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ウッドフェンリル攻略⑦

 (ろく)式パイルバンカーを引っ提げ挑んだ四回目のウッドフェンリルチャレンジは、なかなか良い結果になったと思う。


「バッチィさん、グー子さん、行きますよ!」

「あらほらさっさー」

「過去を捨てて今を、これからを生きて行くのニャ!」


 初回は陸式を光織が使い、六花と晴海がそのフォローに回った。

 やっぱり大きい武器を使えば機動性が下がるのは仕方がない。ついでに撃ち貫く時はどうしても隙が大きいため、単独での運用は現実的ではなかった。


 二人が足止めし、注意を引いて光織から意識を逸らし、動きを止めさせて光織が引き金を引けば、さすがに剣が深々と突き刺さる。今回は心臓の位置へ剣が突き刺さった。

 あとは心臓からウッドフェンリルを燃やし、大ダメージを与える事に成功する。木製だけに本当に心臓が有るわけではなかったが、それに近い機関が存在したようで、それがとどめとなった。



 パイルバンカー運用の問題点としては、撃ち込む位置がズレた場合、同じような最高の結果にはならない事。序盤は三人娘のうち一人が攻撃に参加しないため、戦闘のリスクが上がる事。そして外した時のリカバリーが難しい事などが挙げられる。

 そのあたりは戦闘回数を増やしていけば、いずれ解消すると思うけどね。今はまだ、リスクなんだと気を引き締めていこう。





 陸式パイルバンカーの実戦初投入が終わったので、ウッドフェンリルへの戦闘周回を試してみる事にする。

 要は、ボスのリポップ狩りである。


「復活の周期は最長でも1日程度のはずだから、予定を10日に設定し、4~5回は挑んできます」

「うむ! 何かあればすぐに戻ってきたまえよ」

「安全第一でお願いしますね」

「はい! では、行ってきます!」


 ダンジョン泊をして、雑魚狩りをしつつ、ボス戦を何度も繰り返す予定を組んだ。

 今回は食料を多めに持ち込み、ダンジョン泊に備える。


 ダンジョン泊という事で荷物持ちにタイタンも多めに投入するので、ついでにエメラルドウルフの魔石を大量に稼いでいきたい。

 エメラルドウルフの魔石はレッドサラマンダー戦で使う嵐の万華鋼を考えると、他よりも多めに必要になるので、ここで確保しておきたい。


「まるでエアーマ○とウッド○ンだな。レッドサラマンダーはどちらかと言えばヒートマ○なんだけど」


 魔法の属性相性を考えると、火と風って火の方が強そうに見えるけど、そう簡単な話でもなかったりする。

 火の魔法、レッドサラマンダーのブレスは風の魔法で十分に防げるし、熱を上に逃がす事で断熱効果も期待できる。ついでに動かしやすいので、むしろ土の魔法で壁を作るよりも対ブレス防御手段としては上だったりする。

 細かい事を言い出すと、どの属性の魔法も使い方次第で術者の腕と発想によって相性なんてものは簡単に覆るんだけど、ブレスに風の魔法で対抗するのが一番ありふれた、わかりやすい手段なんだよな。先人の知恵は偉大である。


「なら、陸式パイルバンカーがアイテム二号なのです?」

「ずいぶんゴツい、アイテム二号だなぁ。いや、アイテム二号は移動手段だから、陸式と同列に語る事は出来ないけど」


 道中、俺のネタ発言に晴海が反応した。

 三人娘の会話能力は牛歩だ(とても遅い)けどちょっとは進歩している。最近はそれなり会話が成立する。


 以前、三人娘との会話が足りず、及川教授に「もっとあの子たちとお話をしなさい」と叱られたので、そんな悪い状態を改善しようとコミュニケーションを増やしてきた成果だ。

 会話の量が増えればこうやって進歩もするわけで、ここまで進歩が見られないように見えたのは、俺の素っ気なさが原因だったんじゃないだろうかと反省する次第である。



 人間、必要ない事は学ばない。

 たとえ外国に行こうとも、外国語ハンドブックを持ち最低限の会話が出来れば買い物に困ったりしないとなると、語学の勉強が最低限になる。

 そうして何年も外国にいてもその国の言葉を学ばない人間が出来上がる。

 それは心を持ったロボットも同じである。


 俺と光織たちは、そんな悪い状況を放置していたというわけだ。

 俺が、光織たちに対し一方的に成長を期待し、その成長を促す事をしてこなかったせいで。光織たちは漫画などの台詞を使って喋るだけで問題ないと判断してしまっていた。



 悪い所に気が付き、改善の意思を明確に持ち続ければ、正のループに戻していける。

 お互いに会話の必要性を再認識し、お喋りを増やしていけば、会話が弾むようになる。  


 「相手はまだ上手く喋れないのだから話せるようになるのを待とう」と一方的に決めつけ、「今は何もしなくてもいい」と思うのは、大したリスクもないのに何かして失敗する事を恐れる臆病さだ。格好を付けすぎて、何も出来ない、何もしようとしない人間の言い訳である。

 何もしないでいる方が、ずっと格好悪いというのに。失敗しない事が格好良いなどと勘違いしたピエロのようなものだ。


 ちょっとぐらい駄目な所も、笑って受け入れられる方がずっと良い。

 三人の成長を少しでも俺が手伝えたなら、その方が嬉しいんだよ。



 このダンジョン泊の間は、三人娘とずっと行動を共にする。

 戦闘方面だけでなく、人間性もきっと成長するよ。

 三人娘も、俺もね。

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