期待値の設定
「ラーメンは美味しい。けど、ドロップは美味しくない。
マジかぁ……」
戦闘後、ダンジョン内のキャンプに戻った俺は先ほど手に入れたドロップを直ぐに確認してみた。
けど、出てきたのは魔石だけ。労力にまったく見合っていない。
この程度の報酬しか出ないのなら、ウッドフェンリルを周回し続けた方がマシなのだ。
昼飯は戦闘後という事もあり、塩気の強い塩ラーメン。
汗をかいたので塩分多めでしょっぱかった。
今回の戦闘では、六花の陸式改を壊している。
魔石しか手に入らなかったから、その修理費用で完全に赤字である。
これは戦闘記録を調べて分かった事だけど、ティターンの顔部分を貫いた槍が、後頭部の、頭蓋骨にあたる部分を内側から貫こうとして槍の固定部分が壊れた、という事らしい。
スカルフェイスを貫いた段階ではまだ装甲を打ち抜くエネルギーがあったようだが、後頭部まで貫くにはまだ不足だった。そのため、貫こうとしたエネルギーがそのまま弾き返され、壊れるに至ったと。
これなら威力を強化するか、後頭部まで撃ち込まないように調整すればいいんだろう。
けど、撃ち込んだ後の槍の制動って、かなり大変なんだけど。
車が急に止まれないように、パイルバンカーも急には止まれないのだ。これはあとで及川教授や開発チームと相談しないと駄目だな。
陸式改が壊れたのでオリハルコンの槍がフリーになったが、六花の手に持たせるにはサイズが大きすぎるので、槍は光織に任せることにした。
今回はもう帰るだけだが、帰る間にも雑魚戦はある。
「えこひいきー」
「我々にも、もっと装備をー」
そこで少し揉めたが、光織の斧も無事ではなく修理が必要。それは確かなので、二人の反論も形だけであった。
光織の、と言うか本来は俺のバトルクロスにも大型のパイルバンカーはあるけど、槍には対応していないので、陸式改のような運用は出来ない。
こういったところで使える装備の共有化とか現場でのニコイチが出来ると便利なんだけど、贅沢を言っても仕方がないので、今後の課題としておこうか。
G-UNI〇ではないが、戦場で壊れたタイタンたちから使えるパーツをかき集め、動けるように組んだ最後の機体で最後の戦いに挑む。そんなシチュエーションは燃えるものが有るし、実戦に関わる人間としては心強い。
現状の戦闘能力を落すようでは話にならないが、方向性としては悪くないんだよなぁ。これも課題、と。まともな開発者なら「馬鹿な事を言うな!」と一蹴するだろうけど、ロマンに理解のある連中なら、きっと同意してくれる事だろう。
今回の戦いで分かったのは、大まかに二点。
種子をケチると、敵と報酬が渋くなる。
俺たちが相手の場合はティターンで基本性能は固定だが、万華鋼の能力にバラつきがある。
だいたいこんな感じかな。
回数をこなすとイレギュラーも混じるだろうけど、それは統計ならよくある話。誤差の発生率だけ把握しておけばいい。
あとは種子の数と敵の強さ、得られる物のランクを見て、どこで安定させるかを検討しよう。
次回は二個と三個で試すとして、それで同様の傾向が見られれば、この考えを軸に予定を立てていくとしよう。
種子の数を増やすと報酬が良くなるとしても、期待する報酬を何に設定するかなー? 初回みたいなのは報酬が良くても二度とやりたくないけど、そうしないとティターンの数を増やせないなら……挑む事も考えよう。
頑張ってオケアノスの弟妹を揃えるか、それとも装備だけに抑えておくか。悩むね。
こちらの戦力強化に合わせて敵が強化される場合、報酬も強化されるのか?
そういった疑問もあるけど、まずは試行錯誤してデータを集めてから考える事だし、いくつかの疑問は投げ捨てて、やってみてから考えよう。
もちろん、期待値は黒字になる範囲で考える。
安定して稼ごうと思えば、今回ぐらいの被害が毎回出ると仮定して、槍の一本はマストだろうな。それぐらい貰わないと、やらない方がマシだから。
そういえば、だけど。
もしかしたら、オケアノスとかオリハルコンの槍で俺たちが強化されたから、報酬がショボくなったとか、そういう話は無いよな?




