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イレギュラー①

 それは、ラスダンで慣熟訓練を行っている最中の出来事だった。


「なにか、騒がしくないか?」

「パターン青、イレギュラーです?」

「総員、第一種戦闘配備!」

「もう戦闘中だよ!?」


 俺たちはドラゴンの前哨戦、リザードマンなどを相手に戦っていた。

 何度も戦っているから、レベルとか能力的には変わっていなくても、以前と同じぐらいのペースで敵を殲滅できるようになっている。


 レベルだけが強さでは無い。

 技術的な部分の成長こそ、俺たちの強みである。



 で、そんな前哨戦の終盤にさしかかった所で、外部が騒がしくなってきた。

 俺たち以外の冒険者が、トレインでもし(モンスターに追われ)ているようであった。


 さすがに、ここに来られるような冒険者チームは、素人ではない。

 トレインで他人を巻き込むのがマズいと分かっているのだろう。俺たちの方には向かっておらず、俺たちから少し離れた所を横切るように走っていた。


 木々で目視は不可能。しかも遠く離れているが、ぎりぎりレドームの索敵範囲を通り過ぎていたので様子は窺える。


「ドラゴンじゃないんだよな」


 追いかけているのは、巨大モンスターであるドラゴンじゃない。もっと小型の、それこそ人型サイズのようである。

 ただし、計測された魔力の強さからは、普通のリザードマンなどよりも遙かに格上の存在という事が分かった。



 そんな敵から冒険者が追われている事を知り、俺はすぐに決断する。


「救援に向かう! さっさと目の前の敵を、いや、光織、タイタンを三体連れて先行するんだ!」

ヤー(了解)!」


 距離が離れている。急いで動かないと、手遅れになりかねない。

 相手がこちらに敵をなすりつける小悪党であるならともかく、善良で良識のある冒険者の一団であれば、ここは助けるべきだろう。


 だから俺は光織を先行させて彼らを助ける事にした。

 機動力は全員一律でそろえているので、そこは判断材料にならない。今回は敵に一当てして気を引き、敵を引きつけ逃げている人を助ける事が目的なので、合流はしない。

 火力が足りなければ無視されかねない。三人娘の中でも平均火力高めの光織であれば、大概の敵に対応出来るだろう。晴海の漆式? あれは初見の敵に簡単に当てられるものではないから、今回は適当ではないよ。

 およそそんな判断だ。



「六花、晴海。さっさと片付けるぞ!」

「ふっ。全て私が倒してしまっても構わんのだぞ」

「ふっ。大したロボットだ~」


 ドラゴンが乱入してくる前に、雑魚もイレギュラーも全部片付ける。

 六花と晴海の二重にズレたネタを聞き流し、俺たちは採算度外視の全力戦闘を開始するのだった。





 5分ほどで残敵を掃討し、俺たちは光織と合流すべく、走っている。

 木々の生えたダンジョン内。そこを5分でどれぐらい移動できるのか、という話だが距離に直すと5kmとなる。時速60kmだな。


 生身の人間には不可能な数字だが、魔力による身体能力強化などを考えれば、妥当な数字となる。

 障害物があろうが、地面がデコボコで平らじゃなかろうが、身軽ならそれぐらいの速度は出せるのだ。

 もちろん、食糧などの荷物を持ったタイタンは遅れて合流するよ。



 光織が走り抜けた痕跡をたどり、2分も走ればレドームに光織の反応があった。

 今は敵と交戦中らしく、ゆっくりだがこちらに退きつつ動いているので簡単に追いつけたようだ。


「は?」


 戦っている場所は戦闘の余波で木々が倒れ、拓けている。倒れた木々は戦闘の余波でオガクズのようにボロボロにされている。

 外でやれば環境破壊だが、ダンジョン内なのでそのうち元に戻るし、どうせ持ち出せない。ダンジョンの木がどうにかなっても問題ない。


 それよりも、敵の姿が問題であった。

 光織が戦っている敵。

 その姿は、まるで人型ロボット(・・・・・・)の様であった。

 光織たちとは似ていない、どこか大手メーカーのロボットだったと記憶している。


「……タイタンがティターンになったのと、同じって事かよ」


 状況は把握した。

 どこかの誰かが、ウッドフェンリルがドロップしたあの『種』と同種の物で、特殊モンスターを呼び出してしまったのだろう。

 そういったアイテムがあったとは聞いた事もないが、似たような前例があるので「そういうもの」としてすぐに受け入れられた。


 敵の数は七体と多く、光織たちは防戦一方。攻撃に回すリソースを防御に回してなんとか耐えている状態だ。


「騎兵隊の到着だ!」

「援護攻撃! でも行動は消費しちゃうの~」


 ドラゴン戦も控えているため、時間はかけられない。

 この戦闘後にフルメンテをするつもりで、俺たちはギアを上げたまま、新しい敵に攻撃を開始した。

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