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現場見学① エメラルドウルフ

 現在の計画は机上の空論が多分に混じっているので、現地の、生の情報を手に入れる必要がある。


「ま、みんななら大丈夫だろうけど」

「アヘッド、アヘッド、ゴーアヘッド!」

「やぁってやるぜ!」

「ヤリパンサー?」

「今度はNG騎士か……」


 そんな訳で、タイタンたちよりもずっと強い光織たちを護衛に、エメラルドウルフのダンジョンにやって来た。





 エメラルドウルフが出るこのダンジョンは、草原と森が入り混じったフィールドタイプのダンジョンだ。

 無人の森からエメラルドウルフが無限沸きするという特性があり、戦闘は出来るだけ手早く処理しないと、どんどん敵の数が増えるというヘルモード。同属性の魔法は無効化されるため、誤射上等でガンガン魔法を使って来る。

 人間の冒険者が戦う場合は、レイドと言うか、とにかく大勢で戦うのが基本戦術のようだ。


「サンダースピア対策は万全だな」


 敵が使う魔法の電撃槍は、バッテリーの補充などには使えない。

 少し時間が経つと消えてしまい、バッテリーなどは一瞬だけ充電されるものの、すぐに元の状態に戻ってしまう。なので、食らった電撃は放電してしまうのが基本的な対策になる。

 光織たちやタイタンには電気を通し足の所で地絡させる金属製の鎖帷子もどきを装備させているので、サンダーズピアは完全に封殺できている。



 最近は俺がやっているように、ロボットを使うか、ロボット乗りの冒険者がサンダースピアの盾になる戦術が流行っているらしく、以前よりは多少は状況が改善されている。

 ロボットは冒険者ギルドから貸し出してもらえるからね。

 しかも、不人気ダンジョンのため、ロボット代は土地の持ち主が補助金を出してくれるという厚遇ぶり。


「それでも不人気なんだよなぁ。ほいっと」


 ただ、それでも不人気なのは、魔法抜きでもエメラルドウルフが強いから。

 スピードがあり、連携が上手い集団を相手にしなければいけないため、しっかり訓練をして地力を高めた冒険者でなければ戦えないのだ。

 それに、こいつらは動きが速いだけでなく、固い。骨がしっかりしているので、精霊銀の剣ならばともかく、一般に出回っている金属の武器では運良く関節にでも刃が行かない限り、骨を断てず肉を切るのが精一杯だろう。

 あと、たまに不意打ちをしてくるってのもあったなぁ。


 武器については、鬼鉄製の物を使いまわしにすればいいので、これは問題ない。

 人間の俺が間に入ると使えなくなるが、タイタン同士でならレベルアップ武器の使いまわしも可能なので、攻撃力は大丈夫。

 不意打ちも、レドームがあれば完全に防げるので、これも怖くない。


 ただ、エメラルドウルフのスピードに対応できるかどうかが今後を占う鍵になる。

 しっかり戦って攻略パターンを見つけない限り、このダンジョンは買えない。


 じゃあ、今日一日でどの程度成長するのかを見て、そこから先を考えてみようか。





 そんな訳で、数戦してみた。

 一回に出てくる最大数と言われる10匹も、俺たちは(・・・・)難なく撃退している。


「んー。さすがに厳しい、か」


 俺は(・・)普通に対応できる。

 光織たち(・・・・)も問題ない。


 ただ、高レベルなタイタンでは、エメラルドウルフの相手をするのは厳しそうだった。

 これまで戦ってきたモンスターの中には野犬タイプのモンスターもいたので、四つ足のモンスターとの戦闘経験がゼロという訳ではなかったんだけど、それでも基本スペックと戦い方が違うモンスターと戦うのは難しいようだ。

 動きの先読みができておらず、俺や光織たちがフォローに回らねば危うい場面が何度もあった。

 高レベルでこれなら、出来立てのタイタンなど、何の役にも立たないだろう。


 戦いの数を熟せばマシにはなるんだけど。

 そのマシになるまでの間は、しっかりフォローしないと拙いよな。

 しかもタイタンをたくさん連れて来るという事は、新しいタイタンという名の足手まといが混じる事になるわけで。今の俺や光織たちのポジションになるタイタンがいないと、計画がとん挫する。



「けど、ドロップアイテムは美味しい」


 エメラルドウルフの強さは、昔戦ったファイアウルフと同格である。

 よってこいつらのドロップアイテムはそこそこ所ではなく、けっこういい稼ぎになる。

 魔石の質も良いし、戦えるようになるなら、美味しいダンジョンと言っていい。



 それができる冒険者の数が少ないと、そういう話なんだけどな。

 それができる冒険者にしてみれば、もっと稼げるダンジョンがあるから、そっちに流れていくんだけどな。

 ゴブリンやオーク、オーガにガーゴイルなんかと比較して稼げたところで、上を見れば天井知らず。初期投資の大変さを考えると、金が欲しい冒険者は余所に行くのが無難な選択なのだ。


 ロボットに乗る冒険者の大半は自分が生身で戦うのが怖い人だし、ベテラン以上はロボットに乗ると弱体化するという事で、条件が合い難いってのはあるんだよなぁ。

 だからこそ、ロボットのレンタルとかがあるんだろうけど、それだってタダなわけが無いし。

 大変だという事を考えると、このダンジョンはやっぱり不人気になってしまう。

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