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拠点キャンプ地の管理依頼②

 ダンジョンに入り、さっさと移動して拠点を設置。

 こういった拠点を組み上げる装備はアンデッドダンジョンの頃から作っているし、いちいち遅延しない。

 割と広めの、快適な居住空間が出来上がる。


 なお、安全性は周囲を守ってくれる皆に依存するため、そこまででもない。

 と言うか、ドラゴン相手に耐えられるシェルターを作れるわけではないので、大事なのは居住性と、展開・収納性能だったりするわけだが。



「うわ、ベッドまで持ち込むとか」

「簡単に組み立てられるものですけどね。有ると無いとではかなり違いますよ」


 テントに床、簡単な家具類。

 それに夜間も周辺警戒を行い、戦闘も任せられるロボットたち。

 ここまで気合いの入ったキャンプはこれまでに無く、利用者たちは一様に驚いている。


 普通であれば、冒険者たちだってコンディションを維持するためにも、住環境に気を遣うと思うんだけど。

 それを許して貰えないのは、やっぱりここがモンスターのいるダンジョンだからだ。


 襲われた時の事を考えると、どうしても拠点の設備を最低限にして、身動きを取りやすくするのを優先する。

 ドラゴンみたいなトンデモ生物を意識して、疲労回復とかよりすぐに逃亡できる方が良いと考えてしまう。

 死んだら終わりなので、生存を優先するのは普通のことだよな。


 ただ、うちは三人娘やタイタンたちが夜間も寝ずにモンスターをどうにかしてくれるし、レドームで広範囲を索敵しているので、奇襲されることもない。

 だから普通にテントを使うし、簡易ベッドで寝ることも問題ない。



 おかげで少し面倒な「このタイタンたちを売ってくれ」って話の持ちかけが多発したけど、その辺は当然断っている。


 いや、だから、このタイタンたちは売れないんだって。

 市販品を購入して、自分らで連れ回し、強化してくださいよ。

 ……あれ? レドームに相当する装備って、出回ってなかったっけ? 無いの?

 初期の性能はこれぐらいで、レベルアップすると――


 そんなこんなで、先に行く人、荷物を届けに来た人、周辺のモンスター間引きを手伝ってくれる人らと交流しつつ、ダンジョン内でしばらく生活をしていた。





 ダンジョン内で生活すること、7日。

 ようやく本命の人が通りかかった。


「よお。頑張れよ」


 軽く挨拶だけで済ませ、そのまま通り過ぎていったのは九条さん。

 彼は食料や水などの荷物を持たず一気に奥地まで進むため、他の冒険者の三倍の速度で移動する。通常移動で2日目の俺たちの拠点で休むわけではない。

 問題が無いかを確認する事すらせずに、水入りペットボトルを一本受け取ると、ろくに話もせず通り過ぎていった。


 この辺りは、こちらの実績不足で、九条さんが休む拠点はまだ任せられないと、そういう話である。

 こちらとしても、面倒事を避けたいからその方がありがたい。

 たとえ報酬が良かろうと、俺としては気楽な今の仕事で十分なのだ。金よりも責任の無い仕事を選ぶ。



 何より、今回は別方面のリスクが大きすぎたのだ。





 今回のキャンプ拠点を任せられるにあたって、俺が気にしていたのは「他の冒険者に、俺の事情がバレるかどうか」である。


 多くの冒険者と関わる今回の依頼。

 体質がモンスター寄りになったばかりの俺には身バレのリスクがあった。

 普通の冒険者が気が付かなくても、ごく一部の勘の良い人なら気が付くかもしれなかった。


 特に、ここは日本の冒険者の最前線なのだ。

 そういった能力が高い人が居てもおかしくない。



 しかし、結果は杞憂に終わった。


 誰からも、何も指摘されず、世間話をして、送り出した。

 最前線の最先端である九条さんすら何も言って来なかったのだから、俺の事を人から指摘される可能性はかなり低いと考えられる。

 あとは科学的な検査に引っ掛からなければ、現場を直接見られでもしない限り、バレたりしない。


 もしかしたら、気が付いたけど、この場で指摘するのを止めた人がいたかもしれない。

 ただ、そういった配慮をする人であれば、会話と交渉が可能であると思う。

 俺の危機的状況は去ったのだ。

 俺自身がヘマをしなければなんとかなる。



 何かフラグが建設された気がしたけど、この日、俺は心から安心して、ゆっくり眠れたのだった。

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