周回
成果物の引き渡しが終われば、相談タイムだ。
「今回、種子を2個と3個でなかなかの良い結果になったと思います。
そこで当初の予定を変更し、戦力向上のためしばらくは3個でチャレンジ周回を行い、装備品を大量に集めようかと思う訳ですが。それよりも先に、当初の予定通り4個と5個を確認する、という選択肢もあると思います。
パーツ目当てで2個で周回をする、装備品を狙って3個で周回をする。他の確認を先にする。このどれが一番良いかを考えていきたいです」
俺が気にしたのは、今回持ち帰った情報で方針転換をするか否かだ。
俺個人としては、戦力アップに直結する3個の報酬、オリハルコンの槍を大量入手するのがベストだと思う。
ただ、もしかしたら4個や5個で周回をした方が高効率という可能性も有るし、研究のために2個でパーツ集めをして欲しいと言われる可能性も有った。
そこはみんなで相談しつつ、何が一番良い結果になるのか、考えていきたい。
俺の考えがベストではない。そう思っていたが。
「3個の周回で良いのではありませんか」
「同意見だね」
二人はあっさりと俺の意見を肯定した。
「同じ個数で周回をした結果、望む物が手に入るとは限りません。2個か3個で周回を先に経験しておくことも必要でしょう。
ですが、2個の時は敵の能力がはっきりせず、リスクがあります。1個では、戦闘の難易度に報酬が釣り合いません。ここは戦いやすく報酬の期待ができる3個で戦力を整え、それから他の個数に挑むのが、最も安全ではないでしょうか」
「同感だね。及川君の言うとおりだ。
せめてオリハルコンの槍をもう5本は手に入れるべきだと思うのだよ。三人娘に行き渡らせるのにあと2本、タイタンにも3本は回したいところなのだよ。それだけあれば、種子6個のティターンとも勝負になるのではないかな」
「そうですね。それだけあれば、連携を妨害するという能力の支配下でもまともに勝てるようになるのではないでしょうか」
どうやら二人は、俺が種子2個の時に苦戦した事を受け、現状のままでは足元を掬われかねないと、そう判断したようだ。
悔しいけれど、それは事実なので、真摯に受け止めるしかない。
俺自身、あの戦いは危険だったと理解しているからな。好奇心よりもリスクを最小に抑える考え方はありがたい。
やられてしまえば、何が手に入るかなど関係ないんだから。
そういう訳で、しばらくは種子3個でティターン・チャレンジ周回をする事になった。
目標は槍を5本。
種子はウッドフェンリル戦1回につき2~3個なので、次回は2戦して、次々回に3戦する予定を組んでおく。
それが終わったら種子2個にもう一度挑んでから、4個と5個にも挑戦する。
これを基本方針として、予定を組みなおす。
「三人用のバトルクロスも期待しておいてください。次回には間に合いませんが次々回には間に合わせます」
「あまり無理はさせないで下さいね。この前みたいなのは嫌ですよ」
「当然です」
三人娘が無理なく槍を扱えるように、彼女ら専用のバトルクロスを用意させている。
槍のサイズを加工で削る事も考えたが、将来を見越せば、彼女らにもバトルクロスを与えておきたい。
コスト面を考えると苦い顔をしたくなるが、レベルアップする冒険者の装備は早めに整えるのが最善だからな。装備の更新に適切な時期を考えるとか、そういうのはむしろ効率が悪くなる。
そういった投資でケチると、大概ロクな事にならないのである。
ただ、だからと言って他の誰かに負債を押し付けるやり方は良くない。
製作メンバーに残業を強いてまで作業させれば、またミスをされかねない。
仕事が遅れても文句は言わないが、仕事でミスをしたら文句を言うぞ、俺は。俺の中で遅延はミスではないのである。
言われる及川教授は「分かっていますよ」という顔であるが、そこだけはしっかりと念押ししておいた。
……どれだけ注意しても無くならないのがポカミスなんだけど、可能な限り、検査で潰してくださいよ。
その後、種子3個で2回の挑戦を行った結果、出てくる敵には乱数があったようで、敵の能力は毎回変わる事が判明。ただし、体感では平均すると危険度はそこまで変化がない。あの2個の時のティターンは敵の性能が上振れしたのだと思われる。
また、報酬の方はおそらく一定ではないかという結論が出た。
敵の能力が一定でない事は気がかりだが、報酬が安定しているので、もう少しここで稼ぐのがベストだね。




