リザルト(漆式パイルバンカー)
『陸式パイルバンカー』
これはタイタンやオケアノス用のサイズでドロップするオリハルコンの槍を、六花たちでも使えるようにと開発された腕部装着式杭打機である。
威力は言うに及ばず。これまでに開発したどのパイルバンカーよりも強力でティターンを一撃で倒せるほどの威力を誇るが、初期バージョンだと一回使うだけで自壊する欠陥兵器だった。現在は度重なる改良とレベルアップにより、威力を増しつつも、自壊しなくなっている。
今回手に入れたドロップは、この陸式パイルバンカーとほぼ同じ見た目であった。
「ティターンのドロップ、本当に初回限定っぽいな」
面白い装備を手に入れたわけだが、残念ながら俺の気持ちとしてはハズレである。
どうしてもテンションが下がったままである。
だが、自分たちの装備が手に入った光織たち三人娘は違った。
誰がこれを使うのかと、互いに視線でけん制しあう。
「とりあえずも何も、誰が使うかは帰ってから決めるぞ」
そんな三人の気持ちもわかるんだけど、気が落ち込んでいるからか、三人娘への対応は適当になる。
内心では、新装備を後回しにされる事の多い晴海が妥当かなと思うわけだが、それをここで口にする気にもならなかった。
今回の挑戦では、種子を4個が1回、5個が2回と三戦もしたので、これで撤収である。
帰り道、その道中で出くわしたモンスターに八つ当たりをしつつ、俺たちは無事に家に戻るのだった。
「見た目は同じですが、完全に別物ですね。出てきた敵の能力を考えると……」
「ふむふむ。メジェドの神官の魔石に対応、攻撃反射の応用で出力を高めているのだろうね」
「どの万華鋼が使われているか見るため、魔石を反応させてみましょう」
持ち帰ったドロップ品は、ティターンのパーツと槍がそれぞれ2個、そして陸式パイルバンカーである。
パーツは足2本が手に入ったが、それは特に気にするような事でもないので、あまり注目されない。
それよりも、陸式パイルバンカーである。
及川教授はその構造を解析し、四宮教授は状況からの推測を語る。
息の合ったやり取りで、どういった手順で今後の検証をするか、段取りを組んでいった。
「従来品より、さらに威力が上昇しているだろう、っていうことでしょうか?」
「はい、そう考えられます。万華鋼を使っているのもそうですが、ここにある魔法陣。これを使い、薬室で爆発させる力を杭打ちのための力に変換するシステムが組み込まれているようですね。
ここで使われている魔法陣は見たことがない物なので確定ではありませんが、反応する魔石から、ほぼ間違いないとみていいでしょう。
別物ですから、これは陸式ではなく、『漆式』としますね。
最近の光織さんはファイアウルフとゴーレム、六花さんはエメラルドウルフの魔石を中心に使っていたので、漆式は晴海さんにお願いするのがいいでしょうね」
ちなみにだが、ティターンに挑戦してパーツを入手していることから、及川教授は使われている金属の中でも、万華鋼を見逃さないよう、確認する手法を見つけ出していた。
『火龍の塒』で作った、リビングメイルの万華鋼を使った盾が使われないまま仕舞われていたので、それを使って万華鋼を確認する方法を調べていたのだ。
俺は実験の許可を出したり報告書を読んだだけで、特に何も手を貸していない。
俺が何か言わなくても、教授たちはこうやっていろんなことに手を出して助けてくれる。
感謝だね、本当に。
「しかし、こうやって知らない魔法陣が手に入るというのは幸運だったね! 万華鋼が関わるが故に、魔法陣の研究所に売れる内容ではないのが残念だけれど、いつだって新しい知識というのは私たちをワクワクさせてくれるよ!!」
ただその分、暴走には注意しないといけないんだけどね。
特に四宮教授は知的好奇心に弱いというか、専門分野以外にも手を出すことが多いので、こうやって新しい何かを持って帰ると、かなり、危ないぐらいにテンションを上げていく。
四宮教授に友人知人が多いのもそのおかげだろうが、ちょっと危ういところもあるんだ。
特に魔法陣関係は事故が怖いので、手を出してほしくない。
「魔法陣専用の実験場を作ってみるというのも?」
「駄目です」
なお、魔法陣関係に手を出すなら、10億円単位でお金が飛ぶ。ダンジョン内に作れば外への被害を考えなくてもいいんだろうけど、事故が怖いのに変わりはないし。それで死者が出るかもしれないし。
会社の業績は好調だけど、そこまではできないよ。




