ラストダンジョン④
九条さんの、と言うか国防を考える人たちの行動が、一部の政治家の行動により邪魔される。
国防を忘れ、目先の金銭に振り回されるバカは、いなくならない。
政治家も人間なので、どうしても自己利益を優先する政治屋というのは、一定数存在してしまう。
面倒くさいのは、そんな連中も全てにおいて頭が悪いわけではないので、政治のシステムを上手く使っている事だろう。悪知恵だけは働くのだ。
徒党を組み政党を作り、その時々によって与野党のどちらにもいい顔をして利益を引き出す。
政治的な信条があるのではなく、どこまでも金に汚い人種である。
こういった政治家を排除できればいいと思うんだけど、排除しようにも、連中は法を犯しているわけではない。道徳的にNGで、人として褒められない行いだろうと、それが犯罪でなければどうにもならない。
なので問題行動を起こそうが、選挙の公約を無視しても、合法だからと退職後は議員年金で悠々自適に暮らせることが確約しているだけで、不快な事実はどうにもできない。
「なら、そんな奴を当選させるなよ」と言う人もいるだろうが、政治屋どもは当選前は猫をかぶっているのでどうにもできないのだ。それが分かるのは、当選後なのである。
自己評価をすれば、俺も自己利益を最大化しようとする俗物である。
経済・武力の両面で大きな力を持っていることは自認しているが、だからと言って国のための人身御供になるつもりなど全くない。
俺は自身の幸福のため、合法かつ道徳に反しない程度に行動している。
俺は企業の顔で、そうそう迂闊な行いで世間の評判を落とすわけにいかなかったりするし、国に対抗できるほどの力があるわけでもないので、模範的かどうかはともかく、後ろ指さされるような真似をしないというだけだ。
なにより、そういった行いをしてまで金銭を得ることが「本当に賢い行いなのか」と問われて「いいえ」と断言できる。
そういった行いをしてまで金銭を得たいとは思えない。だからやらない。
二世でもない1期目の初心者政治家であれば、なった時点ではそこまで金にならないし、金にうるさくなるのも仕方がないとは思うけど。
けど、一線を越えてあくどい事をするのは違うと思う。
何もしてなくても恨まれることはあるのだ。
なのに無用な恨みを買うのは、俺なら嫌だよ。
厚顔無恥になれるほど、俺の面の皮は強くないのだ。
そんな周囲の状況は横に置き、ラストダンジョンでの戦闘を振り返る。
「雑魚戦は問題ないかな。けどなぁ」
「ドラゴン、強い」
「攻撃、当たらない」
「飛ぶのが厄介~」
雑魚処理は、そこまで苦労しない。
こちらの主力はタイタンだけど、ティターン戦で装備を整え程よく鍛えられたおかげか、高い殲滅力を得ている。
ワームダンジョンのように力をセーブしていれば苦戦したかもしれないが、ここに来て、人目もないのだからと全力で挑めば、苦戦するはずもない。
俺たちはかなり強くなったと自信をもって断言できる。
けど、そんな俺たちでも、ドラゴンには苦労する。
空を飛ばれると、どうしても攻撃手段が乏しくなるのだ。
ハンマーや槍を投げて撃ち落とそうとするが、相手は動かない的ではないのだ。
けん制の攻撃と本命の攻撃を織り交ぜていかないと中てるのに苦労するし、中ったところで威力が足りなかったりもする。
空から落としてしまえばこっちのものだが、落とすまでが、本当に大変である。
幸い、序盤のドラゴンは長時間飛び続けたりはしない。飛んだままブレスを吐くこともあまりない。
どちらも魔力を使用するので、継戦能力と魔力消費のバランスによっては、早い段階で向こうの方から地上に降りてくるか、ある程度俺たちにちょっかいをかけるとそのまま逃亡する。
撃ち落とすのが上手くいかなくても、それが致命的な事態を引き起こしはしない。
もちろん、奥に行けばもっと強いドラゴンが出てきて、長時間の飛行とブレスによる遠距離攻撃を仕掛けてくるパターンも存在する。
そうなると、今の俺たちではどうしようもなくなる可能性があるので、まずは対空迎撃の経験を積み、状況に慣れていく必要がある。
対処法を編み出してしまえば、ドラゴン戦も問題なくなるだろう。
「もうちょっと、他で準備しておきたかったのは間違いないな」
欲を言えば、慣れるまでのリスクを減らすために、もう少し楽なところで戦いたかったというだけかな。




