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ワームダンジョン②

 タイタンたちの最初の任務は、荷物の運搬であった。

 それが長いダンジョン内任務を経て、徐々に戦闘もこなすようになっていく。


 そうなると、荷物運びは別のロボットの受け持ちという考えが出てくる。戦闘要員と非戦闘要員では、戦闘における損耗率が全く違うからだ。

 戦闘用のロボットが壊されてしまった場合、そのロボットが荷物を持っていれば荷物も一緒に駄目になる可能性が高く、それなら戦闘するロボットに重要な荷物を預けないようにしようと考えるのは自然な流れである。


 また、荷運びを専門のロボットに任せてしまおうと考えるのも当然の判断だ。

 初期では投入されたロボットの数が少なく、少数で多方面の作業を行わなければいけないため、分業という考え方はできなかった。

 しかしタイタンの数が増え、他に意識を向けるようになると、荷運びをさせるのがもったいないと思われる。それよりも、別の事にリソースを割かせるのだ。

 そうする方が高効率な結果を叩き出せる。



「うーん。ウチでも『スレイプニル』を導入するかな?」

「ダンジョンの環境次第ではお勧めですよ。スレイプニルが運搬できる物資の量は、我々の比ではありません」


 そうして荷物の運搬用に導入されたのが『スレイプニル』という、日本のトラックメーカーの作った八足歩行型ロボットである。


 見た目は人型ではなく巨大な蜘蛛型なのだが、北欧神話に出てくる八本足の馬『スレイプニル』の名を冠している。大きさは軽トラぐらいだ。

 こいつはトラック方式というか、前二本の足と後ろ六本の足で胴体部分が分割できるようになっていて、後ろ半分に荷物を入れるカーゴが積まれているのだが、それさえ無ければ一応馬型と言えなくもない。

 まぁ、ダンジョン内でカーゴを降ろす事はまず有り得ないので、見た目はどうしても蜘蛛型ってことになるんだけどね。



 主目的となる荷物の積載量については、カーゴ込みで1tほど。

 一般的な軽トラの積載量が、運転する人コミで350㎏ぐらいだから、それの約3倍である。

 それも初期段階の話で、レベルアップを重ねた今は、2tまで余裕だという。


 この積載量の多さについては、車のような高速走行、時速60㎞で走るような事が無いというのと、タイヤではなく多脚歩行車両だから、というのがある。

 燃費や道路を速く安全に走るという前提が無ければ、軽トラだってもっと荷物を積み込める。安全に高速道路を走ることができる積載量が350㎏という制限の理由なのだ。


 スレイプニルの場合、時速30㎞で移動するのが最大速度である。

 それがダンジョンという不整地を走るのだから、実際は時速20㎞を出せれば良い方で、実際は時速15㎞で移動することが多いという。だいたい素人マラソンランナーが走るのと同じぐらいかな。

 不整地を走るという事を考えると、それでもずいぶん速いんだけどね。荷物の運搬量よりも速さが優先されるときは、タイタンが荷物持ちをすることもあるとか。そんな形で棲み分けをしている。


 それと、大きさについては、これ以上は大きくできない。

 大きくすればもっと多くの荷物を積めるし、1台のロボットに積み込める量を多くした方が総合的なコストは安くなるんだけど、大きすぎるとダンジョンの入り口を通れないという困った事態になるのだ。

 それに大きくなった分だけ、小回りが利かなくなる。ダンジョン内の環境次第では小回りが優先されるシチュエーションも多いため、現在のサイズが一般的となっている。



 少し考えてみたが、スレイプニルならキャンピングカーのような居住空間を持ち込むという使い方ができる。これはタイタンには出来ない事だ。いや、やれるかもしれないけど、効率が悪すぎる。

 ある程度育てるまで時間がかかるけど、何かしらの、有事の際にはスレイプニルも使い道がありそうな気がする。

 実際に育てられたスレイプニルを見れば、有用なのがよく分かる。


 費用と育成面を考え――


「うわ、無理かぁ」


――すぐに、俺たちでは使えないと嘆く事になった。


 洞窟タイプのゴブリンダンジョンやメジェドのダンジョンでは文字通りの意味で使えない。

 オープンフィールドでも、野犬ダンジョンではそこまで運搬したい物が無いし、アンデッドダンジョンや『緑狼の森』では木々が邪魔で進めない所のほうが多い。

 手持ちのダンジョンでは、スレイプニルが活躍する場面が思いつかなかった。



 今後入手する、挑むかもしれないダンジョンも、スレイプニルの出番があるとも思えず。


「買うとしたら、趣味で、個人用になるけど。止めておくのが良さそうだね」


 どんなに優秀な物でも、明らかに使えない環境なら買わないでおくべきだな。

 スレイプニルは、ここでは優秀。

 そういうものだった。

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