新装備の実践投入②
ドラゴン対策は上手くいきつつあり、そっちはもう心配していない。
ただし、上手くいかない現実もまた、存在する。
ラスダンで出てくる敵はドラゴンだけじゃない。
その他の敵、リザードマンや巨大蛇といった雑魚モンスターのほうが数が多いし、雑魚と言いつつドラゴンと比較しての話だから、他のダンジョンのモンスターよりもずっと強い。
リザードマンは人型だけあって、戦い方がいやらしい。
パワーで押してくるわけではなく、技で挑んでくるのが面倒くさい。こちらの装甲の隙間を狙う技量があるので、決して油断できない相手だ。
また、奴らの鱗は人の肌とは比べ物にならない天然の鎧や盾でもあるので、刃の向きが悪いと攻撃を受け流されたりする。
蛇系モンスターは、不意打ち性能が高い。という事になっている。
一番厄介なのはそれらしいのだが、レドームの索敵で見つけられるので、そこはあまり気になっていない。
それよりも飛び掛かってくる時に見せる瞬発力が厄介で、他のモンスターと戦ってる時とか、来ると分かっていても回避が困難な場面もある。サイズがサイズなので、威力も馬鹿にできない。
こちらも戦力を揃えているので、戦えば勝てるんだけどね。
今も普通に対応できているんだけど、まったく問題ないとは言い切れなかった。
「戦闘時間、3%増加」
「くっ、なんだこのプレッシャーは」
「新装備はでっかいど~」
ドラゴン対策の反動。機体重量の増加である。あと、サイズアップ。
一般的に、体が重くなれば動きが鈍るのは当然だ。
体が同じ大きさなら、より重い方が動かすのに必要な力をより多く求められるからだ。
だというのに、動かす力が同じであれば、その分だけ動きが鈍る。
また、体が重いという事は、動きの反動も大きくなる。そして一つ一つの動作を制御するための力も比例して大きくなる。
そうやって大きくなった制動に使う力はロスとして計上される。
一応、反動や慣性を上手く利用して戦闘動作の“流れ”を作る技術も存在するが、常にそれができるわけではないし、そもそも元からやっていたことなので、ロスの方がより顕著に表れる。
あと、ホバーの追加装甲の分だけ、どうしても体が大きくなってしまう。
体が大きくなるという事は、敵にしてみれば「攻撃で狙える面積」が増えるという事。
撃ち合いをする戦車が前方投影面積を少しでも小さくしようと車高を低くするように、同一性能なら体がコンパクトな方が有利なんだけど。体のシルエットが大きくなったことで、回避性能が落ちてしまった。
ロボゲーでも、フルアーマーとかは火力が高くなるんだけど、機動性能はお察しというアレである。世知辛い。
体が大きく、重くなったことのメリットもあるんだけどね。
けど、トータルで見ると総合的な戦闘能力が落ちたため、雑魚戦にわずかだが時間がかかるようになってしまった。
雑魚戦の最中にドラゴンに襲われれば、その分だけドラゴンへの対応が遅れたり、手が回らなくなる。
雑魚の処理速度は軽視していい問題でもないのだ。
ドラゴン戦に特化した分、他への戦闘能力が落ちるのは仕方がない。
全てはトレードオフなのだ。この辺りはバランスの問題で、何が正解とは言えるものではない。
とはいえ「雑魚戦の効率悪化分は、そういうものだと思って受け入れて行こうね」などと言っていては、結局ドラゴン戦に悪影響が出る。それじゃあ意味が無い。
トレードオフの部分はそういうものだけど、だったらそれ以外で補う計画を考えていかないと。
遠回りでも、たぶんそれが最短だよ。




