死と再生①
こちらの行動を予測して体を動かしているならばと、俺は魔法主体の戦い方に切り替えてみるが、これも簡単に対応されてしまった。
普段やらないような力任せの戦い方をしてみたが、その時はカウンターを食らい、胸部フレーム破損と大ダメージを受けて終わった。
新しい戦闘パターンも三人娘に依頼して試したが、それも無駄。
いっそのこと、俺がバトルクロスを脱ぎ捨てて戦うことも考えたが、それはただのパワーダウンでしかなく上手くいく保証はどこにもない。
つまり無意味でハイリスクだ。決断するには至らない。こちらに手詰まり感が漂い出す。
オケアノスの方はというと、そっちは上手く戦っているようで、一対二であっても善戦している。敵を倒すには至らないが、押さえの仕事は十二分に果たしていた。
敵の追加やアイツの心配をしなくていのは助かるよ。頼りになる。
さて。ではどうしようかと、俺は頭を悩ませる。
漫画やラノベなどでよく見た、心を読む妖怪「サトリ」対策は実行できない。
心を無にするとか言われても、それがすぐに出来るなら苦労はしないのだ。「防御や回避できないほどの攻撃を」と言うには相手の方が高スペックのため、四人がかりでも厳しい。敵も木偶ではないのだ。攻撃密度を上げようが、致命でない攻撃をいなし回避する隙間を作り、ダメージを最小限に抑えるぐらいはやってのける。
こちらの攻撃を読み切っていると、そういう事も出来るようだ。
タイタンたちも連れてくるべきだった。これまでと同じレベルの敵が出るだろうと思って油断しすぎた。
今更後悔するが、もう遅い。
現状は手持ちの戦力だけで切り抜けないといけなかった。
「光織。斧を使ってくれ」
「いいの?」
「出し惜しみする方が、よっぽどマズいよ。
六花、晴海もそのつもりで動いてくれ」
ここで俺は単純な火力強化として、光織に万華鋼の斧の使用を指示した。
光織の斧は対ウッドフェンリル用の装備で、『巨大化』『火属性』の能力を持っている。
火力が強化されると言ったところで、そもそもクリーンヒットが狙えず「当たらなければどうと言うことはない」を地で行く今は、大振りになってしまう分だけ逆効果かもしれない。しかも消耗が大きくなる。
リスクとコストに見合う戦果が期待できるかというと、そこまででもないだろうな。
そんな状態ではあるが、六花と晴海にも短期決戦のつもりで戦うように言っておく。
攻撃力を上げて少しでも圧を強め、どうにか活路を見出したかった。
多少のリスクを背負うことになるが、それは許容できるリスクだからと。
――この時の俺はまだ、敵を見誤っていたのだ。
戦っている相手はバトルクロス。
その意味を忘れていた事に気が付いたのは、本当に最期の時だった。
戦闘に置いて火力を増すというのは、簡単な話ではない。
ただ威力を上げただけで済む筈は無い。
大振りになった隙の大きい攻撃、その攻撃を当てる事への要求事項が変化。
結果として周囲も最適化された動きを変えることになり、連携に乱れが生じてしまう。
相手は攻め気を抑え、ただこちらの自滅を待つように戦えば良くなった。
か細い勝ち目は、ここで途絶えた。
数度のぶつかり合い。
ヒヤリとしつつも、なんとか戦えていたと考えていた俺。
そんな甘い俺を嘲笑うように、ティターンの胸部装甲が解放され。
「――あ」
中身を受け持つロボットの貫手が、俺の頭部を捉え。
バトルクロスの装甲を突き破り。
俺の左目の辺りから入った手が、完全に見えるようになるまで貫通させた。
脳の物理的破壊。
即死である。
人間としては。




