遠隔操作ロボット
ダンジョンを購入して、いつものように周辺の土地も買い上げて。
なんだかんだ言って、ここらは不人気ダンジョンに引き摺られて地価が安くなっていたので、どの地主さんも快く土地を手放してくれた。ありがたい話である。
土地を購入したついでに、ダンジョン入口の横に、簡易宿泊施設とタイタンを整備できる環境を整え始めた。
こうすればダンジョンに入った時と出た時でタイタンの数が合わなくても、近くに待機させていた分だとごまかせる。
整備環境が近くにある事自体にけっこうメリットもあるし、維持費用に目を瞑れば、アリだと思う。
完成までそれなりに時間はかかるものの、期待できる。
なお、この施設に人間のスタッフは置かない。
基本的に、ロボットだけで運用する。
応用的には、本社工場から遠隔操作でロボットを操れるシステムを用意した。
「これなら修理用の人員を無駄に配置しなくてもいいですよ。
本社で操作するなら、移動時間は無駄になりません。ダンジョンの横という立地の危険性も考慮しなくて済みます。
これにも費用は発生しますが、人員を増やす、配置する費用よりは安く抑えられますよ」
発案者の鴻上さんは、出来るなら完全自動化、つまり人格持ちロボットに任せてしまいたいと考えていた。
しかしそういったロボットはまだ育てておらず、それができるようになるのは、もう少し先の未来だという。
「客商売をさせるよりはハードルが低いですよ。
たまに見かける、動画サイトの迷惑配信者、犯罪配信者の相手をさせずに済みますから。
……どうして、犯罪者をロボットに反撃させただけで、ロボットの所有者が責められなければいけないのでしょうね。ロボットの人権が認められないからでしょうが、納得できないですよ」
なお、ロボットの労働者はかなり広まっているが、それが元で問題も多発している。
ロボットが労働者の受け入れ先を無くす、失業者を増やすという話は以前からあった。
これについては「この労働条件で人が集まらないのだから仕方がない」という産業界の反論で、そこまで気にしていない。
今の時代、労働者の権利を守るために雇用主はとても気を遣わないといけないので、ロボットに頼る方が楽だと思うのは仕方がないのだ。
単純作業はロボットの仕事だと、そういう風潮が形成されつつあるよ。
また、ロボットが増えたことで、動画配信者の中でも炎上商法を狙う迷惑系、犯罪系配信者のターゲットにされる事件も増えている。
主に落書きやシール貼り、油などをかける、壊れない程度に殴るなど。そういった行為をする輩が後を絶たないのだ。
これらの配信は「#労働者から職を奪う悪のロボットに天誅」というハッシュタグで拡散され、一定のファンが存在する市場ができていた。
名前が売れればあとはなんとかなる、そんな成功者の後追いがいなくならないのだ。
馬鹿の数が増えたせいで過激化していくし、数年前に流行った「窒息からの蘇生挑戦で失敗して、そのまま臨終」というパターンと同じ流れになってる気がするよ。
実際は、多発したから同じ事をした他の誰かに埋もれるし、多額の借金で首が回らなくなるのだが、あんまり報道されていないので話題にならない。
それよりむしろ、ロボットが自衛したときに騒ぐクズがいるほうが問題として大きく取り上げられている。
「『ロボットなんだから』と言えば済まされる風潮になっていないのは幸いですが。犯罪者が好き放題できるように『ロボット三原則を組み込め』とは、何を考えているのでしょうね」
騒ぐ馬鹿の主張は、「ロボットが人間に歯向かえるのはおかしい」「ロボット三原則を組み込んで、危険性をなくすべきだ」というもの。
最近では「ロボットに落書きしようとしたら、ロボットに腕を掴まれて痛い思いをした。だから賠償金を払え」という理解不能な発言をした奴がいる。
この場合、危険なのはロボットではなく、落書きしようとした馬鹿の方である。
そんなアホな主張が認められるはずもないけど、騒ぐ輩の声が大きいのも事実だ。
「人間相手に手出しできない」と「人間に逆らえない」は違うのが理解できないのだと、社会から相手にされていないのに、無駄な努力、御苦労なことだとしか言い様がない。
こういった話は、ロボットに人権が認められようと、社会に受け入れられようと、厳罰化しようと、無くなる事はない。
馬鹿にはそれが理解できないからだ。
「せめて真っ当な人が損をしないように、国には頑張ってもらいたいですね」
だからまぁ、国やら警察には、今後も頑張ってもらうしかないのであった。
いつも、ありがとうございます。




