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マシンゴーレム④

 ティターンは堅く、ダメージが通らない。

 それでも機動力や武器のリーチやら何やらでこちらが戦闘をリードしていて、しばらく膠着状態が続く。


 まだ(・・)こちらが優勢だが、決定打が無いため攻めあぐねていると、沼の方で爆発音が響いた。

 聞き慣れているので見なくても分かるが、あれはタイタンのパイルバンカーが撃たれた音だった。

 ただし、今回は。


「味方被弾!」

「弾幕薄いよ、何やってんの!」

「チィィッ!! 装甲が堅い!!」


 タイタンが使ったのではなく、タイタンに使われた。

 ティターンはタイタンと同じく、パイルバンカーを装備していたのだ。


 初っ端から武器を投げる大胆な動きをしていたのは、武器が無くとも戦えるから。

 槍が無くとも大丈夫だという自信があったから、効率重視で墜とせそうな俺を墜とそうとしたわけだ。

 こりゃ、強烈だな。



 しかし、そんな感想も次の一撃を見るまでだった。

 響いた音は、先ほどと同じ。

 しかしその一撃は。


「アルト〇ン!? クソッ! 光織、下がれ!!」


 肘関節が伸び、光織に命中。

 三人娘は実戦投入からもう数年になるが、その中でも珍しいクリーンヒット。光織の右足が纏っていたバトルクロスごと吹き飛ばされた。

 腕ならともかく、足が片方動かないのは致命的。即座に下がるよう指示を出す。


 ティターンがやった事は簡単だ。

 一撃目のパイルバンカーでこちらの動きを見て、本命の二撃目で確実に獲る。

 「腕が伸びる」という特性を予測しきれなかったため、光織でも避け切れなかったのだ。


 それにしても、ダルシ〇の如く腕が伸びるとか。

 変幻自在、奇抜な動きをしないだろう点を見ればドラゴンガンダ〇や〇ルトロンよりまだマシだろうが、そういった攻撃手段が有ると知らなければかなりヤバい。

 一発ネタだけに次から通じないと判断したのだろう。確実にやれる一度きりの攻撃で、こちらの要である光織が狙われ、やられてしまった。



 こうなると、こちらも警戒の度合いを高めていくしかない。


「火、風、反射! 他も有り得る! 意識の片隅に置いておけ!!」


 今回はゴーレムの魔石を使ったのと同じ、伸縮自在の一撃だった。

 だが、魔石を使う万華鋼装備はそれだけじゃない。

 光織の使っていた『火を纏い巨大化する斧』や、今回は持ち込んでいない『嵐の魔剣』『攻撃反射の壁』『自己再生金属』が残っている。

 それらを使われないという保証はない。



 こちらが作った物がそのままコピーされているわけではなく、こちらの持っている技術を持った誰かが、同レベルの技術力で別のロボットをデザインしているような状態。

 知っている技術だろうと、使い方ひとつでいくらでも化ける。


 光織一人が居なくなったというだけではない。何をされるか分からない疑念が俺たちの行動を縛り、攻撃から勢いがなくなった。

 優位性(アドバンテージ)失われ(シフト)、戦況は覆る。


 せめてこれぐらいは、と、沼に嵌っていた奴をさらに沈め、頭だけが出ている状態にしておく。

 こうすると攻撃できる所が減るし、沼が深くなった分だけ横にも広がって敵が遠くなり、攻撃しにくくなる。

 言ってしまえば、倒せなくなる事を許容する代わりに、こちらも被害を受けにくくしたようなものだ。時間稼ぎである。





 膠着状態、敵の優位をどうにかする魔法は、無いとは言わないが、あまりやりたくない。

 敵の強度をリスクなしで勝とうとするのが土台無理な話なんだけど、それでも成功率が低いとなると、二の足を踏む。


「光織。回復までどれぐらいかかる?」

「……最低ラインでも、5分。戦えるようになるまで20分」

「了解」


 光織は中破したが、大破ではない。

 戦線離脱したものの、再生能力持ちなので時間をかければ再出撃も可能である。


 ただ、壊れた部分を即座に復活させられるわけではなく、この戦いでは事実上のリタイアだ。

 うん。

 この戦いでは(・・・・・・)、もう前に出れないな。



 俺は現有戦力だけではジリ貧、このままでは撤退すら難しいと判断し、切り札をさっさと切ることにした。

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[良い点] ジリープアー!
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