ウッドフェンリル攻略①
「ドラゴンだけじゃなくて、雑魚戦でも厳しいです」
「敵のスペックと殲滅速度と、爆上がりし過ぎじゃないですかね?」
「こんなのを相手に、しかも多数と戦っているから、あのスペックという見方もあるのではないかな」
ラスダンは、ドラゴンだけが強いダンジョンではない。
いや、ドラゴンの戦闘能力が絶望的というのもそうなんだけど、それ以外のモンスターだって、かなり強い。
それこそ、今の俺たちでは苦戦必至というレベルだ。
だからラスダンに挑む前に、他のダンジョンでレベル上げをするわけだが。
「レッドサラマンダーは、現在順番待ちですね。1ヶ月ほどお待ちください」
「以前、ブルーサラマンダーに置き換わった時に、順番が強制的にキャンセルされたわけですが。その補填も無し、でしょうか?」
「申し訳ありませんが、特殊固体の出現に関して、私どもでは責任を取れません。どのような理由であれ、キャンセルはキャンセル。規則ですので諦めてください」
レッドサラマンダーに挑めないという話になった。
レッドサラマンダーのドロップアイテムはエリクサーの素材であり、現在は固定パーティが順番を決めてローテーションで回している。
そう頻繁に挑んでいるわけではないから、隙間を狙えば俺たちも行けたはずなんだけど。
けど、その隙間にブルーサラマンダーという特殊固体が出現し、俺たちの予定が狂った。現在は他のパーティが挑んでいるため、リポップ待ちとなっている。
このボスの順番待ちはローカルルールだが、ルールである事に間違いはなく、個人の都合で無理を押し通すのは良くない。
レッドサラマンダーは、しばらく挑めない。
「まぁ、レッドサラマンダーに拘り過ぎる理由も無いんだけどな」
「準備した物も、いずれ挑むのであれば無駄にはなりません。しばらくは他のダンジョンを攻略しましょう」
そんな訳で、挑むダンジョンをエメラルドウルフの出るところに変更した。
ダンジョンの難易度はそこまで変わらないので、今の俺たちにはピッタリだろう。
「ここのボスは、ウッドフェンリル、だったかね?」
「はい。フェンリルなんて名前が付いていますけど、実際は植物操作の魔法を使う、バカデカい狼タイプのモンスターですね。
スピードタイプで厄介ではありますが、ドラゴン戦の特訓と考えれば、レッドサラマンダーよりもこちらに都合が良いと言えます」
「これでドロップが美味しければよかったんですけどね」
エメラルドウルフの出るダンジョンは、レッドサラマンダーがボスである『火竜の塒』と同難易度。
よって、ボスの強さも「総合的には」同じぐらいと言っていい。
ただ、高い生命力と火のブレスが厄介なレッドサラマンダーと違い、こちらのボスを務めるウッドフェンリルは、高火力なスピードタイプ。戦闘スタイルが真逆なボスである。
戦闘の難易度が同格とは言え、その割にはドロップで大きく評価が別れ、レッドサラマンダーと比べ、ウッドフェンリルは不遇かつ不人気なボスとなっていた。
強いのに倒しても稼げないとなれば、挑む人間が減るのは道理である。同じ難易度のダンジョンでもっと稼げるダンジョンがあるのなら、そちらに人は流れる。
それこそ、対人トラブルを避けるためだとか、別の理由でもない限りは。
「毛皮の一枚でもドロップすれば、評価が一瞬で変わるのに」
「牙や爪の類でも良いと思うのだよ」
「今のところ利用価値の無い謎の液体と、謎の葉っぱ。利用方法が分かるまで、不遇は変わりませんね」
こういったアイテムは、利用方法が分かれば価値が一変する。
財テクという事で、トレジャーボックスの状態のままで保管しておけば、いつか大金に代わるかもしれない。
以前は使い道の無かった『メジェドのダンジョン』で手に入るただの岩なども、ちょっと前に埋め立てに使うからと、それなりの値段で売れた事があった。
手のひらサイズの小さなトレジャーボックスの状態で現地まで運び、現地で開封する事で運搬コストを大幅に抑えられたというのが売れた理由だ。
まぁウッドフェンリルのドロップアイテムはそういった使い方次第というものではなく、本当に何らかの正しい使い道があるんだろうけどね。
種族名からして、植物関係、ポーション関係と思うんだけど。
すでにどこかの研究機関がマトモで誰でも考え付くような調査を終えているだろうから、俺の浅知恵で利用方法を見つけるとか、そういう展開は無い。
また以前のように及川教授にお願いしてみるか、四宮教授の知人を頼ってみるのが良いだろうな。




