俺と仲間と始まりの計画③
俺が目標をパワードスーツ作成と語り、三人はプライベートを話し合い親交を始めた。
描くビジョンは適当、ともに歩む仲間はまだ知り合ったばかり。
今はまだ何もかもが手探りで拙い状態だが、そんなものはここから見定め成長していけば済む話だ。
進む先は不確かな未来ではあるが、足場を固めなければ進めないほど俺たちは弱くない。
少なくとも、踏み出さねば何も掴めないのは確かな話。
進んだ先にあるものがガラクタだとしても、何も無いよりは良い。同じ場所でダラダラとし続けられるほど、俺は我慢強くないのだ。
パワードスーツを作るに当たり、問題は山積みだが解決までのプランはあるし、一つ一つ山を切り崩していくだけ。
新しい問題も出てくるだろうし、そこでまた足を止められるだろうけど。
「目標は5年以内。人間の使用を前提とした、ダンジョン用パワードスーツを作る」
無理無茶難題。
常識で考えると不可能としか思えない数字を設定して、そこから逆算するように初期計画を立てていこう。
まずは全長3m級の人型ロボットの開発。
そこから原神専用のパワードスーツと言うか、強化外骨格へとシフトする。
それをベースとして、人間用のパワードスーツへと転用する。
これが計画の一里塚になるが、骨子と言うには今はスカスカ過ぎて骨すら足りない。
ここに骨を足し、肉付けを行い、見られる計画に変えていくのが最初の仕事だな。
「それで、うちは何を作れば良いのでしょうか?」
「この図面にあるパーツからお願いします」
「はぁ……。これぐらいなら、ほんの数日で終わってしまいます。しかも、暇な時間がかなり出ます。もう少し、別の仕事がないと、従業員に払う給料どころか、工場を稼働させる費用にしかなりませんよ」
「そこはなんとかなるよ。うん、そういう予定だ」
鴻上さんの工場は、幸いというか何というか、全く仕事が無いのでいくらでも仕事を頼める。
最初は、原神用の機械パーツの作成からお願いしてみた。
これまでは及川准教授が個人的な付き合いのある工場に依頼していたんだけど、そこだって暇じゃないし、あまり無理も利かないので、そちらに依頼する量を最低限まで落とし、今後は鴻上さんの工場へ頼む。
元が車用のパーツ量産用の工場だから、大きめのロボットを作るには向いていないという事も無い。
装甲から内部部品までのすべてに対応できるというわけではないが、一部でも自分たちで作れるようになれば、それだけ無茶ができる。
計画の幅が広がるというものだ。
及川准教授に設計を頼んだ大型ロボットの図面が仕上がれば、そっちも作ってもらう事になるね。
最初は本当に骨組みだけになるし、原神のノウハウがあるので、そこまで時間はかからない予定だ。
プロトタイプと言っても某巨大ロボットではないので、本当に骨組みだけ。完成形を意識せず、歩ければ良いというレベルのものである。
こういったロボットは学生がロボコンで作るロボットの延長線上というか、手作り感満載のものになるので、工場設備が必要かどうかは不明なのが難点だけど。
まぁ、技術の蓄積を意識すると、どうしても要求する製作品は特殊対応案件で、工場とは相性がよくないって言われちゃったけど。
……無計画で済みません。
他にも、鉄-ゴブリンメタル合金を使った武器製作を頼んでも良いかね?
武器は消耗品だし、こちらでインゴットだけ作って加工を依頼する……いや、やっぱりそれはいいか。
武器製作は俺の趣味でしかない。わざわざ効率を求めるのも違うな。
パワードスーツと違ってこれはあくまで俺個人の内側で収まる範囲だから、現状維持でいいか。
パワードスーツ作成は個人の力でどうにもならないからみんなで作るんだからな。
もしも武器の作成を依頼するにしても、自分の技術向上のための見本を依頼するだけで良い。
趣味なんて、そんなものだろ。
下手に他人の手を借りるよりも、迂遠でも自分でやりたいわけだ。
ジグソーパズルを買うような人間が、最初から一枚の絵を買わないようなものである。
こういうのはそこに至るまでの過程が楽しいんだからな。