想定された強敵②
攻撃反射能力。
自身に向けられた攻撃を、攻撃してきた相手に押し付ける能力だ。
ダメージは攻撃した側が全負担という頭がおかしくなりそうな能力ため、痛み分けなどの対策もできない。
更には「攻撃によるダメージは、反射する側の防御力ではなく攻撃した側の防御力」のため、下手を打てばただの自殺になりかねない。
ラノベのチート主人公かと言いたくなるような強い能力なんだけど、残念ながら無敵でもなんでもないし、攻略方法はいくつもあるのだ。
俺は魔剣から魔法剣に装備を交換。この敵が出てきたときにはこうすると、予め決めておいた手順で動く。
「『落とし穴』に落ちろ!」
反射無効攻撃、その1。落とし穴。
直接攻撃したらアウトなら、間接的に攻撃すればいいのである。
落とし穴の落下ダメージは、高いところからの飛び降りに失敗したようなもので、“俺が直接攻撃したわけではない”。
中には因果律とか敵意をベースに反射してくる猛者もいるかもしれないが、今回はそれに当てはまらなかった。
深さ10mの細い穴に落ちたティターンは、その最中に穴の壁を壊してしまい、そのまま生き埋めになった。
「残念。溶岩を流し込んでやりたかったんだけどな」
追撃に、穴に溶岩でも流し込んでやろうかと思っていたが、穴は塞がってしまったので、それはしばらく諦める。
俺はティターンが出にくくなるようにと、溶岩ではなく『泥沼』の魔法で周囲を柔らかくする。
トン単位の重量のティターン相手なら、下手に地面を固くするより、こうやって泥にしたほうが出にくくなる。まぁ、表面は蓋として広めに固めておくけどね。
「じゃ、腕は任せる」
「「まっ!」」
次の対策は、上手くいくかどうかは五分五分である。
俺は片腕を外したタイタンたちにティターンを任せることにした。
攻撃反射能力だけど、これは腕を攻撃したら腕に、胴体を攻撃したら胴体にと、同じ場所に攻撃を反射する。
そこで思い付いたのは、攻撃する予定の腕を外してから攻撃させるというもの。反射する対象が無ければ反射されないかと考えたのだ。
これに関しては実験も何もできないので、ただの推測推論である。
俺が所持している攻撃反射の装備は『壁』であり、壁のどこを攻撃したら腕判定になるのかなど分かりはしない。
それに腕以外にダメージが通る可能性もゼロではないので、本気の一撃は行わず、当てることを重視した軽めの攻撃で試すようにも言い含めておく。
もちろんその間に、三人娘と腕を外さないタイタンたちで、残りのティターンを片付けておいたよ。
そうやって準備をしていると、泥沼の端のほうから蓋をガンガンと殴る音が聞こえてきた。
蓋は土を固めただけなので、攻撃されるたびに割れているが、割れる端から固め直しているのだ。ついでに泥沼も広げてやり、準備が終わるまでの時間を稼ぐ。魔力消費がキツいけど、多少の無理はするよ。
「右手!」
「まっ!」
そうして準備が整えば、ティターンの脱出を見逃して、攻撃を行わせる。
右腕を外したタイタンが左腕で槍を振るい、ティターンに神速の一撃を加える。
速さ重視でジャブのように軽めの一撃ではあったが、槍は確かにティターンを捉えた。
が、攻撃は反射されなかった。
外した腕にも影響はなく、ノーダメージ。そして、ティターンの装甲に僅かな傷が付いた。
こいつの攻撃反射は、相手が同部位を持たなければ効果を発揮しないようだ。
……これ、同じ能力を持たせたタイタンがドラゴンを相手にした場合、攻撃は反射できるのか?
なんか、出来なさそうな気がしてきた。
余計な事を思い付き思考が逸れたが、軌道修正しよう。
まずは両腕を破壊し、攻撃能力を削ぐ所までは安全にできそうだ。
ただ、その後が難しい。
準備さえすれば、腕に続き足も破壊できるだろう。
しかし、さすがに胴体を外すなんて出来ないので、そこまでである。
落とし穴で完全破壊を目論むのも、まぁ無理だろう。
最後の一手をどうするか。
いくつか手段は考えてあるので、そのどれにするかを考えないといけない。




