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俺と仲間と始まりの計画②

「鴻上さんは、一体どういう経緯で参加を決めたのかな?」


 四宮教授はにこやかな笑顔を作ると、鴻上さんに向けて話しかけた。

 鴻上さんは事前に俺から話を聞いているけれど、四宮教授らは特に話を聞いていない。

 という事で、互いの境遇について話し合い、連帯感を持とうとし始めた。


「互いの名前ぐらいしか知らない人間よりも、家族の事や趣味に付いて話せる間柄の方が良い結果を生み出せるのだよ。最近の職場はドライでプライベートを持ち込まないのが主流だけど、私の若い頃はもっと気軽に、お互いのプライベートに踏み込んでいったものさ」


 なお、鴻上さんは四宮教授と同い年である。

 鴻上さんには奥さんと、お子さんに現在中学三年生と中学一年生の兄弟がいる。

 四宮教授とはそこそこ共通項があった。



 鴻上さんの工場は元々は自動車メーカーの下請けとして車のパーツを作っていたのだが、車の部品は利益率がゲロマズで儲けが小さい。そこで新しいパーツ加工方法を研究し、コストダウンを図ったのだ。

 その研究は実を結び、利益がわずかに改善したのだが、それを知った自動車メーカーは、生産コストが下がったのだったら単価を下げても問題ないと考え、単価の引き下げを要求してきた。


 鴻上さんは抵抗した。

 新しいパーツ加工の手法は、鴻上さんらが頑張って研究を行い、編み出した手法だ。自動車メーカーの手柄ではないし、研究にかかった費用の回収だってある。おいそれと頷くことができない話だ。


 すると自動車メーカーは、工場から人材を引き抜き、手法を奪った。

 そして勝手に他の工場にその手法を広め、鴻上さんの工場を下請けから外したのだ。しかも、鴻上さんが悪者になるように悪評を広め、他の企業からの仕事もなくなるように手を回した。

 結果、鴻上さんの所は資金繰りが悪化し、工場は閉鎖寸前まで追い込まれた。



 正直、胸糞の悪い話である。


 だから俺は鴻上さんに出資し、現在顧問弁護士らと相談しつつ、堂々と反撃を計画中である。

 こちらは個人なので騒がれたところで痛くはないし、相手は大企業なので変な噂が立つ事を嫌がるだろう。

 勝算は結構高い。思いっきりふんだくってやる所存である。


 なお、俺が鴻上さんの話を耳にできたのは、及川准教授のところ以外に、原神をメンテナンスするための手段を手に入れようとしていたからだ。

 どこか良い工場の跡地でもないかと網を張ってみたら、今にも潰れそうな工場があって売りに出されていたわけだ。

 事情を調べてみたら、現代日本で起きている事とは信じられない話が出てきて、あの時は本当にびっくりしたよ。





「成程。苦労されたのですね。

 私の方でいい弁護士を紹介しましょうか? こういった事があった時は、専門の人に相談するといいですよ。必ずお力になってくれるでしょう」


 話を聞いた及川准教授は、鴻上さんに親近感を持ったようだ。

 自分の恩師の昔話をして、そこで得た経験をもとにアドバイスをしている。


「大丈夫だ! 今はSNSを使い、個人が大衆を味方に付けつつ巨悪と戦う事もできる! 民衆は、悪の大企業が裁きを受けるシチュエーションを好むものだからね! きっと味方は多いはずさ!」


 四宮教授も情報戦を行い勝つための方法を提案していく。

 今の世の中、SNSの個人メッセージが大企業に大ダメージを与える事がある。従業員の問題行動で社長が記者会見を開き謝ったなど、実際に起こり得る話なのはよく知られていた。

 相手が小物の企業であればあまり騒がれはしないものの、大企業ともなれば注目度の高さから小火も大火事になり得るからだ。

 昔は悪事を隠し通す事が簡単で、権力者の前には泣き寝入りするしかなかったが、今は誰にでも戦う力があるので、あとはやり方次第だと四宮教授は締め括った。



 三人の雰囲気は、四宮教授や及川准教授が同情し、鴻上さんが同情されるあまり良くない(・・・・・・・)関係でスタートしたみたいだ。

 同情というのは、下手をすると上から目線にもなるわけで、俺としては苦笑いしたくなるものである。

 俺も似たような部分があるのであまり人の事は言えないが、これだと鴻上さんが後で苦労しそうな気がした。


 もう少し、ただの友人だとか同僚だとか、そういった普通の関係が最善だったわけだが、難しいみたいである。個人の人間関係なんてどうにもならんね。下手に手は出せんから。

 そこは、まだ見ぬ新メンバーに期待するしかないかな?


 鴻上さんは、教授や准教授といった肩書を持つ二人に対し腰が引けている様だから、そもそも対等な関係性は難しいのかもしれない。

 成人すると友人関係を築くのが難しくなると聞いた事があるし、この三人も、そうなのかな?

 どうなるかはよく分からないけど、とにかく見守るしかないか。



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― 新着の感想 ―
[一言] ま、現実の自動車メーカーはそんなことしないけどね 価格を決めるのも下請け 但し、仕事を請けるために下請け同士で競り合って価格を下げてメーカーに提示する ネットで『ト○タは下請けいじめしてる』…
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