未知の能力④
昨晩の反省会もいいが、お楽しみタイムを忘れていた。
さすがに種子2個でティターンが出てくるという可能性は無いと断言できるので、ドロップアイテムの確認をすることにした。
ティターンが出たら出たで、予備の魔石を使ってこの場で動かすだけである。あとは、能力がよく分からないので、そのまま帰る事になるかな?
何が出ても特に問題は無いと判断した。
そうして朝一番で確認した種子2個の報酬は、ティターンの左腕のパーツらしきものだった。
色々とアテが外れた格好になるが、これはこれで美味しいので良しとする。
及川教授あたりは気兼ねなしに解体できるティターンのパーツが手に入ったのだから、大喜びだろう。
これ、何度か繰りかえせば、一体分になるんじゃないかな。
ただその場合、気になるのはどうやって組み立てるかなんだよね。
ティターンって、継ぎ目とかよく分からないから、解体できなかったんだよね。それをどうやって組み立てればいいのか?
近づけたら、勝手にくっつくのかな?
細かい事は地上に戻ってから考えればいいか。
報酬を見た俺は、少しだけ迷ったけど、種子3個でティターン・チャレンジ4回目に挑戦する事にした。
結果は、ファイアウルフの万華鋼装備のティターンが現れ、これは普通に倒した。
3回目のような、ジャミングは無かった。
拍子抜けしたというのが素直な感想で、こちらのドロップアイテムは推定オリハルコンの槍だった。
正直、これが一番うれしい。
そこそこの強さの敵で報酬が美味しいとなれば、ここでしばらく周回して、全員にオリハルコンの武器を行き渡らせてから次に進むという選択もできる。
段階を踏んで先に進めば、リスクは最小限に抑えられる。
これは本当に美味しいと、心からそう思う。
さすがに、5回目のチャレンジはしない。
ダンジョン内で長期間生活を続けるつもりは無いので、俺はキリの良い今回で撤退することにしたのだった。
「おおー!!」
持ち帰ったティターンの腕パーツを見た及川教授は、予想したとおり、とても喜んでいた。
「いやぁ! これは捗りますね!!」
「ふむ?」
それとは対照的に、四宮教授は何か考え込んでいる。
「どうかしましたか?」
「いや、 “なぜ左腕のみ手に入ったのか”を考えていたのだよ」
「はい?」
「一文字君が言うように、何度か挑戦して一体分を揃えるパターンもあり得るとは思うのだけれどね。
もしかしたら、だよ。この腕、万華鋼装備が内蔵されている部分かもしれないのだよ」
「ああ!」
四宮教授は、パーツを揃えるのではなく「一番重要な部品を渡すから、あとは自分で作ってね」と、左腕だけドロップさせたのではないかと予測した。
俺はそんな事、考えもしなかった。
そういった話であれば、この左腕の価値は大きく変わる。
タイタンのどれかに換装する事で、大幅な戦力向上が見込めるかもしれない。
「装甲だけ解体してバトルクロスに、という使い方をすると、さすがにもったいないですからね。
どうやって換装するか、万華鋼が使われているのか。それらを調べるためにも、やはり、分解してきちんと調査しますね。
実際に換装できるかどうか、出来るとしてそれがいつ頃になるかについてですが、それはもう、調査後の報告をお待ちください。今は情報が足りないため、なんとも言えませんから」
左腕の調査だけど、課題はどんどん増えていくが、そうだからこそ及川教授は楽しそうだ。
本当に、こういった素材や技術には目が無いらしい。
どうやって調べよう、何から調べようかと、すぐにでも調査を開始したいといった雰囲気を出している。
「それにしても、だね。話にあった、謎のジャミング能力。これがどのモンスターの魔石を使って、何をして行われたのか。これが全く理解できないのは素直に怖いね。
レドームの履歴から解析をしておくから、そこは任せてくれたまえよ」
ハード的な話は及川教授が受け持ち、戦闘ログ、データの解析は四宮教授が受け持ってくれる。
俺は戦後処理を専門家に任せると、次のダンジョン泊に向けて英気を養うため、休暇をとる事にするのだった。




