マシンゴーレム②
幾度目かのウッドフェンリル戦。
俺たちは確かに、その予定でダンジョンに来たはずであった。
「は?」
「マスター。アレは“敵”です!!」
「迎撃!!」
「バイ○粒子反応アリ、抹殺セヨ! 抹殺セヨ!!」
しかし、ボス戦周回をしに来た俺たちを出迎えたのは、三体の“タイタン”。
予想外の展開に呆然とした俺の反応が遅れる。
敵を前に、致命的な隙を晒した俺。
三人娘はそんな俺を庇うべく、武器を手に“敵”へと立ち向かっていった――
時間を今朝へと巻き戻す。
ダンジョンの最奥手前、ボスエリアの近くで一泊した俺達は、ウッドフェンリル戦の準備を整えると、タイタンを先頭にボスエリアに足を踏み入れた。
「迎え撃つのは無しで。まずは初撃を回避して、すれ違いざまに、一撃を入れる。足を止めさせるために、全力で足一本を叩き斬るのが目標だな。
敵が足を止めて攻撃してくるなら、正面の一人が耐える間に他が横から後ろ足を攻める」
作戦は事前に決めてあったが、再確認のために口に出しておく。
頭の中で考えるだけだと、どうしてもミスが出る。言葉にして確認する事で、ようやくミスが減る。免許更新のときに交通安全の講座でそんな話を聞いた気がする。
もっとも、人間の俺と違ってロボのみんなはそういったミスをしないんだけど。
決められた事をなぞるのなら、イレギュラーさえなければ完璧にこなせるのがロボットの良いところだよ。
そうなると人間の価値って、どれだけイレギュラーに対応できるのか、って話になるのかな?あとは新しい事への挑戦か。
細かい話をするとキリがないので大雑把に人とロボを比較すると、そんなところだと思う。
「ん? ウッドフェンリルの姿が見えない?」
ボスエリアに入ってすぐ、俺は違和感を感じた。
前回までであれば視認できたウッドフェンリルが見えなかったからだ。
ウッドフェンリルは巨大なので遠くからでも視認できたんだけど、それが見えないのはおかしい。
これが二日目以降なら、まだリポップしていないだけだろうが、今回は初挑戦なので、それは無い。
他の誰かが先に戦ったなら、その手前で野営していた俺が気が付かないなんてありえないから、それも無い。
じゃあ、一体なんでウッドフェンリルがいないんだ?
その答えは、まったく予想していなかった三体の敵が教えてくれた。
敵は三体とも手にした槍を俺に向かって投げてきた。
それを三人娘がそれぞれ防ぎ、事無きを得る。
「三人とも下がれ!
タイタン! 前に!
光織たちはタイタンが接敵してから参戦!
俺は後方から魔法で援護する!!」
予想外の展開に固まってしまった俺だが、三人娘が俺を守ろうと動いたことで、なんとか再起動した。
隙を晒したのは大失態だが、それを好機と敵が武器を一つ手放してくれたので、結果論だがトータルはプラスという事で。
……守ってもらえなかったら、その初撃で俺は死んでいたんだけど。
三人には後でちゃんと謝って、ありがとうって言わないとな。
回転の悪い頭に活を入れ、俺は“敵として現れたタイタン”を睨む。
とりあえず、紛らわしいから敵のタイタンはティターンでいいか。もしくはヤザ○、ハ○ブラビ。思考がトチ狂ってる。正式な呼び方はまた後で考えよう。
今は、勝つ事だけを考える。
「重いなら……まずは沈め!」
俺はティターンの一体をターゲットに、『泥沼』の魔法で下半身まで沼に沈めるのだった。




