ダンジョン購入検討試験③
現状の問題点は、火力不足だ。
索敵に関して問題無いのだから、火力不足さえ解決できれば効率が良くなり、レベルアップが安定するのだ。
サモナーが隠密能力に特化したモンスターなので戦闘は非常に楽であったが、戦闘に時間をかけると周囲がモンスターだらけになるので、少しでも手早く倒さないといけない。
戦闘時間の短縮は必須事項である。
あとは、ドロップした布の使い道を探す事だろうか。
これが高額で売れる商品になると、ダンジョン運営が楽になるので、経済的に助かるのだ。
事業の拡大は業務の安定という経営上のメリットがあるので、少しぐらいなら赤字を出そうがトータルでプラスに持ち込めれば問題無いという見方があるけど、どうせなら黒字になってくれた方が嬉しいのは間違いない。
ちょっとでも稼ぎを増やせるのなら、その方が良い。
「槍や剣のタイタンを増やしましょうか? 石のモンスターばかりと考えていたのでハンマーをメインにしていますが、剣に切り替え、首を刎ねるような戦い方をすれば、もっと早く戦闘が終わるかもしれません」
「こういう時こそ、スタンバトンの出番なのだよ! もしかすると、電撃で怯んでいる間は周囲のモンスターを増やせないのかもしれないとは思えないかね?」
「剣で戦うのは良いかもしれませんが、スタンバトンはどうでしょう? 試してはみますが、あまり期待できないと思いますよ」
これらの問題と課題を解決するため、いつもの面子で話し合いを行う。
実際はこの面子だけでなく、あとで他の社員たちにも話を聞くんだけど、話し合いって参加人数が多いとまとまりが無くなるので、話し合いは4人だけだ。
俺、及川教授、四宮教授、鴻上さんの4人で意見の吸い上げをして、最終的な結論を出す。リーダーだけでの話し合いなどは、政治の間接民主主義と同じである。
及川教授からは武器の変更を提案され、これは肯定的に受け入れられた。
敵に応じた武器を使うというのは当たり前の話で、名前にストーンと付くような石モンスターばかりだからハンマーを持たせていたが、サモナー対策だけを考えると、ハンマーにこだわる必要が無かった。
むしろ、ハンマー以外の方が都合が良かった。
さすがに全員の武器を切り替えると、道中の探索で出てくる石のモンスターに苦戦するだろうから、状況に応じて切り替えれるよう、サブウェポンとして両方持たせればいいか。
ただ、四宮教授のスタンバトンについては、あまり期待が持てなかった
スタンバトンは強力な電撃をくらわせ、相手を麻痺させる武器なんだけど、それで召喚の阻害ができるかと問われると、懐疑的な見方をしてしまう。
と言うのも、電撃で麻痺させても意識が残るからだ。
バトンを当てる位置を頭にするなど、頑張れば効果があるかもしれないけどね。そこまでしてスタンバトンを使うか、という話である。
頭を殴ってもあんまり効果がないので、そこまで期待できないと思うよ。
「ちなみに、布の方ですけど」
「おそらくだが、『メジェド神』に関連するものだろう。
サモナーとしてやっている事とメジェド神に関連性はないけれど、姿を隠し、視認できないファンタジー生物で、布を思い出させるとなると……私では、それぐらいしか思いつないね!」
サモナーからドロップした布の話だが、これは何なのか、何というモンスターがドロップしたのか、という所からスタートである。
モンスターの名前は地球上の神話などから拝借しているが、神話生物そのものではない。
類似性はあるので、こちら側の「まるで〜〜のようだ」という当てはめだけで対応しているのが現実だ。
サモナーに関しては、妙に印象に残らない人の姿をしているので、四宮教授の言う『メジェド神』とはまるで違う。
ネットの画像にあるメジェド神は、頭から膝下ぐらいまでを一枚の白い布で覆い、目だけ見えるようにした、ゆるキャラである。
某百科事典には「姿を見せず、天を飛んで巡回しては焔を吐き、目からビームでオシリス神の敵を打ち倒す」とあった。……目からビームで?あ、眼光で敵を倒すらしいから、それでいい、のか?
細かい部分は横に置くが、メジェド神の説明にストーンゴブリンやロケットストーンの召喚を思わせる事は全く書かれていないな。
あのサモナー、攻撃手段も何も持っていない様だったし、ビームや焔を出していれば気が付かないわけがない。洞窟の中だから空も飛べない、飛ばない。
メジェド神とは、近いが、違うと思って良さそうだ。
メジェド神の神官とか、そっち系ならまだワンチャンあるかもしれないけど。モンスターの特定は難航しそうだな。
特定できれば、もう少し動きようもあるし、布の利用方法も見えてくると思ったんだがな。




