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新装備開発・万華鋼編④

 模型の初期タイプは人型ロボットにキャメルクラッチか、前屈をさせるのか。そんな形だった。


「小型の、腕周りだけに限定するとこうなるんですよね。さすがに、腕だけでロボット1体分のサイズは消費しきれません。他所に逃がす分が必要になります」

「腕周りに限定しない場合は?」

「あー。ちなみに、なんですけどね。バトルクロスを半自動にして、万華鋼を扱わせるというのは……」

「無しで」

「せめて、貧○っちゃまスタイル……」

「貧ぼっちゃ○? ああ、前面全部とか背面全部とか、そういうパターンか。まだ無しで。もう少し考えてからにしようか」

「はぁ。分かりました……」


 今回の件。色々と注文を付けている。

 注文の前提が厳しいので、開発チームも難儀していた。

 やはり腕一本分、小型の人型ロボットという無理難題に加え、変形機構まで付けようとすれば無理が生じる。

 初挑戦の試みに失敗はつきものだ。


 多少は制限を緩和しても良いんだけど、あまり制限を緩和しすぎても技術が発展しなくなるので、ここはあえて厳しくしている。

 いきなり一気に緩和するのではなく、本当に少しずつ、徐々に徐々にと段階を経て難易度を落としている最中だ。

 制限が厳しい中でどうにかしようとする事で生まれる技術もあるし、難題に挑まず得た技術って、すぐに他が真似して終了って状況に追い込まれるし。


 まぁ、真似された所で万華鋼の装備を手に入れられるかどうかって話だけどね。

 そもそもバトルクロスがコピーされる方が先だから、真似をされる可能性は相当低いってのは分かっているけど。

 そこで何も手を打たずにいるよりは、将来のために会社独自の技術を持っておきたいんだよね。


「いえ。昔のビデオデッキが有名どころ一つだけ主流になって他が廃れるように、ユーザーの利便性を考慮しない会社ごとの独自規格は独善的で害悪だと考えますが」

「そのためのスタートダッシュだと思うけど。こちらが最初に規格を社会に提示していけば、うちがスタンダードになるよ」

「そこは、大手企業を甘く見ないで欲しい所です。

 そもそも、これ、世に広めないですよね?」

「……そうとも言う」

「そうとしか言いません」


 うん。気を取り直していこう。

 深く考えすぎたら負けだ。



 なお、余談ではあるが、バトルクロスは俺が中の人をやっていると、万華鋼の装備に対応できなくなる。俺が中の人ではなく、ただの荷物をやっていれば万華鋼の装備も扱える。

 俺が主体になると、どうしても魔力の干渉が発生し、装備が使い難くなるのである。

 これは腕にバッテリーを増設し、そこから魔力供給をさせてみても変わらなかった。


 だったら他のロボだろうと腕パーツにしてしまえば結局駄目じゃないかと思われそうだが、やりようがいくつかあって、完全に別ラインの制御システムならばどうにかなる。

 言ってしまえば、人間が二人、手をつないだ所で魔力が混ざり合わないようなものだ。

 合体に近い事をリトルレディ、やや小さめのロボットで試してあるのでそこは実証が済んでいるよ。





「そういや、“鞘”の方はもう稼働しているんだっけ?」

「はい。あちらはまぁ、やっつけ仕事でなんとでもなりましたからね」


 なお、万華鋼への対応には別案も存在する。


 便宜上“鞘”などと呼んでいる装備で、見た目はまんま、剣の鞘だ。

 ただ、真ん中で左右に割れ、中からエメラルドウルフの万華鋼の刃が出てきて、納刀した時の見た目以上に幅広の大きい剣になるという、そんなギミックが仕込まれている。



 これは「無駄機構によって強度が落ちているだけ」と言われそうな、一見すると残念な装備なのだが、これにはちゃんと意味がある。


「けど、本当に上手くいきますか?」

「さあ? でも、上手くいったらそれだけで話が終わるから、是非上手くいって欲しいんだよね」

「はぁ」


 これは武器が独自に万華鋼を制御できるようにならないかという、そういった実験だ。

 人型ロボットから離れて完全に剣の形だが、同レベルのAIを搭載する事で人格持ちになってくれれば御の字という、そんな話である。


 剣のAIが逆に人型ロボットを制御するという荒技でなんとかならないかなぁと、そんな甘い考えを抱いているが……どうだろうね?

 いや、ロボットは人間じゃないんだから、頭脳が人型の頭部になくとも構わないというのは考えていたんだ。


 実際、原神やタイタンの脳みそに当たる部分は頭ではなく胴体に組み込んである。そこが一番スペースに余裕があるし、首から上が吹っ飛んだら動かなくなりました、というシチュエーションを回避するのにも都合が良かったし。

 なら、剣の部分に仕込んだ所で問題は無いはずだよ。サイズ的な問題以外は。

 コンセプトが単純な分、こちらは設計OKもすぐに出たし、一月もかけずに運用までこぎ着けていた。


 俺たちが“鞘”と呼んだ装備は、そんな意図で運用されている。

 どこぞの魔砲少女の使う魔法の杖(デバイス)をモデルにしているわけだが、今のところツッコミはされていないよ。



「タイタン用でなければ使えないような代物なんですよね」

「良いじゃないか。サイズが大きい分には。こっちのダウンサイズは考えなくていい。そこまで無茶は言わないよ」


 ちなみに、この“鞘”の正式な名前は結構揉めていて、未だに決まる気配がない。

 ロボネタにはこういったギミックの剣が出てくるものが多数存在するため、開発チームの意思統一が出来なかったのである。


 俺は今のところスルーしている。

 できれば、元ネタがわかりにくいのが良いな。『機殻○』とか、わかりやすいのは避けて欲しいんだけど。なんともならないか?

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[気になる点] 頭脳が剣の場合武器だけ飛ばされたらどうする・どうなるのやら
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