表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
348/528

チャレンジ、いったん終了

 複製された漆式パイルバンカーだけど、本物の完全劣化コピーかと言うと、そんな事は無い。


「苦労したのは、こちらの連鎖爆発装置でして――」


 攻撃反射の万華鋼は使えない。

 あれは、運用コストを考えると、これ以上増やすべきではないからだ。神官の魔石の供給が追い付かなくなる。

 そこで及川教授は、爆発を連鎖させることにより、威力を大幅に強化する機構を組み込んでいた。


 大きな爆弾で使われる手法だが、一つの大きな爆発を引き起こすために、中心となる大爆発の周囲で小規模な爆発を使い疑似的な薬室を作ることで、爆発の威力を高めるというものがある。

 これをやると上下左右前後と360度全周囲に広がる爆発エネルギーに指向性を持たせ、本命となる爆発エネルギーを一方向に集約、とまではいかないが、それなりに範囲を絞ることができる。


 もともと薬室の中で起こす爆発なので、これと同じ事をやっても威力が強まるようには思えないのだが、とにかく普通にやるより強い威力になると。そういう事らしい。

 漆式ほどの威力は出せないものの、ウッドフェンリルやティターン相手であれば通用するはずだという。



 生産性、運用コスト、威力の安定性、使いやすさで言えば、漆式よりも複製品のほうが間違いなく上だと断言できる。

 〇ュータイプにしか使えないオリジナルの〇ァンネルよりも、消費が重かろうが誰でも使える量産型の〇ンコムのほうが使いやすいのと同じ理屈である。


 ああいったロボットアニメでは個人専用のワンオフ機がよく出てくるけど、整備の手間や部隊の規模と展開力その他を考えると、量産機のほうが総合評価が高くなる。

 特定のパイロットがいないと機能しないロボットなんて、俺が艦長なら怖くて使えない。そのパイロットに嫌われたら終わりだし、そいつがやられても終わりなので運用が難しく、面倒なことになる未来しか見えないのだ。


 それに引き換え、こちらのエース(光織たち)はレベル的な部分に目をつぶれば量産機なので、いろいろと融通が利く。

 時間はかかるが、同格の仲間を増やすことも可能だ。

 たった一人の仲間に拘泥するのは危険だと思うわけですよ。俺は突出した個人を作ろうとするより、全体の平均を上げることを選ぶのだ。



 突出した個の力、エースパイロット、試作の主人公機ってネタはアニメなら(・・・・・)好物だけどね。観てるだけだし。

 でも、実際に自分が艦長ポジションになるなら、平均的に強い部隊の方(イージーモード)が助かるっていうのは、真理だと思うよ。


 だからこそ、アニメではそんな難しい部隊を(難易度が)率いて戦う(ルナティックの)主人公サイドの艦長は「活躍している」って見栄えが良くなるわけだけど。

 あれ、地味だけど誰でもできる事じゃないんだよなぁ。

 個性的な集団をまとめて結果を出すのは並大抵の事ではない。「ああなりたい」などと簡単な事ではないのだ。

 少なくとも、俺はやりたくないよ。





 そんな地上での活動を挟み、再び『緑狼の森』ダンジョンにやってくる。

 ウッドフェンリル戦で種子を稼ぎ、そのうち6個を使ってティターンに挑む。



「……また増えた」


 戦いの難易度が、また上げられた。

 オケアノスを留守番に挑んでいるのだが、今回の敵の数は七体と、過去最多。

 しかも、万華鋼装備の個体が増えた。


 こちらも装備を調え、レベルアップを重ねているので、対応出来ないなどとは言わない。

 確かにこちらが強化されているのだから、難易度調整をされるのも、まぁ良い。

 種子を6個も使ったんだ。相応のリスクを背負えというなら、そういう事だと受け入れる。


 ただし。


「報酬の出し渋りは勘弁して欲しいな。

 で、また“頭部だけ無い”ってのも、もうインチキだろ」


 対価となる報酬は渋い。

 貰えたのは、パーツが2個だけ。難易度に合わせて報酬が増えるどころか、逆にランクが落ちてる。



 こうなった推測は出来る。

 短期間で貰いすぎた(・・・・・)のだろう。

 これが正解かどうかは分からないが、万華鋼を作るのと同じように、一定期間を空けなきゃいけなくなったのだと思われる。


 思えば、同ランクの『火龍の塒』だって、常時挑戦者がいるわけではない。

 6チームが期間を設定して、定期的に挑戦して、エリクサーの素材を集めている。需要が凄まじいにもかかわらず、だ。

 ちゃんと確認した事はなかったが、もしかしたら、短期間でレッドサラマンダーを倒しすぎたら、ドロップが渋くなるのかも知れない。これは後で調べておこう。





「仕方がないな。ティターンには、しばらく挑まないようにするか」


 この仮説が正しいかどうかは分からない。

 それを確かめるためにも、しばらくは他のダンジョンを中心に動いた方がいい。

 それに、最近は『緑狼の森』にばかり挑んでいて、代わり映えのしない生活だったのだ。ここらで他のダンジョンに行き、気分をリフレッシュするのも良いだろう。

 それこそ、自分たちの確保している『アンデッドダンジョン』の長期探索だって選択肢に入る。……死臭のせいで、リフレッシュにはならないけど。



 間引きは必要な事だ。

 魔石稼ぎにタイタンを派遣する事だけは続けるよ。

 けど、俺や光織たちは経験を積むために、そろそろ別のダンジョンに行った方が良い。


「また来るけど。その時は、今度こそティターンをドロップしてくれよ」


 こうして俺たちは、ティターンへの挑戦を終えたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ