表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
284/528

スカウ○ー

 その昔、攻略しようと思っていたダンジョン『火龍の塒』。

 手前の方でも中堅上位の実力が無いと厳しく、ボスのレッドサラマンダーと戦おうと思えば、上位クラスの実力が必要になる。

 当時は足りない実力をアイテムで埋める計画だったが、今なら勝てるという確信がある。


 もちろん絶対なんて保証はないし、ちゃんと準備をしなければ全滅は免れないのはどのダンジョンでも同じ。ちゃんと準備さえすればそこまでリスクはない。

 光織達は、強い。





「話をするようには言いましたが。いきなり話が飛びましたね」

「いきなり、と言うほどの話でも有りませんよ。上に行く冒険者は、いつまでも同じダンジョンに入りませんから」

「そうだね。停滞する冒険者は、だいたいオーク辺りで足踏みをするものだったのだよ」


 何を準備するにしても、まずは仲間と情報共有。

 まだプランがしっかり固まった段階ではないけど、そうする前に人の意見を聞いておこうと思う。


「実力は大丈夫なのかな?」

「ゴーレム相手のレベルアップは十分ですよ。むしろやり過ぎなぐらいです。

 大物相手の戦いは未経験ですけどね。それを言い出せばいつまで経っても挑めませんからそういうのは、考えません。

 精々、他の冒険者のデータを見せてもらうぐらいですね」


 四宮教授はこちらの戦力が足りているかどうかを気にしている。

 俺は足りていると判断できるけど、冒険者を少しやっただけの四宮教授にその判断は付かない。だから俺が自信満々に言い切れば、そういうものかと納得した。



 ゲームみたいにレベルやステータスが見えたり、数値化されていればその判断も可能なんだろうけど。そんな都合のいい話はない。

 こういった判断は、完全に経験者の感覚だけが頼りになる。


「ふーむ。しかし、そうなると戦闘能力を測る計測器でも作れば売れそうだね」

「そりゃ、売れるとは思いますけどね。何を、どう判断するんです?」

「それこそ、戦闘データを解析して、一定の評価基準を設ければ良いのではないかな。サンプルさえ揃えば、出来なくもないはずだよ。さすがに筋力や速度はともかく、器用度などの普遍的な数値化は出来ないと思うけれどね。攻撃力であればどのモンスターにどの程度のダメージを与えたは、数値化が可能なのだよ。

 ああ、さすがに戦闘経験から来る“戦闘感”“巧さ”を数値化できなければ……いや、それこそ、戦闘経験そのものは経験からの計測が……いっそのこと、戦闘力と、総合的な数値一つにしてしまえば……」


 そんな事を言っていると、話の途中で冒険者のステータスを数値化できないかという話題になった。

 四宮教授は何らかの閃きが降りてきたようで、話の途中だったが思考の海に没頭してしまった。



 及川教授はそれを苦笑いで流し、俺と話の続きをする。


「こう、どの程度の相手に通じるかという判断基準は、一文字さんはどう考えていますか?」

「基礎能力は分かりやすいですね。他の項目として、とっさの判断力。未知の行動への対応、新しい事への挑戦、戦闘の幅。そういったものを見ています。

 あとは、敵の能力が分かっているので、そこに対応出来るかどうかも考えますよ。

 今回の、レッドサラマンダーであれば炎のブレスが問題になりますけどね。あれは万華鋼の剣、暴風の剣で対応出来ますし、なんなら伸び縮みする物干し竿で中距離戦も狙えます。予備さえあれば、光織達だけでも対応出来ますよ。

 それに今の俺には、オーガ変位種から手に入れた、精霊銀の魔法剣があります。あれって火と土に対応していて、レッドサラマンダー戦ではかなり有利なんですよ。敵の炎だって、割と簡単に防げます」


 手札は多くあるので、勝ち筋は複数存在する。

 敵を甘く見るつもりはないけど、なぜ勝てると考えられるだけの下地はちゃんと説明できるよ。

 知識をアップデートするために予習のやり直しをしないといけないけど、当時の情報から考えれば、戦術をいくつか組み立てられる。



 情報の再取得をして、その結果、駄目だと判断するしかないなら、その時は諦めるけどね。

 現状は挑む方に気持ちが行っていると説明する。


「勝てそうもないなら、挑みません。そこは信用してください」

「これまでも冒険を成功させてきた一文字さんですからね。信用はしているんですけれど、どうしても言いたくなってしまうんですよ」

「そう、ですね。俺が何か無茶をしそうな時は、ちゃんと判断が出来ているか見て、出来ていなさそうな時は止めてもらえると助かります」

「そこの判断は、私には難しいですよ。戦う事に関しては、完全に門外漢ですので。

 それこそ、四宮さんに能力の数値化でもしてもらわない事には、強くは言えません」


 ただ、及川教授はどうにも不安が拭えないようだ。

 レッドサラマンダーは簡単に勝てる相手ではないので、どうしても落ち着かない様子である。

 こういう時、非戦闘要員は理性的な判断が出来ないため、感情が上手く抑えられない。


 そういう判断が出来るのは、うちの会社であれば、バトルクロスの試運転をしている後輩君か、元仲間の時任(ときとう)ぐらいか。

 この二人だってレッドサラマンダーに挑んだ経験は無いけど、俺たちが戦っている所を見れば、勝てそうかどうかの判断をするぐらいは出来ると思う。



 こんな時の相談相手に、戦闘できる仲間でも探した方が良いのか?


 あの二人……せめて後輩君ぐらいは、こういった場に引っ張り出してみるかな。

 いつまでも半人前扱いって訳にもいかないからな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ステータスってほんと現実で再現するのは無茶ですよね。 何をもって評価するのか本当に難しいと思います。 更新お疲れ様です。応援してます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ