが、今回はそれが裏目に出た形である。
俺たちが任されているのが浅い所だから、こういった簡単な戦術にも引っかかってくれるとも言う。
奥の方に行けば、逆にこっちがしてやられる可能性も高くなるらしいからな。
ま、そこまで奥に踏み込む頃には、俺たちも相応に成長していると思うけど。
初手の結果は上々。
こちらは勢い付き、敵は受けに回り良い様にされている。
が、こちらの優勢も徐々に勢いをなくしていく。
敵の指揮官が雑兵の統制を図ったからだ。
初手の混乱は収められ、敵の、組織だった反撃が始まる。




