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冒険者ランク①

 四宮教授からの密談。


 どこの誰に頼んでいるかは分からないが、対策されていると思うと、ちょっと安心する。

 よーく考えてみれば状況は何も変わっていないと分かるんだけど、それはそれ。気分の問題である。


 美味い肉の助けもあり、帰る頃には、俺の不安は随分和らいでいた。

 これを「単純なやつ」と言うのであれば、おれは単純なやつなんだろう。





「一文字さん! ちょっとお話があります」


 気を持ち直し、いつものように埼玉のダンジョンでオーガを相手に試運転。

 ギルドに顔を出すと、受付の職員に呼ばれた。


「今度から、ギルドで『ランク制度』を導入する様になりまして。

 一文字さんにも、是非冒険者ギルドに登録し直して、当ギルドの高ランク冒険者を目指して貰いたいのです」


 小会議室に連れていかれると、職員さんから冒険者にランク制度が導入される。そんな話を切り出された。

 そして、その中に俺を放り込みたいと。そんな要求をされた。


「えっと。俺は一度、ギルドを辞めていまして」

「それはお聞きしています。一度脱退された一文字さんですが、再登録は可能ですし、ここ最近は足繁く通って頂いておりますので、一文字さんのメリットも大きいと考えています。

 定期的にこちらに戦力をお伝えしていただくデメリットもありますが、そこはもう、こちらでも出来得る限りお手間を取らせぬよう、配慮させていただきます」


 ここの職員さんって普段は適切な距離感の人たちなんだけど、今はグイグイと押してくる。


 ランク制度を導入するに当たり、それぞれのギルドが冒険者をランク付けするんだけど、そこで高ランク冒険者を輩出できるかどうかが、ギルド支部の評価に繋がるらしい。

 現在、埼玉のダンジョンに通う俺はトップではないけど、それに準ずる結果を出しているので、是非にと頭を下げられた。



「3日ほど、お時間を頂けますか? 帰って仲間と相談します」

「はい! お時間を割いて頂き、ありがとうございました。こちら、粗品ですがお礼となります」


 ギルド再加入を考えてみたけど、そこまで大きなメリットは無い。金銭的には有利なんだけど、組織に所属するデメリットを打ち消すほどでもなかったのだ。

 ランク制度に付き合うならデメリットが増えてしまったので、やや否定的な感情が強いぐらいである。


 ただ、ギルド未所属でもこれまで便宜を図ってもらったので、あまりすぐに拒否するのも躊躇われる。

 出会ってすぐに厄介事を押し付けてこられればすぐに追い返せるんだけど、ある程度仲良くなってからこういう事を言われると、俺も弱い。


 ……向こうもこういった面倒事を頼めるぐらい仲良くなれたと思ったからこそ、この話を振ってきたんだろうなぁ。

 なかなか交渉が上手い人達である。



 俺はお土産と一緒に渡された、ランク制度の概略について書かれた冊子を読みながら、車の中で思案するのであった。





 ゲーム的な話を考えるなら、冒険者ギルドとランク制度は、誰でもすぐに思い浮かべる。

 しかし実際にそれをやろうとすると難しいのは、すぐにわかる話だった。


 まず、ある程度上に行くとモンスターの種類によって得意とする戦術が全く違うので、同じランクでも能力に差が出るため、戦力の評価が難しい。

 例えばパワー馬鹿のオーガに強い冒険者が、スピード特化のモンスターに弱いようなものだ。

 他にも集団戦に強い、強敵相手に強いなど、単純に戦闘能力で評価するのは、現実的ではない。


 だったら稼ぎで判別すればいいかと言うと、そうでもない。

 弱いモンスターを頻繁に狩りに行くのと、それなりに強いモンスターをたまに狩りに行く冒険者が同じランクになる。

 それはどうなのかという意見も根強いし、そもそも収入を表に出して誇示するのを嫌悪する冒険者も少なくない。


 だったらギルドへの貢献度をポイント換算して、それをランクと言ってしまえばいいが、それも今は(・・)やっていない。

 以前はやっていた時期があるのだ。

 ただ、それが冒険者の競争を促し、無茶をするだけならともかく、足の引っ張り合いになって冒険者同士での殺し合いに発展したため、世間の声に負けて廃止された経緯がある。 



 今では一部の巨大モンスターを倒せる冒険者を高ランク、そこそこ大きいモンスターの代表であるオーガを倒せて中ランク、そして残りが低ランクと、大雑把な括りしかしていない。



 さて。

 今回のランク制度は、どうなる事かね?


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― 新着の感想 ―
[良い点] よくある冒険者ギルドのランクで突っ込みたくなる「薬草採取とゴブリンスローターに習熟してからランクあがってトレントとか刈らされるけど戦闘面で共通するノウハウ少ないだろ絶対!!!!」て部分をし…
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