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ワームダンジョン①

 新しく行く、ワームの出るダンジョンは、自衛隊と一緒に探索することになった。

 と言っても、自衛隊の「人と」一緒に行くわけではない。


「ご無沙汰しております」

「うん。仕事で忙しいんだ、気にする必要はない。それを言い出せば、顔を見せに行くのは俺でも構わないんだからな。

 それよりも今日はよろしく頼むよ」

「お任せください、一文字様」


 案内役として付けられたのは、ウチが出荷した、自衛隊所属のタイタンである。しかも初期ロットの。

 自衛隊の備品でもある彼らだが、基本的な扱いは自衛隊の「隊員」である。彼らは人とかロボットとか関係なく、現場の人間の隊員からは「戦友」として認識されているようだった。何年も一緒に戦っていれば、そういう事にもなるだろう。


 さすがに階級は持っていないが、ロボットであってもそこらの新人よりも立場が上になるらしい。

 階級を軸とした上下関係の厳しい自衛隊であるが、まだ弱い連中ではいけないダンジョンに挑める中核メンバーなので、タイタンたちは新人たちから教えを請われる立場であった。

 お値段的に考えたら戦車よりも安いとはいえ、数千万クラスの備品なわけで。新人たちはタイタンと会話するとき、どこか緊張している風でもあった。


 なお、彼らはすでに自我を持ち、流ちょうに喋るようになっていた。

 逆に、光織たちが片言かつネタ発言多めだったことに、隊員さんたちから白い目で見られたよ。

 そういうものだと受け入れていた俺が大概だと。言われても仕方がないので、そこは素直に受け止めておく。



 どうでもいいことをふと思ったんだけど、ラノベとかだと、こういった再会はもうちょっとドラマチックに演出されるんだろうけど、俺たちはそんなでもなかった。事前にちゃんと打ち合わせをして知らされていたこともあり、驚く場面など無かった。

 なんでラノベのお偉いさんって、わざと情報を伏せるサプライズをしたがるんだろうね。隠すほどの事でもないのに。

 事前の情報共有化をしっかり行わないと、計画を立てるのに不便だろ。どう考えても非効率的で無計画、組織運営とは真逆の行動だと思うんだよ。


 それに、外に出したタイタンたちはたまにメンテで工場に戻ってくる。そこで顔を合わせることも、数回に一回はあるし。遠方に住む親戚よりは顔を合わせていると思う。

 言うほど離れている期間がないので、新鮮さの欠片もなかったよ。





 そんなこんなで顔合わせやら事前計画の立案をしたあと、自衛隊の人たちから見ても不備がない事を確認し、ようやくダンジョン攻略となる。

 外部との共同戦線のため普段より手間がかかったが、すべて必要な事なので手は抜かなかった。


「慣れてしまえば、ウッドフェンリルと戦うよりも楽なのですが。一文字さんたちのチームの場合は特殊なので、十分に注意してください」


 事前計画でネックになったのは、単体の強力な敵と戦うことに慣れた俺たちが、あまり強くないが多種で多数なと戦うのに慣れているかどうかという部分であった。

 これは求められる装備や、戦術の組み立て方が全く異なるので、どうにも心配をかけてしまう。


 確かに、変異種オーガの時のような、敵の数が多い戦闘は何とも経験しているけど、多種多様な敵と戦うことはしていない。

 ただ、それを言い出すと、誰も新しいことに挑戦できないわけで。


「そこは、フォローをお願いします。こちらも警戒しますし、光織たちがいるので大事にはならないと思いますが」


 俺たちは素直に先達の手を借りつつ、やれることを増やすだけである。

 正確には、データをリンクした光織たちが主になって動くんだけどね。データは貰っているんだから、そういった事もできるよ。

 相手のメンツを考えて案内役を借りているが、実際に手を借りたりはしない予定だ。



 なんにせよ、俺は学ぶ意思を持ってダンジョンに臨んでいる。

 変に自己主張したり、勝手な行動はとらないよ。


 そして相手もアドリブ少なめのロボットたち。

 自我を手に入れても、所属の関係もあり、余計な事はしない連中だ。


 だからここは計画通り、きっちりとやっていこう。

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