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新素材②

 インゴット状態の万華鋼。

 その性能試験をしてみたんだけど――反応、無し。


「これ、本当に上手くいったんですか?」

「フィーリングですけどね。出来ているはずですよ」


 最低限の加工は必要だからと、棒状にしてみた。

 それをタイタンに持たせてダンジョンで使わせてみたけど、反応無し。

 前回のミスを踏まえ、タイタンのバッテリーをメジェドの神官の魔石にするのも忘れていなかったのだが、それでも何の反応も見せなかった。



「もしかして、回復系の能力なのかもしれませんね。そういった能力でしたら、反応が無いのも肯けます」

「我々が気が付けない、探知系の能力かもしれないのだよ。リスクはあるけれど、一文字君に直接確かめてもらう方が良いかもしれないね」


 外から調べてみても、なんの効果も無いように見えた。

 そこでいくつか仮説を用意してみたが、これらはあくまで仮説である。検証された、確認されたものではない。

 仕方がないので、その検証には俺も投入された。


「魔力を通しても、なんの反応もない、か」


 前回の、攻撃反射の壁の時もそうだったが、この手のアイテムはロボット専用のようである。

 残念ながら俺では能力を発動させられなかった。

 今回のインゴットもその口なのか、俺が何かしても結果は出なかった。


 前回のとは手応えが違うので、ワンチャンあるかもしれないと思ったんだけどなぁ。



 また能力発現の条件探しか。

 そう考えていると、鴻上さんがアドバイスをくれた。


「形状が問題なのではありませんか?

 私はこういったことに詳しくないのですけど、装備として作り替える事で、何らかの反応があるかもしれません。私はあまり詳しくないのですけど、ゲームなどのように武器には武器の特殊能力しか持たせられないとか、そういった縛りがあるのかもしれません。

 そう考えると、攻撃反射の能力も、壁だったからこそ発現したのかもしれませんよ」


 鴻上さんは、ダンジョンがゲーム的なものであるなら、ゲーム的な思考で考えてみると答が出てくるかもしれないと言う。

 何に使うかなど考えず、持ちやすくするため棒の形状にしただけでは不十分だと考えたようだ。

 だから武器にしてしまえば、武器として求められる何らかの能力が発現する可能性があると、そういう話である。


「呪術的にも、そういった話はあるようだね。中国の呪術で厭魅、だったかな? 丑の刻参りのような呪いに、そういった話があるのだよ。共感魔術などもこの部類に入るようだね」

「お札などの縁起物もその一環ですよ。力のある存在、その名を書く事で力の一端を引き出すなどというのも、同じ発想です。

 似姿を描く、偶像崇拝、その他いろいろと。宗教的には一般的な行いですね」


 この考え方は俺だけでなく、みんなも納得できる話だったようだ。

 そしてもう一歩踏み込んだ話として、「目的意識」についても考えさせられた。


「じゃあ、どんな能力が欲しいか、考えてみますか。どんな形状にするにしても、欲しい能力を意識して成型していくわけですからね。欲しい能力が決まらない事には、形も決まりませんよ」

「武器だね。私は武器が良いと思うのだよ」

「賛成です。防御系の能力も良いですが、ここは一つ、攻撃的な能力を求めるべきかと」

「そういうものですか。私にはよく分からないので、パスで」


 話し合いの結果、新しい万華鋼は剣にすることにした。

 万華鋼は剣一本分の量も無いので、オール万華鋼の武器には出来ない。だから剣の芯材にするか刃表面のコーティングに使うかで少し迷ったが、今回は芯材に回すことにした。


 威力を出すのなら刃の表面に使い、敵と直接ぶつ語り合う所に回した方が良いんだろうけど、剣の表面ってどんどん削られるというか、消耗していくからね。切れ味を保持するための研ぎだって、表面を削る行為だし。表面に回した場合は、そのうち剥がれて無くなってしまいそうだったんだ。

 だから再利用がまだやりやすい、芯材に使ってみた。

 ケチ臭いと言われようと、ここはリスクの小さい方法を選ぶよ。





「さて。これで上手くいくかな?」


 できあがった剣は、やっぱり俺では扱えない代物である。

 理由は不明だが、人間では駄目らしい。もしくは、俺の実力が足りないだけかな。

 俺が何をしようと、剣は特殊能力を発現させてくれなかった。


 だからタイタンが持って戦ってからが本番だ。

 直接見たかったので、万華鋼の剣を持ったタイタンと共にダンジョンへと潜る。


 ターゲットは野犬ダンジョンの野犬モンスター。

 どんな能力か分からないし、近場の広い所でその能力を確認したかったのだ。



 そうしてダンジョンに入って数分もすると、こちらを歓迎するべく、野犬の群れが現れた。

 12匹の群れが散開して襲ってきたのだが。


「……そう来たか。妖刀物干し竿か、斬艦刀かよ」


 タイタンが剣を構えたかと思うと、万華鋼の剣はその姿を変え、刃を長く伸ばした。

 そういった能力をリクエストした覚えはないのだが、目の前の結果は結果である。新しい剣は、伸縮自在の刃を持つ、かなり特殊な剣となったようだ。

 剣が伸びることで重量も増しているので「物理法則どうなってんだ!」と叫びたいが、それを言ったら魔法の存在そのものがファンタジーな理不尽に溢れているので、言うだけ無駄である


 ……なお、伸ばした刃を切り落として万華鋼や表面の鬼鉄を量産することは出来ない模様。

 タイタンが剣を手放せば元の長さに戻るので、どうにもならない。


 ちぇっ。

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― 新着の感想 ―
[一言]  似ているものは同じであり、欠片と本体は繋がっている。だから人を模した藁人形に、怨敵の髪の毛を植え込んで釘を打てばそいつが苦しむ事になる。だっけか。
[良い点] 使い込めば13kmのびるように…!
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