ティターン⑥
高速移動を俺の魔法に邪魔され、自爆するように倒れたティターンが一体。
残る無事な二体は、普通に走ってこちらに向かってきた。
前回も一体しか巨大化しなかったし、どうやら万華鋼装備のティターンは一体のみというルールらしい。二体はお供なのだと思われる。
もっとも、現段階でそれは推測に過ぎず、確定情報では無い。
何か別の能力を使ってくるかも知れないので、警戒を緩めるにはまだ早かった。
「いんぱくと~」
六花の、棒読みのような、間の延びた声が響いた。
その声に合わせて射出されたオリハルコンの槍は、タイタンの攻撃によって隙を作ったティターンの装甲を確かに撃ち抜く。
ただ、ティターンを倒した陸式パイルバンカー改も無事では済まなかった。
反動の衝撃に耐えきれなかった槍の固定部分が歪み、単発でその役目を終えたのである。
お供はもう一体残っているので、そちらを倒すまでは持って欲しかったけど。一体でも倒せたのだから、それで良しとしておこう。
お供のもう一体は、光織と晴海が連携で押さえ込んでいる。
バトルクロスを着用した光織の攻撃力は、万華鋼の巨大化斧によってそれなり以上に高い。
強度的には足りていないのだが、それでも何度も殴れば装甲を歪める事も出来る。刃の側で「切る」のではなく、峰の部分で「殴る」ように使う事で、強度の差を絶対的な物にしていない。
もちろん柄の部分に歪みが生じるが、それを無視して殴り続ける光織。金属としての強度が負けていようと、それだけで全てが決まるわけでは無いのだ。
そして光織よりも攻撃力の無い晴海だが、こちらもちゃんと活躍している。
レドームを使い、タイタンの指揮に集中しているのだ。
タイタンの攻撃ではダメージを与えられないが、それでもノックバック、体勢を崩すぐらいは可能である。
どれだけ装甲が堅かろうが、下から上へすくい上げるように攻撃すれば、浮かせる事は可能。浮かし、崩し、本命の攻撃につなげる。
シンプルだが、二人は着実に敵を押し込んでいき、そのままお供のティターンの首を飛ばし、勝利するのであった。
本命であるボスポジションのティターンだが、こちらの担当はオケアノスと俺だ。
最初は俺もお供の二体を受け持っていたが、余裕があったのでこちらに手を貸す事にした。
それが一番早そうだったのである。
オケアノスとティターンだが、ベースとなるボディの性能は、やはりほぼ互角だったようだ。
だが戦闘の駆け引きではオケアノスがほんのわずかに優勢で、10の攻防があったとすると、そのうち1回はオケアノスが勝ち、残りは引き分けという展開を繰り返していた。
どうしてオケアノスが僅差でも敵を上回っているかというと、仲間の状態、優勢と劣勢の差が出ているのが大きいと思われる。
オケアノスは、無理をしなくても耐えているだけで勝ちが確定する。
敵のティターンは、オケアノスを相手に時間をかければ、いずれ負けるビジョンが見えている。だから無理をしないといけない。
無理をせず自分のペースで戦えるオケアノスが相手だと、ティターンは無理をした分だけ隙を作っては押し負ける展開になっていた。
そこに俺が参戦すれば、敵の勝ち目は完全に潰える。
俺が嫌がらせ程度の魔法を使えば、その分だけオケアノスに余裕が出てくる。
オケアノスは俺との連携経験が少ないはずだが、光織たちから教わりでもしたのだろう、上手く合わせてくれるので、連携もちゃんと様になっている。
敵にとって頼みの綱の万華鋼装備も、風を起こすだけであれば脅威度は低い。
俺との相性は最悪で、俺に風を押さえ込まれ、打つ手が更に少なくなる。
ボスのティターンは巨大化という手段を持っておらず、時々俺では抑えきれないほどの暴風を纏っては攻め気を見せていたものの、結局はオケアノスにやられて終わるのだった。
「つまり、報酬も弱体化ですね、分かります」
「うーん、残念!」
「お呼びでない? お呼びでない? しっつれいしましたー!」
そして、オリハルコンの槍どころか特殊アイテム無しの、ウッドフェンリルよりやや大きめの魔石一つという、悲しすぎる報酬に俺は涙を流すのであった。




