ティターン⑤
前回は種子の発芽を目的にしていたから、タイタンの中に鉢植えの種子を3個ほど入れていた。
まぁ、鉢に入ってたのが消えてしまったわけだが、あの時に消えた種子は「全部」であった。
ここで気になったのは、「種子の数を減らしたらどうなるのか?」という点。
仮説ではあるが、種子の数が難易度に直結している可能性も考えている。
今回は1個だけにして挑戦してみよう。
……できれば種子の消費数をケチりたいのである。集めるの、時間がかかるし。
「種子の数と難易度は連動していないっぽいな。ついでに、報酬もそうだと嬉しいな」
種子を最低数にして挑んでみると、今回もティターンが三体出てきた。
全員槍を装備していて、武装面も変わらず。
こちらのメンバーはオケアノスを追加しているが、それ以外は特に変更無し。
ただし武装を更新して、前回の戦いで成長した分を考えると、総合戦力はかなり上がっているんだけどね。
もしかしたら、戦闘の難易度は固定なのかも知れないから油断は出来ないか。
こちらの最大戦力は、勿論オケアノスだ。
巨大化も可能という事で、敵が巨大化しようが対処できるので安心だ。
しかし対処できるというだけで、それだけでは勝てないのがミソだけどな。
防御寄りの能力を持った同格のロボ二体の戦いは、自然と千日手になる。決定力が足りないから、双方エネルギー切れになる。
その差をどうにかするのが仲間の仕事で、オケアノスが巨大化ティターンと戦っている間に、俺たちがどれだけ他の二体を早く対処できるかにかかっている。
前回のように、俺が切り札を切るというのは無しで考えている。
六花に陸式パイルバンカー改(オリハルコンの槍Ver)を用意してきたので、前回よりは戦いになるはずだ。
駄目だったら、諦めて俺が動くしか無いわけだが。俺は俺で使えそうな魔法をいくつか用意したので、できるだけローコストで勝ちに行く所存である。
戦いの始まりは、ティターンの突撃からだった。
「ランスチャージ、かよ!? 万華鋼装備が違うし! けど甘い!!」
中央の一体が、背中から爆風を放ち急加速。猛烈な勢いで突進してきた。
これはその昔、俺たちも少しは考えた超加速装置と同じである。
ただ完成度はあちらの方が上で、爆風を安定した推進装置として利用して、槍を構えた姿勢に乱れが無かった。
だが、その推進システムの欠点は俺たちだってよく知っている。
超高速移動の欠点は数が多いし、それらを克服するのがとても難しい事を経験で理解している。
俺は突進してきたティターンに『エアハンマー』の魔法を使い、横から殴るように風を浴びせてやった。
すると、急に発生した横風に対処できなかったティターンは俺たちの所に来るまでに姿勢を崩し、そのまま転倒。地面に体をぶつけ、バウンドし、あらぬ方向へ飛んでいったかと思うと、岩にぶつかってようやく停止した。
マヌケな話だが、超高速移動などそんなものだ。その制御には多大なエネルギーが必要で、外部からの干渉にとても弱い。
『エアハンマー』は出が早いだけでそこまで強くない魔法だが、それでもこれだけの成果を挙げられる。
外部からの干渉で乱れたベクトルを完全に制御できないなら、不意打ち以外はやらない方がマシだったんだよな。
移動に費やしたエネルギーが全部、自分に襲いかかってくるので、姿勢制御用にもう2倍ぐらいのエネルギーを回せるようにしないと怖いんだよ。
もしくは、超電磁スピ○をするか、だ。
超高速で突っ込むのなら、アレは意外と理に適っていると思い知ったよ。……中の人の事を考えなければ、だが。
開幕の攻防は、こちらが大幅に優勢で終わった。
ただ、ティターンの耐久性能を考えると、地面に叩き付けられたりする程度のダメージでは痛手だと思えない。少しぐらい内部をシェイクしようが、再生可能な範囲に収まるだろう。
前回と同じ戦いにはならない。
前回は追い詰めてみたら巨大化されたのに対し、今回は初手から暴風の万華鋼装備を持ち出されたのだから、戦闘パターンそのものが違うと考えて間違いないだろう。
攻撃反射の万華鋼だけは勘弁してくれよと不安を抱えながら、俺たちはティターンへ攻勢を仕掛けるのだった。




