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第二次防衛計画②

「そこまで凝った話でもないと思いますけど。

 以前、アンデッドダンジョン用に作った、簡易陣地展開用のユニットを使おうというだけです。あれでダンジョンに入ってすぐをこちらの陣地として使えるようにして、そこで封殺します」

「ああ、あれですか」

「……すっかり忘れていたのであるな!」


 俺が自分の考えを披露すると、テンション高めにアイディアを出していた二人は一瞬で落ち着き、俺の考えを悪くないと評価した。


 アンデッドダンジョンで使っている陣地展開ユニットは、知能の低いゾンビを相手にするために用意した、タイタン用の装備である。

 内容は折り畳み式の足場で、簡易防壁としても使えるものだ。タイタンが乗っても大丈夫なぐらい、頑丈である。

 これを洞窟タイプのダンジョン内で使い、敵の進路を塞ぎつつ、一方的に倒してしまおうというのが俺のプランだ。


 できるだけ入り口近くで展開できるように、今のうちに洞窟を採掘しておけばいいだろう。

 採掘の時に出る石や砂はダンジョンの構造物なので、外に出せばそのまま消える。拡張工事中、崩落への備えさえしっかりしておけば、そこまで難しい事ではないだろう。


「仮に突破されたとしても、予備のユニットを用意しておき、逆向きに展開すれば、敵の帰還・脱出を阻む事もできます。敵が少数であれば、あとは外部に応援を頼むなりして、援軍が駆けつければそれで勝負あり、ですよ」

「……常時設置するような罠より、即応性の高い壁の方が、確かに有効ではあるのだが、うむむ。いくつぐらい用意しようというのだね? 少数ではあまり意味が無いのだよ」

「石や砂を廃棄するなんてとんでもない! 土嚢にして、壁を強化しましょうよ!」


 俺が意見を出せば、二人もそれに乗ってきた。

 足りない部分を補足し、並行できる追加のアイディアを出してくれる。


「後は遠距離攻撃の手段だね! 壁の向こうから銃で撃ってくるとなれば、これはそうとうな脅威なのだよ!

 ……いや、侵入者は冒険者で、レベルアップした超人か何かかもしれないと考えると、それでは足りないかもね? 今さらながら、遠距離攻撃の手段を用意しておくことを提案するよ」

「相手もメジェドの神官を倒しに来ているなら、聴覚を確保しているはずですから。一発で鼓膜を破るぐらい強力な音響兵器でも作りますか?」

「む。それなら、敵にもロボット冒険者が混じっている可能性も考えないといけないね! 防壁に絵でも描いて、視覚を混乱させよう! トリックアートはロボットの天敵なのだからね!

 それと妨害電波も有効だと思うよ。敵がロボットを操作する時、やはり端末からの指示だと思うからね。音声ではこちらに意図を教えてしまうし、消去法で無線通信を選ぶはずだ。それなら、妨害電波で行動を封じれると思うよ。

 もっとも、自我持ちのロボット相手であれば、そこまで意味が無いかもしれないけどね」


 こういった話をさせると、二人はとても楽しそうにアイディアを出していく。


 遠距離攻撃。確かに、あった方が良いのは間違いない。

 音響兵器。それならダンジョンの構造も上手く使って、コンサートホールではないが、音の響きを増幅するような構造にしても面白そうだな。

 トリックアート。あれは人間でも騙される。アリと言えばアリだな。

 妨害電波。これはどちらでもいいかな? あんまり効果は無さそうだから、保険に一つぐらい用意しておけばいい。


 俺はその中から使えそうな物をピックアップし、実行可能かどうか考え、優先順位を付けていくのであった。





 そうやってアイディアを出していくが、アイディアを出すだけなら簡単で、それを実行するのは難しい。


「陣地展開用のユニットだがね、すぐには用意できないのだよ。少々時間がかかるね」

「まぁ、そうですね。焦らずに行きましょう」


 今どき、ゲームの施設だって作るのに時間がかかるのだ。こちらに余剰在庫があまりない陣地展開ユニットなどはこれから作らなきゃいけないという事で、余裕を見て相当数の生産指示を出しておいた。



「コスト計算も考えてくださいよ。予算を無尽蔵に使う訳にはいかないのですからね」

「勿論です。今回の計画だって、無尽蔵に予算が有ったなら、もっと堅実なものを用意させていましたし。これでも予算には気を遣っていますよ」


 及川教授からあまり作り過ぎるな、予算をかけすぎるなと言われるが、下手に予算をケチって失敗しては元も子もない。最低限、これぐらいの備えは必要だという範囲をしっかり決めて、それに必要な予算を割り出し、今期の計画に組み込んだ。

 鴻上さんも渋い顔をしていたが、こちらからは反対意見も出ず、予算は承認された。


「及川さんも、本心から言っているのではなく、そういう事を言う人も必要だからこそ、言っていたのでしょうね」

「……あまり苦労をさせないよう、注意します」

「ええ、そうしてください」


 ただ、及川教授も言いたくて言っていたわけではなかった。

 この会社で俺の立場は相当強く、反対意見を出せる人間が及川教授や四宮教授ぐらいだったからこそ、強く諫めていたようだ。


 それに対し生意気な口をきいてしまったのは反省しないといけない。俺もまだまだである。

 いや、周囲に助けられてばかりだというのに、増長していたのかもな。及川教授はもちろんそうだが、他の皆にも感謝しておこう。



 こうして防衛計画は先へと進むのであった。

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