ダンジョン購入検討試験②
洞窟型ダンジョン。
そこまで高くない天井を気にしつつ、タイタンを先行させて歩く。
ダンジョン内はそこそこ幅があるので、タイタン2体を並べて歩かせることも可能だが、現在は縦1列になって歩いている。
2体並べられる事と、2体並んで戦える事は違うからだ。
武器を振り回すのに、タイタン2体は結構厳しい。
まずはタイタンでも大丈夫かどうかを確認するため、ベテランを前に出して探索を開始した。
しばらく歩くと、タイタンたちが何もない様に見える空間に対して武器を振るい始めた。
タイタンが何度もハンマーを振るうと、途中からサモナーの姿が見えるようになった。どうやら、ある程度ダメージを与えると姿を認識できなくなる能力が維持できなくなるようだ。
この情報は結構重要だと思う。
それと、人格無しのタイタンもカメラやレドームを使うとサモナーの姿を認識できなくなるようだ。レドームを使っていたタイタンは、情報を共有するまでサモナーを認識できなかった。
逆に、ソナー系のセンサーだけを使っていれば、発見は容易なようである。こちらも決まった手順さえ踏んでいれば、どうにでもなるようだった。
このダンジョンを本格的に攻略しようとするなら、ソナーだけじゃなく、エコロケーションとか試してみたくなるな。
それと、嗅覚による探知が可能かどうかも調べてみたい。
音だけで判断するのは、やっぱり怖いからな。
できればそれ以外の方法も有効かどうかを確認していきたい。
それにしても、人間と機械のどちらにも有効な隠密能力っていうのは、どういった魔法なんだろうな。
単純な光学迷彩のような魔法であれば、聴覚で存在を認識した途端に見えるようになるとか、そういった見破り方はできないだろうし。何らかの概念的な、呪術的な姿隠しなのかね?
ダンジョンから出てカメラの映像を確認してみたけど、こちらが認識するまでそこに何も映っていないのは、不思議な気分にさせられるよ。
できればこの魔法を自分でも使ってみたいんだけど、今のところ、どうやればいいのか想像もつかないので、再現できずにいる。
できない方が日本の治安的には良い事なのかもしれないけどね。器用貧乏と言われてた俺としては、使えない魔法があるっていうのは悔しいんだよ。
今後も少しだけ、色々と試していこう。
「お。普通に戦えるな」
タイタンがサモナーを発見し、2体目という事でこれを初心者のタイタンに任せてみたが、無事にハンマーで殴り殺す事に成功した。
レベルアップしてなくても、一発で倒すのは無理だったが、何回か殴れば倒せるようだ。
サモナーは隠れる能力こそ強いものの、それ以外のスペックは低めだった。
見つける事ができる。倒す事も可能だ。
じゃあ問題無いかなと、そんな風に思っていたんだけど。
「ロケットストーンが大量発生? 手間取ったからか?」
進行方向に、大量のロケットストーンが湧いていた。
これまでにない数の群れである。
ロケットストーンは不意打ちが前提の一発屋である。
ある程度索敵能力があれば、注意していれば、そこまで怖いモンスターではない。
しかしその体は岩なので、倒すのに少し手間取る。それにドロップがしょぼくて経験値も少ない。
数が多いと時間が無駄になるので、ただただ面倒くさかった。
次はベテランのタイタンに戦わせてみたが、こちらはあっさりとサモナーを屠る事に成功し、モンスターを召喚させずに終わらせられたようだ。
戦闘に時間がかかるとモンスターを呼ばれるようだが、サモナーをすぐに倒すことができれば、ストーンゴブリンやロケットストーンの大量発生は無かった。
経験値が欲しいのは新人タイタンなので、時間がかかるのは仕方がないが、それでも後処理が大変で、効率があまり良くなかった。
サモナーの経験値はそこそこ多めで、これを安定して素早く倒せるのであれば良い稼ぎになるんだけど、手間取り雑魚処理までしないといけないとなると、効率がよろしくない。
ただでさえ音で敵を探すというのは面倒くさいのに、ここでさらに手間がかかるというのは嬉しくない話だ。
頑張れば黒字になりそうなのでダンジョンの購入を躊躇うほどではないが、何かしらのテコ入れをしてみたくなる。
どうせやるなら、効率よく攻略をする方が気分が良い。
短時間でサモナーを倒せないのは、火力が足りないからだ。一撃の威力が足りないのだから、何か火力の底上げをローコストでできないものか、検討してみよう。差し当たっては、岩系モンスターに対抗するよう選んだハンマー以外の武器で戦うのが良いかな。
索敵方法の追加検討に、火力の底上げ、武器の変更による戦闘効率の最適化。
このダンジョンを買うのは既定路線として、やる事が一気に増えたな。
……それを楽しいと思うあたり、我ながらワーカーホリックだと思うよ。




