想定された強敵③
片腕なしのタイタンを使うことで、両腕を破壊するところまでは無傷でいける。
両足も、同様の手段をとることでどうにかできるだろう。
問題は、胴体の破壊である。
これについては、一応だけど、やり方を工夫するだけで反射させないで済む可能性があった。
俺はタイタンの一体に指示を出す。
「破壊した腕の痕を攻撃しろ」と。
そうさせたのは簡単な理由だ。
おそらくだが、攻撃を反射できるのは装甲だけで、内部の素材まで反射能力を持っているとは思えなかったからだ。
ティターンの装甲が攻撃反射の万華鋼製であることは、間違いない。
しかし、中身はどうだろうか?
俺の感覚では、内部にまで万華鋼を使うとは思えない。内部は別の素材を使っているのだと思う。
ならば装甲を避け、それ以外にダメージを与えれば、攻撃を反射されないのではないだろうか。
誰でも思いつく、簡単な対策である。
そんな単純な考えだが、困ったことに甘かったようで、内部を攻撃しても攻撃は反射された。
どうやら反射は装甲以外にも適用されるようで、攻撃したタイタンの肩、その内部に大ダメージが入った。
両腕を破壊されたティターンにはもはや攻撃能力など無いが、反射による反撃だけは健在。まったくもって、やりにくい敵である。
「だったらプランBだな。はぁ。時間のかかる話だ」
面倒くさい敵なんだから、面倒でも手間暇のかかる別案に切り替えよう。
俺は再び穴を掘ると、そこに溶岩を満たす。
そしてあとは、ティターンを溶岩で茹でるだけ。溶岩ダメージは落とし穴と同じ地形ダメージだから俺に跳ね返ってこない。
ティターンは、奴の持っていた槍を使って溶岩から抜け出すことを許さなければ、いずれ倒せるだろう。
はっきり言って、見た目は弱い者いじめやリンチのようなものだが、そこには目を瞑る。
どうせ俺たち以外に誰も来ないダンジョンなので、外聞の悪い勝ち方だろうと関係ない。外部の冒険者を受け入れていない私有ダンジョンは、内部で何が起ころうと報告の義務もない。
勝ち方などどうでもよく、勝てばよかろうなのであった。
そうして3時間の釜茹で地獄を経験したティターンは、ドロップアイテムを残して黒い霧へと還るのだった。
攻撃反射の能力は、初見で不意打ちのように使われると、まず対応できずに詰んでしまう。
しかし対処方法を事前に考えておけば、絶対に勝てないというほど強い能力でもない。
一部、有効な方法がロボット限定であり、人間には真似できないという欠点もあったが、それでも対処が不可能というわけではないのだ。
現実的に実行可能な手段で勝てるし、実際にこうして勝てたわけだ。
タイタンのようなロボットを所持していることが条件になるけど、これが他の誰かにも実行可能な方法であることは間違いない。
「今度こそ、ティターンをドロップしたかな」
今回の、攻撃反射のティターンは厄介だった。
これぐらい強い敵なら、オケアノス抜きというハンデ付きで戦ったのだから、ドロップアイテムは期待できる。
あの攻撃反射能力も、巨大化したオケアノスなら耐えつつ倒しきれたんじゃないだろうかとか考えてしまう。攻撃力と耐久力の差とか、その倍率や係数次第では被害が軽減できるかもしれないからな。
だがそれ無しで対応したんだから、相応に苦労したということで、良い物が手に入ると期待できる。具体的には、新しいティターンとか。しかも、攻撃反射能力を持ったティターンとか。
そんな期待に胸を膨らませた俺は。
「……これじゃない! これじゃないんだよ!!」
どこからどうやって選ばれたのか全く分からない、これまでの流れと関連性の無い、『陸式パイルバンカー?』を前に崩れ落ちるのだった。




