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九条④

「資料が届きました。機密情報になりますので、取り扱いには十分注意してください」

「了解です」


 俺が前向きな言葉を伝えると、九条さんは最前線ダンジョンでの戦闘記録を送って来てくれた。

 今後、俺が最前線ダンジョンで戦うのであれば、絶対必要になる情報だからだ。

 彼は使い潰さない部下として使うのであれば、それぐらいの情報は融通する、良い上司のようだ。


 もっとも、この情報は機密なので、流出させないようにと釘を刺されている。

 これは俺を、俺たちを信用してこの情報を渡したというよりも、この情報の取り扱いで俺たちへの信用度を決めようとする腹積もりなのだと考えられる。

 こっちの事を先に調べているはずだが、ちょっとしたタイミングにこういった試験を課して、引き締めを図る厳しい上司でもあるようだった。





 最前線ダンジョンは、通称『ラストダンジョン』、ラスダンと呼ばれる場所である。

 森林タイプのダンジョンなのだが、雑魚(・・)敵にドラゴン系モンスターが出るという、地獄のような場所である。そしてドラゴンだけでなく、人型の、リザードマンのようなモンスターも複数種類出るし、ドラゴンとは全く関係ない、猪タイプのモンスターも徘徊している。


 現在は300㎞ぐらい先まで探索してあると言うけど、まだボスの所にたどり着けない、日本最大級の広さを誇るダンジョンでもある。

 モンスターも強くて厄介だが、その広さも厄介で、複数箇所にベースキャンプを作って物資を集積し、奥へとピストン輸送しているが、モンスターの攻勢が厳しくキャンプの維持が難しい状況になっていて、これ以上先へは進めなくなっていた。


 なお、「だったら自衛隊を派遣しろよ」とはよく言われる言葉なんだけど、自衛隊だって他のダンジョンの攻略をしてスタンピードを防がなきゃいけないし、なり手が少なくて慢性的な人手不足。

 指摘したところで「人を出せるならとっくに出している!」と怒鳴り返されて終わるだけの、それだけの話である。いや、「だったら予算を寄こせ!」までがセットだから、それだけでは終わらないか。

 もちろん、そんな事を言う人間って口は出しても予算は出さないバカしかいないので、実際に予算が増える事は全く無いんだけど。予算という名の投資もせずに成果を出せとか、アホだよね。



 で、いつもの身内に加え、開発チームも含めた面子でラスダン攻略動画の視聴をする。

 この情報をベースに、光織たちやタイタンの装備も考えないといけないから、開発チームにも視聴をさせないとね。

 秘密を知る人間は少ない方が良いというけど、最低限、伝えるべき人間には伝えないと、話にならない。


「見せてもらおうか。最前線ダンジョンのモンスターの実力を。って、マジでこれ、スロー再生?」

「上位の冒険者は、化け物か!?」

「あの冒険者、戦艦並みの攻撃力だというのか……」

「くっ。対竜装備量産の暁には、こんなモンスターなどあっという間に蹴散らしてくれるわ!」


 まぁ、最初は強がりとネタ発言しか出てこないけどね。


 巨体でありながら物理法則を無視した速度で飛ぶモンスター。

 それに反応、対応する冒険者。

 俺の戦闘動画を見慣れた面々であっても衝撃を受けるような、ハイレベルなバトル。

 次元が違う、そうとしか言いようがなかった。



「高速戦闘に対応できるようには、経験を積ませるしかない」

「ハード面からは、即応性、打撃力の強化をどう行うか検討したい」

「遠距離攻撃の充実をしないと。近距離だけで対応するのは合理的じゃない」

「弾薬、補給の問題をどう解決する気だ? 持ち込む物資が増えれば、それだけキャンプの負荷も高くなる!」

「最初のベースキャンプまでのリスクを減らすだけでも効果はある! それに近距離戦だって消耗はあるんだぞ! 近距離戦のリスクと損耗を考えれば遠距離戦を強化する方がよほど経済的だ!」


 しかし、レベル上げをしていけば、いつかは辿り着ける境地だ。

 リスクを避け、安全で地道にレベルアップしていく堅実な生活をしていては手に入らない強さ。そういったものではない。

 時間がかかるだけで、いずれは手が届く。



「ステータスを作るのに、都合が良いサンプルが増えたね。これを基に、必要な戦力を計算できるようにするのだよ」

「あの三人も、この映像を見て色々と考えてくれますよ。一文字さんも一緒になって、色々と話し合ってください」


 目標が明確になれば、道は拓けるものだ。

 道なき道を開拓した先人の後追いである分、その労力はかなり軽減する。

 幸い、俺には良い仲間もいるので、これも何とかなるだろうさ。

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