冒険者ランク②
そもそもの話。『冒険者ランク』って、「何のために作るのか?」から逆算するものなんだよ。
ファンタジー小説でよく聞く話は「若手の冒険者が無理をして死なないようにするため」というのと「国が囲い込みたい冒険者を抽出するため」ってのが特に多い理由だと思うよ。
そうなると、冒険者の強さにランクって名前の定規を当てておきたいわけだ。
ここまでは、分からないでもない。
ただ、実際にやっている事は理解し難いんだよな。
ゲームシステムをそのまま流用したって開き直ってくれれば救いはあるんだけど、実際はやっている事が適当過ぎて笑えない。
優秀な戦士と優秀な指揮官は求められる能力が違う訳で、それらを一緒くたにして考えられると、ランクの設定で何がしたいのか分からなくなる。
また、活動地域によってパフォーマンスが大きく変わる事も予想されるので、全国的に通用するランクの価値は低いと思われる。
単純に強さと言っても色々あるんだ。
変な話だと思う一例として、「Bランク冒険者は貴族の相手を~~」とか言って礼儀作法を求められたとする場合。
それ自体は別に構わないんだけど、その場合は「Cランク用の依頼でも、Bランク用の依頼でも、モンスター討伐の難易度は同じ」でないとおかしい事になる。
貴族の相手をできないと事と、冒険者としての強さは別問題だ。モンスターの強さでランクが変わるという事は無い。
中には「モンスターが強ければ依頼料が上がる。つまり依頼人は金持ちに限定され、それが貴族からの依頼という事になる」と言う人もいるけど、貴族だったら金持ちだとか、そういった話でもない。貧乏貴族なんて言葉だって珍しくないし、かなり微妙だ。
そもそも貴族からの依頼であろうが、実際に応対するのが部下任せであれば、そこまで礼儀作法にうるさく言われる事も無いと思うんだけどな。
更に付け加えるなら、ちょっと活躍したからって、そんな高ランクまで一気に駆け上がる主人公の扱いが意味不明と言いたくもなる。突き抜けた実力者への柔軟な対応と言えばそれまでだけどさ。偏屈な俺の正直な感想は、「冒険者ギルドが冒険者をランク付けする目的が見えてこない」だ。
まぁ、話としては面白いんだけどな。
そんなファンタジー界隈の謎制度、冒険者ランク。
現実でそれをやろうとすれば?
ギルドは何のためにそんな制度を作るのか?
「……細かいなぁ。大雑把に全国どこでも通用するランクじゃないし、項目が多いよ」
「それは仕方がないのだよ! ダンジョンごとに環境とモンスターが違うのだからね!」
「ダンジョンごとにしか通用しない実力証明。いえ、間違ってはいませんよね」
今回のランク設定者は、冒険者ギルドだ。
ギルドは、冒険者をダンジョンごとに評価をするという荒業に出た。
彼らが求めているのは「ダンジョンの安定した管理と攻略」「ドロップアイテムの安定供給」なので、全国区で通用するような評価システムにはしなかった様だ。
どこかのダンジョンで活躍する冒険者が、その他のダンジョンでも活躍する保証が無いので、妥当だと思う。
また、個人ランクは用意せず、パーティ単位での評価しかしない。
上の方に行くとソロ冒険者が少ないので、個人単位で評価しない方が良いという判断がされたらしい。
実際、パーティ単位で行動している冒険者を、わざわざ個人単位に分けて能力試験を行う方が意味不明だと思うので、それで構わないと思う。
寄生する冒険者がいないとは言わないけど、そのパーティがちゃんと機能しているのであれば、それで良いのだ。
寄生してる奴がいてパーティの評価を落としたとしても、そこは自己責任となるからだ。
で、肝心の評価方法は、提出された映像記録を基にしダンジョン攻略能力を独自手法で解析したもの、となっている。
つまり、秘密。
評価方法を完全に教えない事で、足の引っ張り合いにならないよう、冒険者を牽制するみたいだ。
動画を使うのも、その一部だろう。ダンジョンの外は無理だが、ダンジョン内で他の冒険者とトラブルを起こせば評価を下げると明言して、過去の失敗の経験を活かそうとしている。
評価項目だけど、「対単体戦闘」「対集団戦闘」「索敵・警戒」「安定性」「連携」「長期探索」「その他」「モンスターごとの戦績」と、思ったよりも細かい。
非戦闘の冒険者技能も評価するので、ポーターなんかも活躍する機会がありそうだ。
それぞれに「F〜A」、それにプラマイが付いての18段階の判定が下される。
ゲームのように、総合ランク一つで終わりになっていない。得意分野が判るようになっていた。気分は通知表である。
……そうなんだよな。
今回の冒険者ランクには、ゲーム的な「総合ランク」が存在しない。
状況によって優秀な冒険者が変動するなら、あえて総合ランクを作らないのは、悪くないと思う。
競争心は適度に保ち、煽りすぎないように配慮してほしい。
配慮しても暴走する奴が出てくるのは間違いないんだからさ。




